変則スイングで人気急上昇 チェ・ホソンに聞いた「18のコト」
2018年 カシオワールドオープンゴルフトーナメント
期間:11/22〜11/25 場所:Kochi黒潮カントリークラブ(高知)
テレビ解説のプロゴルファーをも悩ませる チェ・ホソンのスイング
◇国内男子◇カシオワールドオープンゴルフトーナメント 3日目(24日)◇Kochi黒潮カントリークラブ(高知)◇7315yd(パー72)
韓国のチェ・ホソン(崔虎星)が5年ぶりとなるツアー通算2勝目に王手をかけた。4人が並ぶ首位タイから「69」をマークして通算10アンダーの単独首位に抜け出した。
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後続選手には2打差以上をつけて「集中力が切れないようにやったことが結果につながった」と気分は上々。ラウンド中のパフォーマンスも好評でたくさんのギャラリーも喜んでいる。ただし、頭を悩ませる人々も中に入るわけで…。
3日目の最終組を追うロープサイドに、日に焼けたガタイのいい2人の男性がいた。歩いては止まり、ふとした瞬間にゴルフスイングの真似をする。首をひねってはうなずき、納得したようでまた首をかしげる。何がおもしろいって、彼らがこの後にテレビ中継に出演するプロゴルファーだからだ。
TBSで解説を務める加瀬秀樹、ラウンドレポーターの宮瀬博文。もちろんどちらもツアー優勝経験のあるかつてのエリートプレーヤー。この日のお仕事の後、スイング解説をお願いした。
春の祭典「マスターズ」の中継でもお馴染みの加瀬はチェの動きを「規格外。理にかなっている? いやあ…どう“理にかなわせているのか”分からない。だから困るんじゃんか」と苦笑いした。「あれは体で覚えているもの。彼にしかできない。誰も真似はできないと思う」という。インパクト直後に地面から離れた右足が、回転する身体に同調するのが特徴的だ。
「普通はああやって打てない。あれだけ(体重を)左足に乗せなきゃいけない。乗せて、かつ回転しなきゃいけないんだからね。それもクローズドスタンスでそうやっている。よっぽど体を回さないといけない。逆に言えば、それだけ体が強いのではないか」と語った。
この日の最終組に18ホール付きっきりだった宮瀬は、インカム越しで先輩の苦悩っぷりを聞き、笑いをこらえるのに必死だったとか。「加瀬さん大変だよ。解説者を悩ませるスイングだからね」。加瀬も指摘したクローズスタンスは、一般的なそれではないという見方。
「普通はクローズスタンスでも胸は真っすぐ(ターゲットに向かう飛球線上)にある。でも彼は胸も右方向を向く。それでクラブをシャットに上げて、引っかけるような感じで打っている。ドロー目に打っていきたいから、うまく体をねじって打つ。ちょっとでも体の出るタイミングが遅れると、右に飛んで行ってしまうように思うけれど」。
チェ自身は「飛距離を出そうとしていたら、自然とそうなった」と、フォロースルーで右足が離れる動きを説明している。宮瀬は「でも個人的には、あのバックスイングが好きかな。常に体と腕とクラブの関係性を同じように保っている」。極端に言えば、チェのバックスイングは始動で手元を飛球線後方ではなく、顔の前に上げるような動きをする。
「でも身体が回転しているから、ずっと胸の前にずっと手がある。ヘッドだけを見るとちゃんと円運動になっているんだ。球もよく飛ぶ。吹けたかなと思ったのが、結構行っているもんなあ」。ちなみに、制作サイドの心配事はフォロースルーのときにチェ自身がフレームアウトしてしまわないかどうか、だとか…。
CS放送のゴルフネットワークで1番ホール中継を担当、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の理事でもある田島創志も、説明を加えてくれた。「フェードとドローも打ち分けたりしている。フィニッシュでクラブが左に向いたときはドロー。右に向いたらフェードになる」と笑顔で解説。
「スローで再生すると、ハーフウェイダウンから体の回転を止めずに、クラブのフェースローテーションを抑えている。リリースする動き、解放する動きを、手ではなく体全体で行うタイプ」とし、ボールを極力コントロールしようとする動きがみられるという。
プロゴルファーすらも解読困難な“虎さん”のスイング。気になる方はあすの放送をぜひご覧ください。
〈カシオワールドオープン最終日のテレビ中継〉
25日午前7時半から10時15分/CS・ゴルフネットワーク(1番ホールのみ中継)
25日午後3時半から午後4時54分/TBS系列28局全国ネット
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw