ゴルフ界の将来は?USGA本部に潜入
2015年 ドイツバンク選手権
期間:09/04〜09/07 場所:TPCボストン(マサチューセッツ州)
飛距離は無限? 宇宙空間でのゴルフを語る
1971年2月6日、アポロ14号で月面に降り立ったアラン・シェパード船長は、おもむろにポケットからゴルフボールを取り出して地面に落とすと、月面の岩石採集用スコップの柄を改良して6Iのヘッドを取り付けた特製アイアンを右手でひと振り。人類が初めて地球以外の場所でゴルフをプレーするという歴史を作った。
計2発の球を打ったシェパード船長は、そのショットがどれほどの飛距離だったかと聞かれて、「何マイルも、何マイルも、何マイルも…」とコメントを残したという。
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プレーオフシリーズ第2戦「ドイツバンク選手権」の開幕を翌日に控えた3日、ジミー・ウォーカーがプロアマ戦で同組プレーしたのは、NASAの元宇宙飛行士でスペースシャトルで4度宇宙へ飛んだ経験を持つ51歳のマーク・ケリー氏。天体写真を撮るのが趣味で、「科学と宇宙のことを振興するのが僕の情熱」というウォーカーにとっては、特別な1日となったようだ。
ケリー氏も、宇宙空間でゴルフボールを打ったことがあるという。2001年、自身の初めてのフライト時に、ゴルフの聖地・英国セントアンドリュースから持ってきたボールを宇宙船に持ち込んだ。小さなゴルフクラブは仲間の乗組員が作り上げた。
「注意しないといけないんだ。段ボールで作ったクラブで打ったとしても、球はいつまでも進み続ける。重力がないから、宇宙空間では危険なんだよ」。通常はスポーツ関連のものを宇宙船に持ち込むことはできないが、特別なものということで許可が下りたのだという。
この日のラウンド中、ウォーカーは宇宙について、逆にケリー氏はゴルフについて、お互いに質問を交換した。
「打ち上げの瞬間はどんな感じがするの? 危険なのは、離陸するとき? それとも着陸するとき?」とウォーカー。ケリー氏は、「パッティングの助けとして、ボールに線を書くメリットは?」と問い返した。
宇宙の話に耳を傾けると、地球上のささいな出来事など取るに足らないことに思えてくる。「宇宙に行きたい?」。ラウンド後、ウォーカーは何度も聞かれたことがあるという質問をまた受けた。
「今はノーだよ。小さい息子が2人いる。マークに聞いたけど、とても危険なことなんだ。家で宇宙の写真を撮っているよ」。その上、ゴルフで多くの賞金を稼げれば、地球の暮らしも捨てたものではないだろう。(マサチューセッツ州ノートン/今岡涼太)
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka