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こぼれる涙 顔面神経麻痺から片岡大育がカムバック

◇国内男子◇バンテリン東海クラシック 2日目(1日)◇三好CC西コース (愛知)◇7300yd(パー71)

片岡大育が最初に異変を感じたのは昨年11月のことだった。2019年に6年守ってきた賞金シードを手放し、QTから巻き返しを図る2020-21年シーズンも、いったんオフを挟む時期。ゴルフ場へ向かいながら右目に異常を感じたという。

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「最初は花粉症かなと思ったんです」。例年春先に苦しむ症状が早めに出たのかと思ったが、アレルギーの目薬をさしても、涙が止まらない。プレー中も涙がにじんで、ボールが二重に見える。昼食をとろうとしても、口をうまく動かせない。病院に駆け込んだ。

診断は顔面神経麻痺の一種であるベル麻痺。「(原因は)疲労とかだとは思う。新しいことにも取り組んで、考えすぎるところがあるので、自分で自分を追い込んでしまったのかな」。翌日には別の病院を紹介されてすぐに入院し、ステロイド注射といった治療を受けた。

症状の重さの目安となる筋電図検査。「40%動いていたら、1年以内に治るらしいんです。僕は4%しか動いていなかった。0%の人もいるみたいではあるんですけど…」。完治まで2年かかるかもしれない、後遺症か麻痺が残るかもしれない…そんな医師の言葉を受け止め、20年いっぱいは休養する選択をした。

それでも、21年春からの復帰を目指す気持ちから、年が明けるとゴルフ場へ足を運んだ。しかし、やっぱり右目の瞬きができない。1球打つたび、乾いた目からこぼれる涙をぬぐう。「すぐボールが3つ4つ見える状態になっちゃう。ゆっくり2カ月練習したけど、3月に入っても良くならなくて、『間に合わないな』といったんクラブを置きました」

口の右側はうまく動かず、麺類をすすることもできなかった。日常生活でもたまっていくストレス。「口笛も吹けなくなりました」と笑うが、心配されるのが申し訳なくて次第に人と会うことすら億劫になった。一時期は飲酒量も増えたという。

リフレッシュを経て、症状が徐々に改善し、気持ちも上向いてきたのは6月に入ってから。一気にゴルフへのモチベーションが高まった。「友達と遊びでラウンドに行ったら、意外とできるなって。そこで初めてちょっと治っているかもしれないという実感が湧いてきました」。8月からツアー競技にも戻ることができた。

ツアーを離れている間に出場優先順位はどんどん下がってしまったが、復帰からレギュラーツアー3試合目となった今大会で通算1アンダー41位と粘り、20年「日本オープン」以来となる予選通過。「フェアウェイには2、3回しか行ってないけど、(グリーンサイドの)外してもいいところに外して、なんとかアプローチとパターで拾っていくゴルフができていた。いいゴルフができているなって感じですね」。いまもラウンド中は目元をぬぐうタオルが欠かせないが、充実感が上回る。

賞金ランキング5位に食い込んだ16年に優勝した思い出深い大会で刻んだ確かな一歩。5年前の表彰式で片岡を抱っこして一緒に喜んでくれた伊能恵子さんもキャディ復帰に備えているという。「これから良くなっていくと思うし、悪くなることはないと思う。日に日に少しずつですけど、ゴルフはだいぶできるようになってきた。もう、言い訳にはならないです。頑張りますよ!」。まぶしい笑顔がツアー会場に帰ってきた。(愛知県みよし市/亀山泰宏)

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