女子ツアー「放送権」めぐる闘いはまだ終わっていない/小林至博士のゴルフ余聞
幻となった視聴率ナンバーワン大会「目標が根底から崩れてしまった」/GMO熊谷正寿代表インタビュー
来季の国内女子ツアーから撤退したIT大手、GMOインターネットグループの熊谷正寿会長兼社長・グループ代表が27日、オンラインでGDOの単独インタビューに応じ「願っていたのは、選手たちのひたむきな努力と、その結果として勝利をつかんだときの感動をひとりでも多くのファン、子どもたちに伝え、女子プロゴルフがもっともっと広がること。それができなくなったのがとても残念だと思う」と述べた。
同社は主催を予定していた2020年大会がコロナ禍のため中止となったため、今年7月の大会が初開催だった。インターネットで無料配信し「テレビで400万人、インターネットでは300万人とほぼ拮抗するような視聴者で大会を盛り上げた」と自負。来季の主催大会は賞金総額を1億円から2億円に増やして申し込み、大会名は「サマンサさんが作った大会を私どもがお継ぎしたので、ファウンダーに敬意を表して」今年と同じ「GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップ」を予定していた。
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スローガンとして「5年で賞金総額3億円を実現させ、世界中のトッププロゴルファー達が参戦する大会となり、その結果、視聴率No.1を達成し、国内No.1ゴルフトーナメントとなることを実現します」と掲げ、その実現を2023年に前倒しする計画もあったという。
それが一転、撤退に至ったのは、インターネットの無料配信が認められなかったことで「目標が根底から崩れてしまった」ため。11月29日に日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)から「インターネットで流してはいけない」という事実を知らされたことが端緒となり、その後、直接働きかけたが受け入れられなかったという。12月1日に熊谷氏が自身のツイッターで発信し始め、19日に主催辞退を表明した。
小林浩美JLPGA会長は24日の来季日程発表の際、GMOの辞退について経緯を説明。その中で「インターネット配信が有料課金にて行われる方針について事前にご説明していました」としたが、熊谷氏は「無料でやってはいけない、有料でのみやる、ということは一切会議でもおっしゃっていない」と言い、さらにこう続ける。
「会議ではOTT(オーバー・ザ・トップ)業者と打ち合わせをしているという説明はありました。OTTとはNetflixとかDAZNなどの有料サービスを含んでいますが、YouTubeやAbemaといった無料サービスも含んでいるわけで、それをもってして有料のみでやると言っていたというのは無理があるし、誰も理解していなかったと私は思う」
同社としては、協会側の放映権一括管理に異論はなく、動画配信サービス業者による一括有料配信も受け入れつつ、ファン拡大を念頭に無料配信を希望したが、「無料は一切まかりならんという。そんなのありですか、という話。私たちは賞金総額をマックスにして、テレビとインターネットで視聴率を一番にしますよと、協会にも小林さんにも直接伝えてきた。それができないなら、申し込んだときに言ってほしかった。それが全ての事実です」と話した。
熊谷氏は撤退した以上「言った、言わないはどうでもいい」と今後この問題について発信する意思はないという。その上で「あえてどのスポーツかはファンや選手の方に失礼だから具体名は挙げませんが、有料化で観る方が減っていくスポーツというのはボディーブローのように弊害が出てきて、ファンが減っていったり、広告収入が減っていったりしていると思う。それと同じ道を歩もうとされているので、私は今回のJLPGAの意思決定は歴史的な誤りではないかと思っている」と危惧した。