【WORLD】PGAツアーにも韓流旋風
Golf World(2012年3月20日号) GW voices texted by Tim Rosaforte
チェ・キョンジュやY.E.ヤンに刺激を受け、韓国出身の男子ゴルファーはプロゴルフ界に急増し、そしてPGAツアーに乗り込んできた
カン・スンホンは、2012年のPGAツアーで名を成した韓国若手ゴルファーの中で、最高のゴルフをするわけではないかもしれないが、最高の英語を操ることができる。彼は先日、フロリダ州パームビーチ・ガーデンにあるPGAナショナル・リゾートのグリーンで、アメリカでゴルフができることがいかに幸せかを語った。「これこそ世界最高峰のツアーだ。だから、私はここでプレーしています」と、ダラス在住のカンは言う。「自分の思い描いた夢が現実になったのです」。
カンの言葉は、昨年秋以来、リーダーズボードに浮上してきた数多くの韓国出身ゴルファーの気持ちを代弁している。ザ・プレジデンツカップであれ、PGAツアーQスクールであれ、その年初めてのWGCイベントであれ、ベ・サンムンやノ・スンヨル、キム・キョンテといった面々が話の一部となっている。先日の「ザ・ホンダクラシック」には9人の韓国人ゴルファーが名を連ねた。またこの大会には、わずか5度目のツアーイベント出場となった「マヤコバクラシック」で優勝した韓国系アメリカン人ルーキーのジョン・ハーも出場していた。
1999年にQスクールを経て、韓国人として初めてツアー出場権を手に入れたチェ・キョンジュや、2009年全米プロ王者のY.E.ヤンと一線を画するのは、彼らはみな26歳以下と若く、新しい世界観を持っていることだ。彼らはまた、カリフォルニア大学バークレー校出身で、永住権を持ち20年以上もアメリカで生活するチャーリー・ウィや、南カリフォルニアで育ったケビン・ナ、ライダーカップやプレジデンツカップで米国代表になったアンソニー・キムらともまた違っている。
「みんなすでに韓国で実績を積んだプレーヤーだ」と、カンは新世代について話した。「それをここで発揮しているだけだよ」。
24歳のカンは、昨年行われた「チルドレンズ・ミラクル・ネットワーク・ホスピタルズクラシック」で最終ホールでバーディを奪い、3位タイで終了。最終的に賞金ランキングで125位以内に入り、2012年のシード権を手に入れた。昨年は、ネイションワイド・ツアーの「BMWチャリティプロアマ」でも2位に輝いている。
愛称“ムーン”がお気に入りのベは、2009年の「韓国オープン」でロリー・マキロイを相手に勝利し、先日行われた「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」では準々決勝まで進んだが、今度は全米オープン王者に敗れた。2011年には日本ツアーで3勝を挙げて賞金王となり、最終ラウンドを「66」で回ったPGAツアーQスクールは11位タイだった。
20歳のノは、Qスクール最終予選を3位タイで終え、PGAツアー出場権を手に入れた最年少プレーヤーだ。2010年のクアラルンプールで開催された「メイバンク・マレーシアオープン」では、最終ホールでバーディを決め、1打差でキョンジュに勝利した。ノは当時ヨーロピアンツアーで優勝した最年少ゴルファーだったが、2009年の「ジョニー・ウォーカー・クラシック」では、韓国生まれのニュージーランド人、ダニー・リーが、アマチュアとして68日若くして優勝を収めている。
プレジデンツカップのシングルマッチで、ウェブ・シンプソンを1アップで下したキムは、世界ランク39位まで上り詰め、現プレーヤーズ選手権覇者のキョンジュに続き、韓国人で最高位につけた。先日、フロリダ州ドラールにあるTPCブルー・モンスターで開催された「WGCキャディラック選手権」には、べや、41歳を迎えてツアーの常連となったベテランのキョンジュ、ヤンと出場。「私たちはみんないい仲間です」とキムは言う。「みんなまだまだ若いから、互いに切磋琢磨しています」。
また、キョンジュが韓国人として初めてPGAツアー出場権を獲得し、勝利を収めた(2002年コンパック・クラシック・オブ・ニューオーリンズ)10年前、彼らは全員韓国代表チームに所属していた。キョンジュと韓国人で初めてメジャー勝利を収めたヤンは、仲間というよりもライバル意識の方が強かった。
「2人は年月を重ねている。僕たちはまだ若すぎます」とカンは言う。「僕たちは一緒に遊ぶし、代表チームとしてたくさんの時間を一緒に過ごしています、僕とキョンテは、9歳か10歳くらいからの友達ですから」。
カン、ベ、ノ、キムは、最終的にPGAツアーを、現在のLGAPツアーのように変える第一波なのだろうか? 韓国の徴兵制度を指摘するカンは、そうは思わないと言った。NBCで解説を務めるゲイリー・コークも、別の理由から、そうは思わないと言った。「今、彼らにはチェやヤンのようなロールモデルがいます」とクックは言う。「彼らの存在は、女子ゴルフ界のパク・セリのような存在でしょうが、同じ数のゴルファーがPGAツアーに登場するとは思えない。PGAツアーの競争レベルは、かなり高いものです」。
だが、韓国代表チームでプレーすると兵役の義務は短縮される。世界ランクがメジャーやWGCを決定づける中、韓国人ゴルファーたちは、PGAツアーに進む前に、アジアでプレーして自信とアクセスを手に入れる。彼らの練習意欲や、2015年に母国でプレジデンツカップが開催されることを考えると、この先5年間で、PGAツアーに参加する韓国人ゴルファーの数は倍増すると、キムは考えている。そして、キムに同調する人も数多い。
「韓国でのゴルフ人気は絶大です」とはチャーリー・ウィ。「数年前は数多くのLPGAプレーヤーがいたのに、PGAプレーヤーはわずか3人だけだった。男子ゴルフがようやく追いついた、という気持ちです」。
「20年前のヨーロッパ勢を見ているようだ」と話すのは、ライダーカップでアメリカ代表キャプテンだったデービス・ラブIIIだ。「以前は(ヨーロッパ勢は)全然PGAにいなかったのに、今では半分を占めるくらいになったんだから」。
リッキー・ファウラーは、昨年、拡大しつつあるワンアジア・ツアーでの韓国オープンで、ロリー・マキロイに勝った時に、韓国の成長ぶりを感じた。「韓国に行った時、本当に感心したよ。練習場に行くと、若い(韓国の)プレーヤーたちがたくさん熱心に練習しているんだ。将来、PGAツアーにもっと多くのゴルファーがやってくるだろう。その週に、彼らと一緒にプレーしたんだけど、うまいプレーヤーたちはどう見ても20代前半にしか見えなかったよ」。
キョンジュやヤン世代のプレーヤーが持っていた言葉や文化の壁は、それほど問題ではないことも、ファウラーは感じた。「ほとんどのプレーヤーが、会話ができるくらいの英語を話せるんだ」とファウラーは言う。「韓国でまったく場違いな感じはしなかったよ」。
韓国人プレーヤーがPGAツアーにやってきても、同様に場違いな感じはしない。彼らも夢を現実にしているのだから。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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