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「覚悟が決まったから、勝てた」 松山英樹が振り返る2021年

松山英樹が偉業を成し遂げた2021年が終わろうとしている。マスターズチャンピオンとして迎える年の瀬は、やはり少し違った気分なのかもしれない。

「うれしいけど、(まだ)あんまり現実じゃないような感じで。なんか、ずっとグリーンジャケットを持っておきたいなって、一年間ってすごい短いなって思いますよね」。そんな気持ちを加速させるのは、もちろんコロナ禍という特殊な事情も関係しているだろう。「今まで(日本に帰れば)気軽に会えていたような人でも、まだ会えていない人がすごくいる。そういう意味では、もうちょっと(余韻に浸る)時間が欲しいなっていうのはありますよね」

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後輩に背負わせない

夢ではなく目標―。メジャーで勝つことを誰より明確に見据えてきた。「自分もそう(夢だと)は思っていなかったけど、結局“線”を引いている部分が絶対にあったと思う」とも振り返る。

今回の優勝を含め、直近10年で日本人選手がメジャーでトップ10入りしたのは8回。これは松山がメジャーでトップ10に入った回数とイコールで結ばれる。「2009年のマスターズで片山晋呉さんが入って以来、僕以外でトップ10に入っていないんです」。初めてトップ10に入った2013年「全米オープン」から、もっと言えばアマチュアで鮮烈なデビューを飾った11年「マスターズ」から、日本の悲願は一人に託され続けてきた。

「“いつでも勝てる”とか言われるのは(正直)しんどい部分もありました。頑張って米国に行きたいと言ってくれている金谷(拓実)とか(中島)啓太くんに、このしんどい思いをさせたくない。僕が抱いてきた疑問、葛藤…全部を彼らに背負わせるのはかわいそう、絶対にイヤだって思った。その覚悟が決まったから、勝てたのかなって(今では)思います。僕が勝ったことによって、一回日本人が勝ってるから、ヒデキが(前例として)いるから、その下もついてくるでしょ…って感じだったら、彼らにはその(重い)期待が少しはなくなるかもしれない。彼らには彼らの人生で、自分との闘いで挑戦してほしい」

心に張った“予防線”

極限の緊張状態に達するメジャーの優勝争い。松山自身、サンデーバックナインを首位で迎えた17年「全米プロ」のプレーは今も脳裏に焼き付いている。「やっぱり、あの悔しさは今でもあります。あるけど、それを上書きしていかないと、強くなれないっていうのもある」。頂点に迫り、惜敗に涙を流した一戦を経て繰り返してきた自問自答。後続に4打差の首位で迎えたマスターズ最終日も過酷だった。

「これで負けたら、なにを言われるか分からない。自分に対する予防線じゃないけど、そういうものを張っておかなきゃ、3日目が終わった瞬間に精神状態も無理だったんだろうなって。ロリー(マキロイ)が(2011年)最終日に崩れたこともあったし、あのグレッグ・ノーマンも(1996年最終日)6打リードがあって勝てなかった。『それよりも少ないんだから…』とか、自分の中で言い訳を作っていました。だからといって、落ち着くことはなかったけど」

くしくも、そのノーマンと邂逅を果たしたのが3日目を終えたとき。偶然でしかないすれ違いざまに「Good Luck!」と声をかけられた。最終日の朝には、プレジデンツカップでつながりがあったマイク・ウィア(カナダ)が「お前ならできる!」と背中を押してくれた。「いろんな人とのかかわりがあったから頑張れた。日本で応援してくれている人を含めての力だったし、下の子たちがいるからって途中で思ったことも力になった」

“逃げてない”フェード

ライバルたちの猛追を必死にかわし、最終日の最終盤に放った1Wショットは長年追い求めてきた弾道だった。17番のドロー、そして18番のフェード。それぞれに本人だけが知る意味がある。

「最善の策でやったこと。フェードを打つこと(自体)に対して“逃げ”っていうのはないんですよ。ただ、打ち方っていうのがある。これは自分の感覚的な話になっちゃうけど、逃げてないフェード。それを打てたことがうれしい。フェードボールなんか、いつでも打てると思っていましたし。けど、それに頼って、逃げるフェードをずっと打っていたのを、ちゃんと自分がこういうフェードを打ちたいっていうのを打てたから、うれしかった。逆に17番でしっかり(持ち球の)ドローを選択できたっていうことも、うれしかった」

答え合わせの先に

日本人選手をはね返し続けた最高峰メジャーの舞台。正面切ってぶつかり続けたから、分厚い壁を打ち破ってグリーンジャケットをつかむことができた。

「逃げたからこそ、あそこ(全米プロ)で勝てなかったと思う。(逆に)逃げないでやったことが、(そこから)3年間勝てなかったことにもつながっていますし。(その3年間も)逃げなかったから勝てなかったというのもあるかもしれないし、逃げた方が勝てたかもしれない。正直、そこに答えってない。けど、今年マスターズに勝って、(10月)ZOZOにも勝てたことで、やってきたことが間違っていなかったんだっていうのも、すごく思いました」

自分を信じ、仲間を信じて道を切り開いてきた。キャリアを通じて味わってきた全てが2021年の歓喜につながっている。(編集部・亀山泰宏)

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