アレックス・ノレンが逃げ切りで今季3勝目
2016年 人生が最も変わった男とは?
2016年シーズンの欧州ツアーは、包括的に見ると、スウェーデン勢の成功が大勢を占めたといっても過言ではなかろう。すなわち、アレックス・ノレンの驚くべき復活劇と、「レース・トゥ・ドバイ」を制したヘンリック・ステンソンによる圧巻のパフォーマンスである。
2012年当時、世界ランキングで224位に停滞していたステンソンが、その後、メジャー制覇を遂げ、「レース・トゥ・ドバイ」を2度にわたって制し、ゴルフ界で最も影響力のある選手となったサクセスストーリーは最近良く語られている。
そういう意味では、ノレンはステンソンほど劇的なシーズンを送ったわけではないかもしれない。
しかし、34歳になった「全英オープン」王者の同胞は、2015年シーズン開始時には世界ランキングで653位に過ぎなかったものの、今季は4勝を挙げ、「レース・トゥ・ドバイ」をキャリア最高の3位で終えたのである。
手首の負傷で世界ランキングを大幅に下げながらも、瞬く間に世界ランキングトップ10に上り詰めたスピード感は見事というほかない。
ノレンにとってソ堅調とは言いながらも、平凡な出だしとなったシーズンだったが、全てはスコットランドのマレー湾のほとりの風の強い7月の午後に一変した。
キャッスルスチュアートに降臨したアレクサンダー王
強い風でキャッスルスチュアートが牙を剥いた大会に世界99位で臨んだノレンは、卓越したボールコントロールとピンポイントのアイアンショットを見せ、ティレル・ハットンを退けて「アバディーンアセットマネジメント スコットランドオープン」で2016年シーズンの初勝利を飾った。
その前の7大会でトップ10入りが3回と、前兆がなかったわけではなかったが、ノレンにとって、キャリア最高額の獲得が、その後の魔法の4カ月の幕開けとなったのは明らかである。
スコットランドで大会を制したノレンは、「ゴルフがどれだけタフか知っているので、勝ててとてもうれしいね。また来週はどうなるか分からないけれど、とにかくこの勝利をエンジョイしたい」と述べた。
アレックスはその後も成功を謳歌することになるのである。
スイスアルプスで圧巻の優勝
「スコットランドオープン」を制し、「アバディーンアセットマネジメント ポール・ローリーマッチプレー」で決勝まで勝ち上がったノレンにとって、次なる勝利は単に時間の問題だった。
見事な景観のクランスシュルシエレGCで、ノレンはスコット・ヘンドとのプレーオフ1ホール目で7.5メートルのバーディパットを沈め、今一度勝利の美酒を味わったのである。
世界は、にわかに絶好調のスウェーデン人選手に注目し始めたのである。
「ブリティッシュマスターズ」でハットトリック達成
ノレンは完全に手のつけられない存在となった。ザ・グローブでの最終日を3打差の首位で迎えたストックホルム出身の絶好調男は、最終ホールでバーディを奪う冷静なプレーで最終日を2アンダーの「69」でラウンドし、2打差で「ブリティッシュマスターズ」を制したのである。
4カ月間で3度目の勝利を挙げたことにより、ノレンは自身のキャリアで初めて世界のトップ20入りを果たしたのである。
「信じられない心持ちだね」とシーズン3勝目を挙げた後に語ったノレンは、「こんなことが起こるとは夢にも思わなかった」と加えた。
しかし、話はそれで終わらなかった。
サンシティで輝きを放ったノレン
アレックス・ノレンの人生を変えるシーズンが終幕に差し掛かるなか、不屈のスウェーデン人選手は、南アフリカのサンシティで今一度輝きを放った。
フィールドが限定された「ネッドバンクゴルフチャレンジ」にこれまで一度も出場したことのなかったノレンだったが、デビュー戦でいきなり圧巻のパフォーマンスを披露して優勝を遂げたのである。
首位と6打差で最終日を迎えたノレンは、1イーグル8バーディ、1ボギーの「63」で最終日をラウンドし、結局6打差で優勝して、スウェーデン人選手として初めて欧州ツアーでシーズン4勝を果たしたのである。
それだけでなく、ノレンは世界ランキングで9位と、キャリア初のトップ10入りを果たし、世界最高峰の選手としての地位を確立したのである。
「もちろん、これは僕にとって人生最高のシーズンとなった」とノレンはシーズンを振り返って語った。
2016年シーズンの欧州ツアーで、ノレンほど人生が変わる体験をした選手は、他にいなかったかもしれない。