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女子プロゴルファー鈴木美重子 理想のツアー実現に賭けた45年

2019/03/11 19:00


今年も国内女子ゴルフツアーのシーズン開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」(沖縄・琉球GC)のプレステントは、全国から集まった約100人の報道関係者でひしめきあっていた。テントの後方から感慨深そうに見守る一人の女性。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の鈴木美重子専務理事(66)は、この光景が決して当たり前ではないことを知る、今では数少ない一人だ。

トーナメント現場に出るのは、この週が最後。メジャー勝者の一人に名を連ねる選手時代から数えると足かけ45年の間、女子プロゴルフの最前線を見守り続けてきた。2018年度限りで理事としての定年を迎え、今月18日の総会を以て退任する。

■型破りな選手時代→広報担当へ

実家がゴルフ練習場という環境で育った鈴木専務理事は、抜群の運動神経を生かし、本格的にプロを目指してからわずか3年後の1974年にプロテスト合格を果たした。ゴルファーといえば、白いポロシャツに紺のパンツ姿がオーソドックスなファッションだった時代。「制服みたいでとてもイヤだったのよ。もう少し女性らしい格好でもいいじゃないって、いま考えればとても反抗的だったわね」。

試合のときも街歩きさながらのメイク、爪にはマニキュアを塗り、ショートヘアから覗く耳にはきらりと光るピアス…プロデビュー直後から目立つ存在だった。「女子ツアーに最初にピアスを持ちこんだのは私かもしれない」と、本人も茶目っ気いっぱいに笑って振り返った。現代以上に、出る杭は打たれる世の中だった。型破りなスタイルは幾度となくLPGAからの叱責を生み、先輩プロからにらまれることも度々あったという。

「怒られては反発し、『もっとやってやる』なんて思った反抗的な時期もあった。でもいま振り返ると恥ずかしいことも反省することもたくさんあったわね」。そんなやんちゃな選手はプレーヤーとしての一線を退いて以降、運営・管理する側の立場で、選手生活よりも長く女子プロゴルフに関わることになる。1989年に初めて理事に選出されると、広報委員長や広報担当理事を歴任…そして現職まで、主にメディアと女子プロゴルフをつなぐ“LPGAの顔”の役を務め、奔走した。

■「書いてもらえるうちが花」

テレビの年末番組でスポーツ選手の歌合戦に出演するなど現役選手時代から比較的メディアに親しみはあったが、だからその役目を長く引き受けた――というわけではない。「広報という仕事にやりがいを感じるようになった」のは、当時会長を務めていた樋口久子LPGA顧問と、LPGAの広報アドバイザーだった故・諸岡誠彬(もろおか・せいひん)さんの存在があったからだという。「女子ゴルフの発展は、いかに多くのメディアに取り上げてもらえるか。スポンサーやファンとの良好な関係の築き方を教えてもらった」と、これまでの行動を顧みるきっかけにもなった。

広報委員長を任された2003年は、最盛時に39試合あった試合数がわずか10年間で30試合まで減少していたタイミングだった。結果としては、同年秋に当時高校生だった宮里藍さんがアマチュア優勝したことを契機に試合数はV字回復を果たしていく。報道陣の席がプレスルームの外にまであふれ、取材集中で殺気立つことまであった“藍ちゃんブーム”のピークで、プレスルームを切りまわした。持ち前のコミュニケーション力でメディアの信頼を得て、目には見えない形で、現在へとつながる女子ゴルフブームの加速や長期化に貢献を積み重ねていった。

当時を振り返ると、広報の師匠として慕った諸岡さんの口癖「(記事に)書いてもらえるうちが花」が脳裏によみがえるという。「(選手時代は)自分の思うようなプレーができなかったとき、わざわざ質問する記者さんには何も答えたくない、って思ったこともあったけど、ある時、諸岡さんに怒られて。『きちんと受け答えをすれば、メディアの方々は多く取り上げてくれる。女子ゴルフをもっと多くの人に知ってもらうために大事なことなんだよ』って」。

■選手に寄り添い、嫌われ役も

メディアサービスの視点を身につけていく一方で、選手の気持ちに寄り添うことも忘れないように努めた。「泣いても、ロッカールームにこもってもいいから、気持ちが落ち着いたらきちんと記者の質問には答えなさい。それがプロたるものだと」。記者の待つインタビュールームには、選手の背中にそっと手を添えて笑顔でアテンドし、インタビューの終了後には、口の利き方、受け答えについて時に厳しくアドバイスすることもあった。そして最後には「おつかれさま!」とロッカールームまで送った。毎年出場選手が入れ替わるツアーの現場では、こうした努力も薄皮を一枚ずつ重ねていくような作業となる。広報としてでもなく、理事としてでもなく、一人の女子プロゴルファーとして、やっていた部分はきっと大きかっただろう。

必要とあらば、たとえそれが嫌われ役であっても喜んで買って出る――。そんな覚悟が、一連の言葉や行動に体温を与えていたように思う。だから、どんなに怒られたとしても、「美重子さん、美重子さん」と集まってくる選手や関係者はとても多かった。「しっかりしなさい!」「おもしろい記事だったね」と声をかけてもらえた私も、何を隠そうその一人だ。取材現場では数少ない女性記者だったこともあるかもしれない。ちょっとおっかなく聞こえる鈴木専務理事の叱咤激励が、私はいつもうれしかった。2017年に賞金女王となった鈴木愛も、同姓の専務理事について「不遜な態度や言葉使いをしてたくさん怒られたけれど、いつの間にか姿を見ると安心する存在になった」と話した。

「選手に『なぜそうするべきか』が伝わって、きちんとした振る舞いができるようになったら、こんなにうれしいことはないじゃないですか。自分がやってきたことは間違いじゃなかったと自負しています」。長く親しんだ職場を離れようとしている“LPGAのアネゴ”は、後輩の現役選手からの言葉に目を細めると、微笑んだまま天を仰ぎ、その後はしばらく言葉が続かなかった。

■女子ゴルフの将来に思い馳せ

各大会のプレスルームに詰める記者がひとケタ台で推移していた“閑散期”は決して短くなかったという。現役生活を終えて以来、女子プロゴルフの将来にきっと何かができるはずと信じてきた30年間。2019年、ついに試合数は過去最多の年間39試合に並んだ。いま視線の先では、テント内にあふれんばかりの記者たちが“女子プロゴルフのきょう”を報じようと競っている。「今の状況は素晴らしいし、本当にうれしい。理想のツアーですね。このままずっと続いてくれればいいなと思っています」。照れ臭そうに胸を張り、そう語った。(編集部・糸井順子)

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糸井順子(いといじゅんこ) プロフィール

某自動車メーカーに勤務後、GDOに入社。ニュースグループで約7年間、全国を飛びまわったのち、現在は社内で月金OLを謳歌中。趣味は茶道、華道、料理、ヨガ。特技は巻き髪。チャームポイントは片えくぼ。今年のモットーは、『おしとやかに、丁寧に』。

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