石川遼は伸びず、久保谷健一が9年ぶりの優勝!
2011年 キヤノンオープン
期間:10/06〜10/09 場所:戸塚CC 西コース(神奈川)
久保谷のボヤキ 勝因は「やはり運です」
久保谷健一が、9年ぶりのツアー通算5勝目を地元・神奈川の戸塚カントリー倶楽部で行われた「キヤノンオープン」で手にした。今季最多の1万9926人の大ギャラリーが集結した最終日。久保谷は3番パー4で、イーグルを奪って勢いをつけると、中盤に粘りを見せ、2002年に「日本プロ」、「マンシングウェアKSBカップ」で2連勝した時以来となる歓喜の瞬間を迎えた。
今季初勝利、そして節目の通算10勝目を狙った石川遼らを振り切っての白星への喜びは、いっそう大きなものになるはず。しかし周囲が予想した通り、39歳は余韻に浸るどころか、ラウンド後は普段と同じ、ボヤキでいっぱいだった。
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「何をやっても左に行っちゃう。ひたすら耐えるのみの一日でした。イーグルも気休めにもならなかった。今日の僕は、優勝とかいうパターンじゃない。皆が伸びなかったのが不思議。こうやって僕が優勝なんて、世の中、狂ってる。ゴルフは、いつも言うように、やはり運です」。
家族も、トレーナーもみんな言う。「あの人のボヤキには真剣に付き合ってられない」。上位でプレーを続けた今週も周囲に「この世の終わり」、「静かに引退していくよ」と、こぼしていた。
だがその魂の嘆きは、照れ隠しと、飽くなき向上心と、一途にクラブを振り続ける日々の裏返しでもある。石井忍コーチは「馬に食わせるほどボールを打っている。人よりも多くボールを打っている。それが出ることを信じてやるしかない」と背中を押してコースに送り出した。敗れた石川は「長く練習場にいる選手。ラウンド中も一球、一球納得していない姿がある」と表現した。コースを離れると大の酒好きと認知される一方で、打球の行方も曖昧にしか見えない暗闇の中で戦う姿勢は、誰もが知るところだ。
2カ月前、自宅で長女の真帆ちゃんが書いた絵本を読んだ。願いをかなえてくれるイルカをテーマにした物語。「どうかお父さんがゴルフで優勝してくれますように」という言葉に、涙が出た。けれど言った。「ごめん、マホ…。実現したいけど、今は無理…」。6歳の娘にまでボヤいた。だがこの日、長男の天祐くんとともに、愛娘の目にもしっかりと最高にカッコいいパパの姿を焼き付けた。
この1勝で、次週の「日本オープン」の出場権を滑り込みでつかんだ。そのことを知らなかった久保谷は「え?ほんと? 来週は家族で旅行でもしようと思っていたのに…」と驚いた。メジャー第3戦はもちろん、屈指の難セッティングに仕立てられている。「どうせまた苦しんでいると思います。でも私もめげずにやるので、皆さんもめげずに(自分の)話を聞いてください」。来週もクボヤはきっとボヤクのだ。(神奈川県横浜市/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw