批判より怖い無関心 新体制JGTOに求められる“発信力”
ゴルフ未経験者に何を伝える? 石川遼×三井住友カードの新たな挑戦
石川遼が23日、茨城ゴルフ倶楽部で「三井住友カードPresents ジュニアゴルフレッスン会」を実施した。プロゴルファーは石川とともに細川和彦、山形陵馬、伊澤秀憲が参加。ゴルフ未経験の小学生15人、経験者の小学生15人を相手にそれぞれ2時間ずつの2部構成で指導した。
実際のツアー大会が行われる直前のコースでトップアマにハードなプロのセッティングを体感してもらう「石川遼インビテーショナル ジャパンジュニア&カレッジマスターズ」の活動は8年目に入った。ジュニアゴルフ界をピラミッドに例え、「頂点を伸ばしていくことと、一番下の裾野を広げていくことを同時にやることによって、とにかくその三角形を大きくしたい」とのプランがあった。ジュニアマスターズもサポートしており、昨年スポンサー契約を結んだ三井住友カード株式会社と思いが合致し、今回のイベント初開催に至った。
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自らのジュニアゴルフイベント「everyone PROJECT First Golf Festival」でゴルフ未経験者相手のレッスンを行ったこともあり、こだわりを詰め込んだ。未経験者の小学生はドライビングレンジでスナッグゴルフ用のボールを投げることからスタート。ターゲットに当てるのではなく、近づけることを課題として与え、子どもにとって身近な動きで距離感を養う。次に渡すのはパター。最低限の持ち方だけ教え、「力加減は投げた時と同じだよ」とボールを打ってもらう。
練習グリーンに移動してからは、子どもが飽きずに続けられるゲーム性を重視。石川自身が“的”として立ち、その足元に向かってパターでボールを転がす。「強く当たったら痛いから、痛くないように狙ってね(笑)」と言えば、距離感を合わせる楽しみを実感できる。伊澤が提案した直径2mほどの円をカップに見立て、その中に何人連続で入れられるかというチャレンジには程よいスリルも伴った。
2時間の大部分はパッティングを楽しむことに特化。ショットは最後の最後、石川がジュニア用のクラブでデモンストレーションを披露するだけにとどめた。時間が限られ、プロがマンツーマンで教えられるわけでもない。クラブをうまく動かせない、ボールに当たらないといったまま、子どもたちが楽しめずに終わってしまうようなイベントは作りたくなかったという。
「ショットは遠くに真っすぐ飛ばすゲームだけど、パターは遠くに飛ばすものじゃない。打ち方が良くないと球に当たらないというものでもないし、打ち方の“ハードル”が低い。カップに少ない打数でボールを入れるという目標も伝わりやすい。やったことのない子、非力な子でも楽しめる入り口として、かなり親和性は高いかなって思っていたんです」
敷居を下げた取り組みについて「『ゴルフが楽しい』より、まず『ゴルフ場が楽しい』っていう風になってほしい」とも強調した。「当然、真剣にやって将来強いプロゴルファーが出てきてほしいっていうのはある。でも、まずはゴルフ場が楽しいところだったなっていう感覚になってもらってからでも、ゴルフを知るっていうのは遅くはないのかな」。トップアマの力を伸ばすジュニアマスターズとは異なるテーマにやりがいを感じている。
自らの幼少期を振り返れば、ゴルフ場で父が「お母さんには内緒だよ」と飲ませてくれたメロンソーダの味が、今でもパッと思い浮かぶ楽しい思い出だ。米国のゴルフ場が日曜にパッティンググリーンを子どもたちの遊び場として開放し、家族がそれをクラブハウスから楽しそうに眺める光景にゴルフが日常に溶け込む文化を感じたことも大きい。
首都圏でボール遊びを禁止している公園が多いと聞き、ボール拾いを終えた夕方のドライビングレンジを活用できないかと思考を巡らせた。「ゴルフ場が子どもたちにとって近い存在になってくれたら、ゴルフ界の未来って少し変わっていくんじゃないかなってワクワクするところもある。社会に貢献できる可能性というか、子どもを健やかに育てていく上で、ゴルフが一役買えないかなって思っているんです」。三井住友カードとの新たな取り組みの根底には、壮大な願いも込められている。