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丸山茂樹、2位浮上も 苦悩の決勝ラウンドへ

神奈川県の戸塚カントリー倶楽部 西コースで開催中の国内男子ツアー「キヤノンオープン」2日目。ここ数年、未曾有の不振にあえぐ丸山茂樹が、好位置で決勝ラウンドに進んだ。4アンダーの4位タイから出ると、4バーディ、1ボギーの「69」をマークして通算7アンダー。首位の池田勇太に3打差の2位タイにつけている。

右手親指のケガ、ドライバーショットへの不安・・・前日に口にしていた、そんなネガティブな要素を感じさせないプレーは、この日も続いた。インコースから出た丸山は序盤の12番でボギーが先行するものの、続く13番(パー5)ですぐにバーディを奪取。17番では7メートルを沈め、後半アウトも2つスコアを伸ばして順位を上げた。しかしラウンド後の表情に、昨日との変化は無い。「フェアウェイには行かない、グリーンには乗らない。でも25パットの68。内容的には“しっちゃかめっちゃか”。なぜこの位置にいるのか分からない」。マルちゃんスマイルには、この日も苦味がたっぷり混じっていた。

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「ダウンスイングの時にパチン!と“ノイズ”が入る」。ギャラリーの視線を集めるティショットの際、嫌なイメージが脳裏をかすめスイングを狂わせる。米国男子ツアー参戦していた晩年、2005、06年あたりからの深い、深い悩みだ。「今日の朝の練習場では(池田)勇太に『良い球、打ってるじゃないですか・・・』って言われたけれど、試合になるとね・・・」。セカンドショットや、アプローチ、パットへの自信は衰えない。だがティグラウンドで、体が固まる。折り返しの1番ホール。初日は第1打を3番ウッドで打った。しかしこの日は、5番ウッドを手にするのがやっとだった。

「30半ばまで緊張することなんて無かった」。持ち前の豊かな表現力は健在だ。ただ今は、その力も胸のうちの苦しみを周囲に伝えるツールにすぎない。「ミルウォーキーで勝った時(2001年の米国男子ツアー初勝利:グレーター・ミルウォーキー・オープン)の、最後のパットとは違う。良い緊張感じゃない。武者震いとは違うもの」、「NHKの“のど自慢”でマイクが震えている人みたいな感じ」、「パンチのあたらない試合。無抵抗な試合」。過去の栄光とのギャップがその苦悩を大きくしているのは疑いようが無い。

丸山は今季で2009年の最終戦「日本シリーズJTカップ」優勝で手にした3年シードが切れる。残りシーズンで賞金シードの確保、新たな優勝シード権が獲得できなかった場合、来年は「生涯獲得賞金25位以内のツアープレーヤー」というエリート選手にのみ与えられる、1年間のシード権を行使する考えだ。

しかし「それが終わったとき、自分は『QTに行けるのか?』と思う」。国内10勝。そして日本人史上最多の米ツアー3勝という輝かしい実績を持つが、永久シード権を持たない43歳にとって、将来は不透明だ。栄光の時代を忘れ、翌年の出場権をかけた予選会に向かう気持ちの整理がつくのか。現役“引退”。その二文字も、頭にちらつくことがある。

戸塚カントリー倶楽部の週末は、年間を通じて一番の大ギャラリーでコースは埋まるはずだ。丸山の心境は穏やかではない。単独首位を走る池田勇太との最終組のラウンドに、尻込みしてしまう。「明日は明日の風が吹くと思いながらやるしかない。ラウンドレポーターのような気持ちでやれたらいい。今は、自分は頑張れると思わないほうがいいんです」と、目を伏せながら話した。

それでも「でも、打ちのめされても、立ち上がるゴルフは最終日までしたいと思います」と最後に言った。活躍を期待する周囲の目に耐えられず、必死に搾り出したような希望の言葉だった。(神奈川県横浜市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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