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渋野日向子「笑っていないといけないのかな」心を支えた物語

◇国内女子メジャー第4戦◇LPGAツアー選手権リコーカップ 最終日(1日)◇宮崎CC(宮崎県)◇6535yd(パー72)

渋野日向子が奇跡の逆転女王を逃した。2打差3位から「70」で回り、通算7アンダーの2位。獲得賞金1億5261万4314円はルーキー最高額となり、年間ポイントレースではルーキー史上初の1位。8月の「AIG全英女子オープン」で樋口久子以来となる42年ぶりの海外メジャー制覇を達成して以降、主役であり続けた激動のシーズンが終わった。

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耐え抜くヒロインの姿があった。寝違えた首には治療の針が刺さる。9番(パー5)では深いガードバンカーで3打目が跳ね返され、必死に寄せるパー。「10番でチャンスを外して終わりだと思った」。一組後ろの最終組で優勝したペ・ソンウ(韓国)が伸ばし、終盤に事実上の終戦を迎えていた。高難度の18番、5Iで1.5mにつけるバーディ。「ティショットは今日一番。セカンドはダフる。私らしい、本当に良い終わり方をした」と笑った。

トレードマークの裏に苦しさを押し隠していた時期がある。全英では天真爛漫な笑顔で世界を魅了し、一気に頂点まで駆け上がる姿がシンデレラに重ねられた。「全英に勝って、9月ごろが一番きつかったですかね。結果を出さなきゃと思っても、何もうまくいかない。笑っていないといけないのかなと思っていた時期もある」。夢物語の主人公を待ち受けていたのは、一見きらびやかで過酷な現実だった。

笑わないのかよ―。時として耳を疑うようなギャラリーの会話が聞こえてきた。流行語大賞にもノミネートされた「スマイリングシンデレラ」の愛称に「全然、シンデレラなんかじゃない。静かに生きたい」。プレー中でも、お構いなしにスマートフォンのカメラシャッター音が響く。まだルーキーで、まだ21歳。同組選手を巻き込むマナー違反に申し訳なさが募った。

出来るだけ早くやめてもいい―。「こんなに大変なら…」と冗談めかして弱音を吐き、プロ転向直後に掲げた「40歳まで現役」の目標を曲げたくなるほど、心がすり減った。自宅ではボーっとする時間が増えた。「一人の時は”無”。笑わないですよね」。周囲の目が気になってラウンド中に大好きなお菓子を自重した時期もあった。

愛する故郷と家族は、いつも温かかった。2週間前の予選落ち後、父・悟さんとは車内でプロの在り方を話し合った。エースキャディの定由早織さんは、変わらずに接することを心掛けてくれた。そして誰よりも尊敬し、信頼する青木翔コーチ。「いつか背中を追う子たちが、しぶこの後ろにたくさんいる。今の頑張りが、いつか、みんなの道標になる」。押し付けない優しさが支えになった。「『チームしぶこ』って言うんですよ。私が勝手に呼んでいるだけなんですけど。みんながいたから、全英後もやってこられた。自分の力じゃないです」。照れくさくなるような感謝の言葉を、飾らずに口にする。

きっと今日もゴルフの神様が試練を与えた。みんなに誰よりも愛されているから。ともに乗り越える仲間がいるから。少しだけ嫉妬された。「神様が頑張ったねって今年の結果を与えてくれ、試練もくれましたね」。全英制覇時には濁していた第一人者の自覚がにじむ。全てを背負い続けた等身大のヒロインは、誰よりも鮮烈な記憶を刻んだ。(宮崎県宮崎市/林洋平)

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