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シード喪失の池田勇太 “流動食”からの再起へ

2019年に日本ツアーで通算21勝目を挙げて以降、タイトルに見放されてきた池田勇太は昨年、14シーズンにわたって守り続けたシードを失った。年末に参加した最終予選会も途中棄権で終了。顎関節の痛みを発端にした故障の根治を目指しながら、限定された出場機会で再起を誓う2024年シーズンを前に心境を語った。

―身体の状態は
「1月からまた残りの治療を始めたところ。治療自体は手術も含めて3月いっぱいで終わる。そこからも定期的な治療をしていく予定。復帰戦? 6月くらいから徐々に気合を入れて、出ていけるのが7月頃になってくるのかなと考えています」

―顎関節の治療
「基本的にはまだ“真っ最中”で。施術中、歯の神経への痛みもある。詳しく言うと、自分の歯を少しだけ小さくして、上から別の歯をかぶせる感じ。そこから形と高さを合わせていく。全部で(上下合わせて)10本。神経が通っていなければもっと簡単に治療できるそうなんですが、僕の場合はぜんぶ神経があって時間がかかってしまう」

―体の別の部分にも痛みが出る
「(顎関節は)繊細だなと思う。治療しながらも(体の)あっちが痛い、こっちが痛いとなる。握力が全く出せない時もある。でも、これが本当に(歯が)きれいに“収まった”ときには、体中の痛さや変な感覚がきれいになくなるんだろうなという面白さ、期待がある」

―今オフの練習は
「ボールはほとんど打っていない。12月のQT(最終予選会)が終わってから(プライベートで)呼ばれて、5回くらいしか行ってないなあ」

―「生涯獲得25位以内」の出場資格行使を見送った
「去年が自分のシード最終年というのは、もちろん頭の片隅にあった。ただ、(痛みは数年前からあり)去年も同じ治療をほとんど同じ日程、ペースでやっていたんです。『多少なりとも良い方向に行くだろう』と無理やりスタートした。痛みを抱えながらトレーニングをして、(開幕戦)東建ホームメイトカップの前の週に治療が終わって、すぐに出場。実際は試合をやっていく中でどんどん不具合が出てしまった。そういうものが積み重なった挙げ句、秋口には自分自身が壊れてしまった。もうそれを繰り返したくない」

―シードを失って
「結果はもう結果でしかない。シードを落としたこと、QTを最後までやり切れなかったことに対しては悔しさというよりも、それを現実として受け止めるしかない。『もうゴルフなんか、ふざけんな』なんていう感覚はひとつもないんです。『これは神様が与えてくれた時間』だと思っている。この時間を有意義に使うか、使わないかは自分次第」

―2024年シーズンの予定
「せっかく(神様に)時間をいただいたので、スケジュールにゆとりを持ちたい。半ばからシーズンを迎えていく。生意気な話ではありますが、推薦で大会に出させてもらいながら、せっかくの機会なので(下部)ABEMAツアーにも出ていきたい。若い選手のゴルフを自分の目で見て、勉強になる部分がある。自分が出ることで、ABEMAツアーが少しでも注目されたり、ギャラリーの方にも来ていただければ、ほかの選手のモチベーションにもなると思う。今の自分を受け入れながら、少しずつ力を添えられたらうれしい」

―推薦では最多で8試合に出場可能。その他にも別資格で出場できる大会が
「全部に出るつもりも今のところはない。連戦に対しても今はすごく抵抗がある。自分と向き合って、夏場ぐらいから徐々にやっていきたい」

―2007年以来の予選会の雰囲気は
「昔のQTと全然、違ったね。“ドロドロ”じゃないもん(笑)。僕が出た時は、もうドロドロ。全員が互いに口もきかない。スタートして、ショットを曲げたら『ざまあみろ』みたいな感じで、誰も(同伴競技者)の球を探しに行かない時代だった。『ナイスバーディ』なんて他人に言う選手は誰もいなかったけれど、今はのびのびやっているように見えました。もちろん、ピリピリ感はツアーよりもあるけどね」

―ゆっくりできる時間ができた
「コロナの時を思い出すような感じ。新しく始めたことは特にないけれど、今までは日本全国、海外も含めて試合で各地を回ったでしょう。実は先週、マレーシアに遊びに行っていたんだけど、ゴルフクラブを持たずに日本で温泉に入りに行くとか、そういうのっていいなと思うようになった。買い物したり、観光したり…」

―口腔内の治療は食事が大変
「もう毎日、おかゆ、うどん、柔らかくしたラーメン…、そんなのばっかり。白米も“やわらか炊き”にしないとダメ。きのう(muta JAPANとの契約発表会前日)だって、若手選手と一緒に焼肉店に行ったのに10枚も食べられない。(自分だけ)焼いた肉を全部ハサミで“さいの目”に切って食べるの。噛むたびに神経に当たって痛いから。途中で食べるのが嫌になっちゃう(笑)。もうさ、飲むのがラクなのよ。ズルズルって、流動食みたいに。だからもう『すいません!スープと白飯ください』って言って、スープの中にご飯を入れて」

―出場機会が限られているにもかかわらず、ウェアで新契約
「こんなに苦しくしている時に手を差し伸べてくれた。本当に感謝しかない。ありがたい。けがを完治させて、限られた試合の中でも自分で『復活』の言葉が言えるように頑張っていきたい」

(編集部・桂川洋一)

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