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石川遼がヤフー&Twitterのキーパーソンに「ネットメディア」を学ぶ

石川遼はヤフコメ、ツイートとどう向き合う/ネットコミュニケーションの功罪(前編)

新型コロナウイルスに世界が揺れた2020年。一人ひとりの生命にかかわる危機を前に、多くの人がインターネット上で活発に議論を交わしました。ネットは有益なコミュニケーションの場となる一方で、最近は一部のユーザーによる誹謗中傷や炎上といった負の側面も話題に上がります。特に著名人はその対象になることも多く、顔の見えない匿名の人たちとの交流からトラブルも発生しています。

男子ゴルフの石川遼選手は2007年に15歳でプロの大会で優勝して以来、日本のゴルフ界の話題をリードしてきました。07年はiPhoneの初代モデルが発売された年。この十数年間のネットメディアの目覚ましい進化の渦中に、いちユーザーとしてだけでなく話題の主としても身を置いてきました。デジタルの世界を通じて浴びる称賛の声、はたまた批判の声。いま、アスリートたちはアナログ時代の選手たちが感じていたのとは違う喜びや苦悩も味わっています。今回、石川選手はYahoo!ニュース、Twitter Japanのキーパーソンとリモートで対談を行い、アスリートとしてネットを通じたコミュニケーションにどう向き合うべきか考えました。

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全3回の前編は「インターネットメディアとは、ネットを介したコミュニケーションとは何か」をYahoo!ニュース、Twitterの成り立ちを通じて学びます。(進行・構成=桂川洋一)

<オンライン鼎談(ていだん)者>
石川遼/プロゴルファー。杉並学院高1年だった2007年、初めて出場したプロツアーで優勝。翌08年に16歳でプロ転向し、09年に日本ツアー賞金王。13年から5年間、米ツアーでプレー。19年までの2年間にわたり日本ツアーの選手会会長を務めた。
小林貴樹/Yahoo! JAPAN メディア統括本部 メディア企画デザイン1本部長。スポーツナビを運営するワイズ・スポーツ代表取締役を経て、2012年にYahoo! JAPAN入社。Yahoo!ニュースなどを管轄するスタートページユニットの責任者を務める。
笹本裕/Twitter Japan代表取締役。1964年タイ・バンコク生まれ。ニューヨーク大学経営学修士。獨協大卒業後リクルート入社。MTVジャパン代表取締役社長兼CEO、マイクロソフト執行役オンラインサービス事業部事業部長などを経て2014年から現職。

―石川選手は「インターネットのメディア」と聞いて、まずどんなことを思い浮かべますか?

石川 いまや生活になくてはならないもので、僕自身も9割方の情報をインターネットを通じて受け取っています。ネットは速報性にまず強く、Twitterのトレンドは幅広く話題になる。いま、ヤフーをニュースを読むためだけに使う人はいない。今年は松山英樹選手とのチャリティ企画で、ヤフオク!にお世話なりました。

―前提として「インターネットメディア」はひとくくりではなく、新聞社・テレビ局やGDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)も含めて情報を提供するパブリッシャー、集まった情報をユーザーに届けるプラットフォーム、ユーザー同士のコミュニケーションに優れたSNSの3つの形態に分別されるのではないかと感じています。昨今のそれぞれの関係性とは?

Yahoo! JAPAN小林 Yahoo!ニュースというサービスがメディアなのか、プラットフォームなのかということに関して、僕たちは両方だと思っています。多くのパブリッシャーと組んで情報を届けるプラットフォームとしての存在と、災害時のオリジナルコンテンツなどヤフーとして意志を持って届けているパブリッシャーとしての役割もあり、何をもってプラットフォームかと定義づけるのは難しいのが現状です。

Twitter笹本 Twitterは、皆さんの声が自由に発信される場所という意味でプラットフォームだと思っています。SNSと言われがちですが「いま起きていることが分かる場所」として、ニュース性を持った情報が発信される場だと考えています。ただし、誰もが自由に発信できる場は何らかのポリシーがないと騒がしくなることが多い。プラットフォームであり、一定のポリシーを運営していくという存在だと思っています。

石川 実際にどれくらいの人がいま、Yahoo!ニュースやTwitterを利用しているのでしょうか?

小林 ヤフーはインターネットが日本に来た当初、ポータルサービス、いたる所に散らばっている企業や個人、あるいは海外のサイトへの案内板となる検索サービスがメインでした。現在、Yahoo!ニュースの利用者は男性が60%で、女性が40%。世代別では30代から60代の方が多いのがひとつの特徴だと思っています。ページビュー(PV)で言うと、2014年に月間100億PVだったのが、2020年4月に史上最高の225億PVを記録しました(ニュースを含めたヤフーのサービス全体では月間800億PV)。ニュースの数は現在、1日約6000本。新聞・雑誌・テレビなどのニュース提供社は590メディアに上ります。ちなみにスポーツ専門媒体だけで、80くらいあります。

石川 ユーザーのひとりとして、メディアの数が年々増えていると感じてはいたんですが、考えていた数の5倍くらいのメディアからニュースが配信されているんですね…。僕は知らなかったメディアでも、自分の興味があるツボを突いてくれる、コアなところまで深堀りされている記事が結構好きで、取材力のある専門性の高い媒体はすごく面白いなと思いますね。

笹本 Twitterは2006年に米国で始まったまだ若い会社です。グローバルでは1日あたりのユーザーは現在、約1億8700万。今年はコロナの影響もあってか、自宅などでの情報収集も盛んになり、前年比で29%伸びました。日本は2011年に米国外でできた初めてのオフィスとして強い思い入れがあり、米国に次ぐ大きな事業規模になっています。「10代、20代しか使っていないんじゃないか」と言われがちですが、平均年齢は30代半ば。ちなみに私自身は80代のおばあさまのアカウントをフォローしています。昔ながらの考え方をよくツイートしてくださるので、学びになる。戦時中に抱いた思いに、10代、20代の戦争が分からない世代がインタラクトしているのを見ると、「こういう使い方もあるのか」と感じますね。

―10代、20代ではいずれも80%以上がTwitterのユーザーだそうです。2008年に16歳でプロゴルファーになった石川選手はまさに過渡期にキャリアを送ってきました。

石川 (サービス開始)当初はぶっちゃけ「これ、流行るの?」という懐疑的な思いもありました(笑)。でも2013年くらいには周りでも利用者が増えてきた実感がある。SNSは利用者が増えれば増えるほど情報収集が便利になりますよね。今年の8月、「全米プロゴルフ選手権」の前にロサンゼルスで調整していたとき、コーチと小さなレンタルハウスに泊まっていました。夜中に時差ボケで眠れないでいたとき、銃声かと思うくらいのスゴイ音が聞こえたんです。なにせ米国ですから…ひとりで怖い思いをしていたとき、まずTwitterを開いて検索したら、すぐ近くで直下型の地震があったことが分かった。SNSの使い方は明らかに変わりました

笹本 2011年の東日本大震災でライフラインのように使われたことも、Twitterが広まったきっかけだったと思います。即時性のある「いま起きていること」が分かるサービスで、人々のライフスタイルに沿って使われている。Twitterがいつどこで使われたかを(匿名化した情報をもとに地図上で)追跡していくと、日本の場合は多くの人が公共交通機関を使うため、朝のユーザーの地理的な分布図は中央線、山手線を描くようになります。一方で車社会のロサンゼルスでは、使われる場所が自宅やオフィスに集中します。ちなみに衛生的にはどうかと思うのですが、日本では30%の割合でトイレからツイートする方がいるとか(笑)。四六時中、肌身離さず使っていただいているのではと。

笹本 Twitterはもともと携帯電話(ガラケー)のショートメッセージを意識したサービスで、1ツイートあたり140字の制限があります。裏話ですが、米国からは一時期、140字の制限を撤廃するという案がありました。しかし日本サイドからそれはやめてくれ、と。日本の漢字には1文字に込められる意味の量がアルファベットよりもはるかに多い。文字数1つで表現の仕方が変わります。実際のテストでも、日本人は制限をなくしても140字以上ツイートしない、米国ではどんどん増えていく…という結果になりました。

石川 Twitterをはじめインターネット上には感動のエピソードもあったりして、人の温かみっていいなと、そういうニュースにめぐり合うとほっこりします。いちユーザーとしてお二人におうかがいしたいのですが、僕自身、興味があるニュースは読みやすいし、Twitterも興味があるアカウントばかりをフォローしがち。それは快適なんですけど、“興味の幅”が自分の世界すべてであると錯覚してしまいそう。妄信的にならないかという戸惑いがあります。適度なバランスを取りたいと思うのでアドバイスをいただけませんか?

小林 ひとつのニュースに対して関連性の高い記事を並べることでユーザーが深堀りしていくことを、僕らはコンテンツマッチングと呼びますが、ユーザーの「あ、こんなのもあるんだ」という発見、セレンディピティ(偶然の出会い)も意識しています。多様性を持ち、いろんなものに触れてほしい。僕もゴルフをしますし、必然的にスポーツの話題が自分のタイムラインには並びますが、日本で起こっている、より大切なことを知ってほしい。そういう“揺れ”や“幅”をどう作るかというところ、複層的なマッチングも意識しています。具体的な方法は「門外不出」なところも多いのですが…(笑)。その部分はまさに現在進行形で、1年前とも結構違います。

笹本 Twitterの場合はまさにフォローした方のツイートが皆さんのタイムラインになりますが、Facebookの友達のつながりとは少し違う「興味関心のつながり」なんです。例えば、石川選手がフォローした人が違うスポーツやゲーム、経済に興味があると、その関心が(リツイートやいいね!によって)タイムラインに出る。それぞれがつながっている企業、個人の興味関心から世界中につながるきっかけになると思っています。

小林 石川選手の“戸惑い”は「フィルターバブル」と呼ばれ、インターネットの中ではよく語られている課題のひとつです。AI、機械学習がどんどん賢くなることによって、「石川選手が欲しているのはこれだ」と情報を“賢くお届けしてしまう”ので、結果的に興味関心のある話題ばかりを深堀りしてしまう…。Yahoo!ニュースとしての対策で最も象徴的なのがヤフトピ(Yahoo!ニュース トピックス)です。トップページには6~8本の主要ニュースが並びます。実はすべてを芸能とスポーツにするとクリック数は増えるんです。クリック数が増えればPVが増えて、広告の売り上げも上がりますが、編集方針で「硬め」と「軟らかめ」のニュースを織り交ぜること、政治情報や今であればコロナの情報を必ず入れる。そういった「硬め」の記事を最初に並べるようにしています。細かい工夫ではタブという形で様々なカテゴリを並べて提示し、偏らないよう多様性を一番大事にしています。

笹本 Twitterもそういうところに力を入れたい。最近はユーザーだけでなく、トピック(話題)でもフォローができるようになりました。まだまだ興味関心のつながり方を広げること、セレンディピティを提供することができるかなと思っています。

石川 普通に生きていたら出会わなかった人とインターネットを介して、興味、考え方が合う。そういう世界になってきているなと改めて感じますね。僕自身はTwitterで自分の意見を発信していないんですが、情報収集には本当に便利。SNSは誰でも発信、共有できるという良いイメージがあります。ただ…ユーザーの使い方が問われているとも思います。

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