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反骨心と素直な心 米ツアー制した小平智の2つの資質

◇米国男子◇RBCヘリテージ 最終日(15日)◇ハーバータウンGL(サウスカロライナ州)◇7099yd(パー71)

「まだ打った方がいいのかな?」と苦笑する。見ているこちらがあ然とするほど、ごく自然な姿だった。日曜日の昼下がり、小平智はハーバータウンGLの練習場で数人の関係者に見守られつつ、最終組のホールアウトを待っていた。首位で並ぶキム・シウー(韓国)が最終ホールでバーディを獲らなければ、2人のプレーオフになる。「なんか緊張してきた」と笑いながら、軽く球を打っている。これから人生を変える決戦に挑むというのに、あまりにも無防備な振る舞い。“おいおい大丈夫か”というのが正直な印象だった。

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小平はプレー中、喜怒哀楽を表に出さない。バーディを獲っても、帽子のつばに軽く指を触れるだけ。クラブをたたきつけることもない。この日のプレーオフでウィニングパットを沈めたときのような、派手なガッツポーズはまれだ。だから、外から彼の内面をうかがい知ることは容易ではない。

「反骨心みたいなものはあります」と、本人は言う。駒場学園高(東京)1年のとき、自分が出場した大会と、より格上の大会に出た同級生が同順位となり、冗談めいて「同じだね」と言うと、「お前と同じレベルにするな」と突き放された。日本大学に進学した後は監督と馬が合わず、好成績を収めてもレギュラーになれなかった。2年生のとき辞めることを決意して伝えると、「日大を中退して成功したやつはいない。途中で投げ出すやつは、何をやってもダメなんだ」と強く言われた。だが、そんな言葉をいつも発奮材料に変えてきた。

今大会の予選ラウンドで同組になった選手の1人は、英語が苦手な小平の口調をまねて「ノーイングリッシュ」と、馬鹿にするそぶりをみせた。「節目、節目にそういうことがある」と小平は言う。けっしてエリート街道を歩んできたわけではない。アマチュア時代、スポットライトの真ん中にいたのは同学年の薗田峻輔藤本佳則らで、自分はいつもその陰にいた。

昨年12月、「インドネシアオープン」を直前で欠場した。「(世界ランク50位以内の維持が)大丈夫かどうか周りの人も分からなかった」が、10月の「日本オープン」途中で割れた1Wに代わるものが見つかっていなかった。最後は「ジャンボ(尾崎)さんに、『自信がないなら出るな』って言われた。その言葉が一番大きかったです」。

今年1月の「SMBCシンガポールオープン」。赤道直下の練習場で、小平は汗だくになって1Wの調整を行っていた。ヘッド内部にある接着剤(グルー)の分布が違うだけで、打った感触も変わってしまう。ヘアードライヤーやライターを使ってヘッド内部の接着剤を溶かし、手探りでその位置を変え、少しずつ求める感触に近づけていった。

「コツコツいくタイプ」というのが自己分析。「自分はものを知らないから」と、尾崎将司片山晋呉岩田寛ら先輩の言葉を大切に受け止める。

大会3日目、左ドッグレッグでグリーン左手前に林と池がある15番(パー5)で2オンを狙おうとすると、大溝雅教キャディに止められた。「日本であまりそういうことはない。『狙っていい?』って聞くと『どうぞ、どうぞ』って言う人。27勝しているキャディさんが言うので、なにか勘があったんじゃないですかね。珍しいことなので従いました」と、刻んでパーとした。逆に最終日は制止されず、2打目で狙い通りにグリーン右まで運んでバーディとした。

余談だが、大溝キャディは前週(マスターズ)も今週もずっと、小平がルーティンに入ると「プレーに入ります!」と日本語を貫き通した。それでもギャラリーらは止まってくれるし、ときには同組のキャディが「Quiet Please(静かにしてください)」「 Stand still please(止まってください)」と英訳して伝えてくれた。きっとそんな雰囲気も、普段通りにプレーできた要因の一つだったに違いない。

「英語も覚えたい」という小平に、勉強用の英単語帳を勧めると「すぐ買います!」と即答した。気骨があるのにスポンジのようにやわらかい。これからは米ツアーメンバーとして、出会う人も、関わる人も多様で豊かになってくる。刺激に満ちあふれた新世界が28歳の若者を待っている。(サウスカロライナ州ヒルトンヘッド/今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka



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