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初めてのインドツアー(2)/ろうそくの灯りで練習?チャウラシア伝説

◇インドツアー◇マクラウド・ラッセル ツアー選手権◇ロイヤルカルカッタGC(インド)◇7237yd(パー72)

一流選手には伝説がつきもの。今年の欧州とアジアンツアーの共催試合「ヒーローインディアンオープン」(3月/DLF G&CC)で、後続に7打差をつけて大会連覇を達成した39歳のSSP.チャウラシアは、かつてはここロイヤルカルカッタGCでキャディとして働いていた。「彼は夜になると、ろうそくの灯りでパッティング練習を行っていた―」。そんな話を人々は好んで口にするものだ。

チョウラシア本人に真相を尋ねると、「ぜんぜんそんなことはない(苦笑)。でも、夕方にラウンドして、終わってからもずっとグリーン脇に座って他の人のプレーを観ていたから、きっとそう思われたんじゃないかな」という。それでも、グリーンキーパーとして働いていた父とその息子が、いまは取り壊されてしまった9番ホール脇の使用人小屋に住んでいたことは紛れもない事実である。

オリンピックアスリートの父を持つJ.M.シンや、実業家の家に生まれたアージュン・アトワル、父が軍医だったアニルバン・ラヒリなど、インド国内でも裕福な家庭に生まれてゴルフを始めた選手たちがいる一方、チャウラシアのようにキャディからの叩きあげで成功をつかんだ選手もいる。

聞けば、ロイヤルカルカッタGCもキャディたちへのサポートは熱心で、仕事のないときは1日75ルピーで18ホールをラウンドできる。日本円に換算すれば、150円もしない金額だ。大会を観戦していたギャラリーも、多くがキャディやその子供たち。彼らのほぼ全員がゴルファーで一打一打を本当によく理解していた。

今週、プロアマを一緒に回ったモハンマド・サンジュの自宅も、3番ティの裏に見える雑踏の中にある。今シーズンのインドツアーでは約158万円を稼いで賞金ランク36位。アジアンツアーにも挑戦したいが、QTのエントリーフィー2000ドル(約22.6万円)も、仮に通過した場合の転戦費用も決して安い金額ではない。道具もウェアも自前で揃えるのが当たり前。チャウラシアのようなブレークスルーを果たすには、地道に結果を残していくしかない。

あるインド人選手が、和田章太郎のキャディバッグにスポンサーロゴが4つも付いていることを、うらやましそうに茶化していた。日本から来た選手たちの一打と、ここから這い上がろうとするインド人選手たちにとっての一打は、いかほどに違うのだろうか。“ゴルフがうまくなりたい”という強い思いも、この地に息づく巨木のように、深く強く根を張っているに違いない。(インド・コルカタ/今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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