ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ最終成績
2023年 ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ by サトウ食品
期間:06/22〜06/25 場所:西那須野CC(栃木)
渡せなかった優勝ジャケット 20歳を下した谷原秀人の「サトウのごはん」の行方
◇国内男子◇ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ by サトウ食品 最終日(25日)◇西那須野CC(栃木)◇7036yd(パー72)◇晴れ(観衆1642人)
本当ならプレゼンターを務めるはずだった。ジャパンゴルフツアー選手会の主催大会。谷原秀人には選手会長として、チャンピオンジャケット贈呈の仕事が課せられていた。それが「まさか」、表彰式で自ら主役になってしまうとは…。
<< 下に続く >>
ツアー通算18勝目は本人も驚きの展開から舞い込んだ。序盤2番からの3連続を含む7バーディ、1ボギー「66」。通算24アンダーでホールアウトした直後、後ろの最終組を回った長野泰雅が1mのバーディパットを外して、プレーオフに突入した。
百戦錬磨の44歳は、初優勝がかかった20歳を精神面で優位に立っていた。「長野くんが『初めてのプレーオフをどういう気持ちでプレーするんだろう』と見るくらい冷静だった」。第1打を右の林に曲げた相手に対し、淡々と2パットパー。今大会の最年少選手を破った。
昨年12月「日本シリーズJTカップ」以来の今季初優勝。ベテランらしく、体に痛みだって抱えている。ことしは“ぎっくり腰”を頻繁に発症し、今月初旬もヒヤリとした試合があった。昨年生まれた第二子の悠香ちゃんはまだ、パパの仕事を知らない。「妻(絢香夫人)には『彼女が分かるまで頑張って』と言われるけど」と苦笑するが、家族と、「少しでもうまくなりたい」思いが今もモチベーションの源にある。
自分の息子でもおかしくない年齢の選手たちと、同じタイトルを争う日々。プレーオフで競った長野をはじめ、20代の選手たちには1Wショットで50yd以上差を付けられることもザラになった。「萎える」気持ちを抱えながら、自分のプレーに集中できるのもこれまでの経験があってこそ。欧米ツアーで腕を磨き、壁に何度もぶち当たって今がある。
練習中は流行している弾道測定器の使用を極力控え、数値よりも感覚と実際のショットの軌道を重視する。「(若い頃は)練習場で外国人選手がボールを打つ“音”と、自分の音を一緒にしようと思って練習した。それで自然と強く振って、調子を崩したこともあった。だから、いまは本当にマイペースで。自分のことだけをする」。背中越しから平然とピンに寄せ、カップにボールを沈めていくオジサンは、若手にとってはまだ脅威に違いない。
そんな彼らと競い合えることが、谷原は何よりうれしい。地元広島でジュニア大会を開催してからもう17年が経った。日本のゴルフ界を引っ張る金谷拓実、久常涼、渋野日向子らも出場経験がある。「一緒に試合ができているのが本当にうれしい。その時のことを覚えてくれているのを聞くと、やってきて良かったと思う」
優勝副賞の「サトウのごはん」4000食分は、設立10年目の財団「谷原秀人ジュニアファウンデーション」を通じて寄付するつもり。「施設を訪問すると、親を持たないお子さんも世の中にはたくさんいらっしゃる。お菓子なんかを送ってきたけれど、お米という大切なものを贈れる」。伸び盛りの若手とは、プロゴルファーとしての生き方もまた違う。(栃木県那須塩原市/桂川洋一)