木村彩子が賞金女王を目指す“ガチ”な理由
2022年 アース・モンダミンカップ
期間:06/23〜06/26 場所:カメリアヒルズCC(千葉)
「夢みたい…」マセラティの次は 木村彩子が狙う高級外車と見せたい背中
◇国内女子◇アース・モンダミンカップ 最終日(26日)◇カメリアヒルズCC(千葉)◇6639yd(パー72)
「ここで負けたら一生勝てない」。気持ちを強くしたままプレーオフの準備を進めていた。最終18番(パー5)、同期のささきしょうこのバーディパットがカップをかすめる。緊張感は一瞬のうちに解かれ、練習グリーンで木村彩子は両手で顔を覆った。プロテスト合格から約7年。26歳にして掴んだ初優勝に涙が込み上げた。
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最終組の3組前で6打差を追いかけ、強風をものともせずに前半で2バーディ。直後の10番でボギーを喫し、憧れ続けたタイトルがまた遠くなりかけた時、前日のホールアウト後に練習したランニングアプローチが起死回生の一打を呼び込んだ。グリーン手前の花道からPWで転がしてチップインバーディ。「最後の一転がりで入ってくれた。あの一打で助かりました」と息を吹き返し、14番(パー5)のバーディで抜け出して「69」。途中、糖分補給のために頬張った、シャインマスカットを吐きそうになるほどのリーダーの緊張感にも最後は打ち勝った。
「まだ夢みたい。自分が優勝できるなんて」。クラブを握ったのは小学生のとき。父・東吾さんに手を引かれ、今大会と同じ千葉県内で行われた「伊藤園レディス」を観戦し、宮里藍さんに心を奪われた。途端に新聞紙を丸めて作ったクラブとボールがおもちゃになり、ゴルフの道へ。「ジュニアのときから目立つ存在ではなかった」(母・美保さん)にせよ、2015年に2度目の挑戦でプロテストに合格してツアーに参戦した。
最初のテストに落ちてから1年の間には、中古ゴルフ用品店でのアルバイト生活も送った。当時に匹敵する“挫折”といえるのが、シードを1シーズンで手放した19年末。「ショットが分からなくなった」とその冬、千葉の実家を出て南秀樹コーチのもとを訪ね、香川に拠点を移した。得意にしていたチップショットからテコ入れし、その延長でスイングを再構築。今週、吹き荒れた強風も四国で慣れていた。「志度CC(さぬき市)でいつも風の練習をさせてもらっている。120ydのパー3を6Iで打ったりするんです」
マセラティのSUVを乗りこなす“車好き”は東吾さん譲り。最近はBMWの新車を狙っていたところだった。「“M8”が欲しくて。2700万円くらい…」という高級車も、ツアー最高額の優勝賞金5400万円をゲットしたからには購入が現実味を帯びてくる。「お父さんに『優勝したらオレにも車を買ってくれ』と言われていた。ホントに優勝しちゃったので、要相談です…」
苦労を重ねてきた分、「勝てるうちにたくさん勝ちたい」と1勝で満足するつもりはない。「たくさん勝てる選手、息の長い選手にもなりたい。西村優菜ちゃん(身長150㎝)や、私(155㎝)みたいに小さくて、飛距離が出ない選手でもツアーで勝てることを証明していけたら」。小学生だったあの頃、夢を描いたあの背中。これからは自分が見せる番だ。(千葉県袖ケ浦市/桂川洋一)