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メディアをも変貌させたタイガーの存在

2004/06/10 09:00


タイガー・ウッズの「不調」話は、もしかすると、コースでの彼の不調からではなく、単にメディアのネタ探しから来ているのではないだろうか。ウッズが1996年の夏の終わりにPGAに現れてから、報道の激化はまさに目を見張るものだ。なかにはタイガー専科の報道もあるというありさまだが、この動きは情報発信の増加拡大と関連している。

メジャー・チャンピオンシップの報道用テントはいまや、老舗の新聞雑誌のスポーツ記者のみならず、ケーブルテレビのスポーツ番組、24時間のニュースチャンネル、そしてインターネット関係の記者たちで埋め尽くされている。そのうえ、スポーツ関係者だけでなく、一般のジャーナリストも何か書くものがないかと詰めかけているのである。

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1953年まで、プレハブと呼ばれるものはなく、1934年からそれまでは、マスターズの記者はクラブハウスや臨時のテントからリポートをした。最初のうちは10人のタイプライターが身を寄せ合う程度の建物だった。報道陣の増加に伴って、プレハブは1990年には3倍の大きさになり、その後その5倍の大きさのビルが建てられた。今年のマスターズでは1,000人を収容、カメラマン、インターネット関係者用の設備、400人分のライターのスペースを提供した。

USGAのメディア部門のディレクター、クレイグ・スミスによると、来週の全米オープンでは「1960年には数百人だったレポーターも、1,000人ぐらいになっているだろう」と、予想する。こうした数字は、ゴルフ・ライターズ協会のメンバーの数とも連動している。同協会は1946年に数十人のギルドとして始まり、1963年には200人、現在約900人を抱えている。スミスは1997年の全米オープン時、メディアの急増に既に気付いていたという。1997年といえば、ウッズがマスターズで記録破りな勝利でデビューし、マイケル・ジョーダン、モハメド・アリやベーブ・ルースのような世界的著名人の仲間入りをした年だ。大会前の記者会見は、にわか記者たちが「ゲームを盛り上げるような」質問―ウッズの食生活や彼の宿泊先はどこか―をするなど、報道陣のサーカスのようだった。そこにいた者にとって、ゴルフの報道に変化が現れたことは明らかだった。

この道50年のゴルフ記者ロン・グリーンSr.によると、昔は「ラジオ関連を含めて15人か20人くらいしかゴルフのトーナメントには来なかった」し、そのころのライターは、情報へのアクセスが容易だったこともあり、プレイヤーにもっと詳しかった。決定的な変化は、ケーブルテレビによるライブ映像が印刷メディアを凌駕した時に起こった。ゲームのニュアンスを伝えるのに長けた筆記者は、ゴルファーをバラエティ番組張りの有名人に仕立て上げるヘッドラインニュースにとって代わられた。同時に、新手の解説者たちがESPN、CNN、Foxや「ゴルフ・チャンネル」に新たに加えられた報道時間帯のおかげでメディアの中心に出てきた。インターネットのサイトや、チャットルームの登場もまた、ゴルフを24時間体制の解剖、分析、考察の対象にした。

こうした場面にウッズが全く関わっていないわけではない。1996年9月の、グレーター・ミルウォーキー・オープンでの彼のプロデビューは、彼の市場価値を見込んだ「ナイキ」らのハンドラーたちによるお膳立てがあった。その年の終わりには、『スポーツ・イラストレイテッド』が「スポーツマン・オブ・ザ・イヤー」の彼を、推定年収4,000万ドル以上の神のような存在に仕立て上げ、世界一有名なアスリートにした。そしてこれは彼がまだメジャーで優勝する前の話なのだ。

二年間近く、ウッズはメジャータイトルを取っておらず、かつて彼を持ち上げることで儲けた人間が、今では彼を叩くことで生計を立てている。同じようにメディアから距離をおいたことがあるゴルファーに、ジャック・ニコラスがいる。彼は1967年の全米オープンから1970年の全英オープンまでと、1972年の全米から1975年のマスターズまでの二回にスランプを経験している。しかし、こういう時にニコラスを取材した記者たちは、彼自身が良く知っている人々で、ゲームにはリズムもあるということを良くわかっていた。

一般的に、ゴルフ報道とスポーツ報道の規制は30~40年前までは今日のように厳しくなかった。スポーツニュースは、午後6時と11時のニュースの5分枠と、15分か30分のスポーツハイライト番組に押し込められてしまった。今では、「ゴルフ・チャンネル」をはじめとする24時間番組があり、ライブ映像やプレイヤーの近況、一時間に及ぶツアー解説者の議論などを見せてくれる。細切れの映像で見せられては、誰のプレイも素晴らしいものに見えるわけがない。ウッズのように眩しいばかりに登場したプレイヤーならなおさらだろう。

ウッズの「スランプ」は、ほとんどのPGAが羨むようなスランプだ。今年ウッズはWGCアクセンチュア・マッチプレイ・チャンピオンシップで優勝しており、5月の終わりには『ゴルフ・ウィーク/サガリン』のパフォーマンス・インデックスで1位、世界ランキングで1位、PGA獲得賞金リストでは3位を飾っている。事実、彼が5つの優勝を勝ち取り、「プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」を得た去年でさえ、タイガーのスランプの噂は既に飛び交っていた。1997年のマスターズと2002年の全米オープンの間に8つのメジャータイトルを押さえた後で2年間何もないことは確かに無視できない。雑誌のコラムで、ラジオのトークショウで、インターネットで、「タイガーは一体どうしたのか?」といった声が聞かれるのは当然のことだ。

しかし、このスランプ、あるいは「作られた」不調話は印刷媒体やテレビで報道されるに相応しい事柄だろうか?全ての報道は選択に基づいているし、ゴルフやスポーツのレポートも例外ではない。書き手が詩人であろうと新時代のブロードキャスターやウェブジャーナリストであろうと、ニュースやコラムは、想像や架空の産物である。これまでにない人数のリポーターが今までにない量のメディアスペースに関わっているのだから、ちょっとした噂やその誇張が流通し、一般的な認知となってしまうのも不思議ではないのかもしれない。

Golfweek



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