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「負けたと思った」 大西魁斗の逆転Vまでの10分間

◇国内男子◇フジサンケイクラシック 最終日(4日)◇富士桜CC(山梨)◇7541yd(パー71)

「どんな道になるか分からないけど」と、優勝ジャケットを羽織った大西魁斗がPGAツアー参戦への夢を語った。「日本で1勝できたので、次は2勝目。PGAツアーでも優勝したい」と話したが、1時間前は優勝すらあきらめていた。

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パク・サンヒョン(韓国)と首位で並んで迎えた最終18番(パー4)。2.5mのパーパットを外したときは負けを覚悟した。第2打がグリーン右手前のバンカーにつかまり3オン。パーパットは2.5mのフックライン。「今日はフックラインがほとんど入らない」と17番でも3mを外していた。

嫌なイメージが頭をよぎり、パーパットはカップを逸れてボギー。通算11アンダーに後退した。「負けたと思った。自分がやれることをやって2位なら、受け入れられる」とキャップを深くかぶってクラブハウスに戻っていった。大西の中で優勝の可能性は潰えていたが、18番グリーンを降りた10分後、勝利の女神がほほ笑んだ。

1組後ろの最終組サンヒョンの18番のプレーは見なかった。「クラブハウスで“頑張ってね”と声をかけられて、(サンヒョンが)パーパットを外したんだとわかった」とプレーオフ決定を知ったのは人づてだった。観客の声援を背に18番に戻ってくると、「失うものはない。もう一回頑張ろう」と気持ちを切り替えた。

プレーオフ(18番)では勝負をかけた1Wショットがフェアウェイを捉え、グリーンで待つギャラリーから歓声が沸く。ピンまで残り172yd、ピン左を狙った第2打は2mのスライスラインについた。

サンヒョンはパー以上が確定。「外してもチャンスはある」と気持ちを落ち着けて打ったバーディパットはカップに吸い込まれ、こぶしを振り上げ渾身の力で「カモン!」と叫んだ。

下部ABEMAツアー賞金ランク15位の資格で出場する今季は、トップ10が8試合に2位が2度。「優勝し損ねた試合が何度もあった。今回もう1回チャンスがあって、やっと優勝できて本当にうれしい」と笑う。

9歳でゴルフのために渡米し、米国の大学を卒業して昨年5月にプロ転向。どん欲な23歳は11月には欧州ツアー出場権をかけた予選会に挑戦、米下部ツアーの予選会出場も視野に入れる。

「日本でシードを確定させて、海外に行きたい」と掲げていた目標に一歩近づいた。想像していなかった未来がこの先にも広がっている。(山梨県河口湖町/谷口愛純)

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