“帝王の庭”にちりばめられたマスターズ愛 サンドウィッチは緑色の袋に
◇米国男子◇ザ・メモリアルトーナメント 最終日(1日)◇ミュアフィールドビレッジGC(オハイオ州)◇7569yd(パー72)
ツアー通算73勝の“帝王”ことジャック・ニクラスがホストを務めるトーナメントは今年、節目の第50回大会を終えた。出身地であるオハイオ州コロンバスの土地購入から始め、一から作り上げてきたトーナメントへの二クラスのこだわりは会場内のあちらこちらに見ることができる。
まず、コース内にあるリーダーボードはすべてアナログ方式で、人の手作業によってスコアを掲示する。そう、89回の開催の歴史を持つ「マスターズ」と同じだ。
1番と10番のティイングエリアには、ペアリングを示すネームボックスがある。選手の名前が書かれたボードを人の手によって入れ替える仕組みなのだが、これもマスターズと同じ。シグネチャーイベント(昇格大会)としてフィールドが72人に絞られるようになった2024年以降は、予選ラウンドから1ウェイ2サムで行われるため10番のネームボックスは実際には使われておらず、2ウェイで行われていた時代の名残りになる。
筆者はことし初めて取材でオーガスタナショナルGCを訪れ、手元に視線を奪われることなくプレーに集中するパトロン(観客)たちの姿に驚いた。携帯電話の持ち込みが禁止されているためだが、ミュアフィールドビレッジGCでは携帯電話を持って観戦することはできる。
敷地内に11カ所あるコンセッション(売店)で販売されるサンドウィッチにも、“マスターズ愛”が感じられる。5種類が用意されていて、いずれもオーガスタナショナルGCで見慣れている緑色の袋で包装されていた。大会スタッフによると「以前は現在もうない建物でサンドウィッチを作って、この会場まで運んできたの。今はこのメディアセンターがある建物の地下で作っていて、一日3交代制のグループになってパンにマヨネーズを塗る人、チーズを乗せる人…と具材を挟んでいき、袋に入れた後にステッカーを貼って、と流れ作業で作っているの」。
一番安いサンドウィッチは、ライ麦を使った「Four Cheese(フォー・チーズ)」の6ドル。最も高くて、バゲットのような細長いパンの「Hogie(ホーギー)」の9ドルだった。名物サンドウィッチ「エッグサラダ」が1.5ドルから売られているマスターズに比べると、少々“お高い”かもしれない。
マスターズのような歴史と伝統を重んじる大会を作りたい、というのが当初の思いだったという説もあるが、ニクラスが大事にするイエローカラーの袋でも良かったのでは?と思ってしまった。
筆者は2023年にも当地を訪れたことがあるが、その時はまったく気にしていなかった二クラスの“遊び心”を、マスターズの取材を経たことで初めて感じられた一週間だった。 (オハイオ州ダブリン/石井操)
石井操(いしいみさお) プロフィール
1994年東京都生まれで、三姉妹の末っ子。2018年に大学を卒業し、GDOに入社した。大学でゴルフを本格的に始め、人さまに迷惑をかけないレベル。ただ、ボールではなくティを打つなどセンスは皆無。お酒は好きだが、飲み始めると食が進まないという不器用さがある。