全選手のPCR検査費用を負担 石川遼が高校生に用意した真剣勝負の舞台
大会中止→YouTubeチャンネル開設→石川遼取材 高校ゴルフ部員が駆け抜けた6カ月
◇The “One” Junior Golf Tournament 最終日(25日)◇横浜カントリークラブ西コース(神奈川)◇男子7207yd、女子6601yd(ともにパー71)
大会を楽しみしていたのは、出場する高校生ゴルファーだけではなかった。大会公式記録の腕章を巻いて石川遼にインタビューを行った金子拓馬さんと高橋凱さん。ともに埼玉・慶応志木高のゴルフ部に所属する3年生だ。石川のインタビューに先駆け、出場選手たちのプレーぶりを動画で撮影し、直接話も聞いた。
<< 下に続く >>
高校のゴルフ部員が大会を取材――。興味深いトライの経緯は、金子さんがゴルフ情報を配信するYouTubeチャンネル「STARGOLF」を開設した3月までさかのぼる。予選を通過して出場権を得ていた春の全国大会が中止となり、高校生活の総決算となるはずの1年間が一気に見通せなくなった。
「高校での(ゴルフ部としての)活動は厳しいかもしれないとなったとき、この最後の1年をどう使おうか考えました。小学校から9年間、プレーヤーとしてゴルフをやってきて、大学でも続けようと思っている中で、プレー以外で何をしたいか、何ができるか、別の道をつくれないか、と。その一つが、もともと興味のあったYouTubeでした」
最初は自分の練習風景を撮影し、番手ごとに練習のポイントを紹介することから始めた。新しいギアの試打レビュー、実際にラウンドして状況に応じたプレーの解説など活動を続けていく中で、石川遼が高校生のために大会を開催することを記事で知った。
「オレも出られるかも!やった!」。選手として出場できる希望を抱いた金子さんだが、自分のランキングではかなわないことが分かった。しかし、そこで立ち止まらない。YouTubeチャンネルで大会の様子を伝えることはできないか。断られることも覚悟で石川のマネジメント事務所に手紙を送った。インターネットで調べ、見よう見まねで作成したという取材申請書だが、石川は「プロのように(取材の意図や狙いなどが)しっかりしていて驚いた」と振り返る。取材の許可が出た。
そもそも、学生競技ゴルフが話題になる機会はそれほど多くない。数多くあるゴルフ関連のYouTubeチャンネルでも、大会の様子を伝えるものはほとんどないと感じていた。
「高校野球の甲子園って、すごく注目されるじゃないですか。同じ高校の全国大会でも、ゴルフって中継されないですよね。格差じゃないですけど、世の中の皆さんがイメージしづらい部分だと思う。同じ高校生として、彼らの記録を残したい、世の中の多くの皆さんに知っていただきたいと思ったんです」。同年代の仲間たちの姿を伝えたいという純粋な思いも、原動力になった。
高校のゴルフ部としては活動できない状況が続き、いまだに新入部員と直接顔を合わせることもできていないという2人。コロナ禍でも前を向いてできることを模索し、石川のインタビューまでこぎ着けた。選手とはひと味違う大会の思い出も、きっと人生の財産になる。(横浜市保土ケ谷区/亀山泰宏)
亀山泰宏(かめやまやすひろ) プロフィール
1987年、静岡県生まれ。スポーツ新聞社を経て2019年にGDO入社。高校時代にチームが甲子園に出場したときはメンバー外で記録員。当時、相手投手の攻略法を選手に授けたという身に覚えのないエピソードで取材を受け、記事になったことがある。