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2021年 全米オープン
期間:06/17〜06/20 場所:トーリーパインズGC(カリフォルニア州)

全米オープンが地上波で中継されない理由

コロナ禍が続く2021年、安全に楽しめると関心が高まるゴルフは松山英樹のマスターズ制覇、笹生優花の全米女子オープン優勝という追い風を受け、「行うスポーツ」として空前の活況を呈している。

その一方で、「見るスポーツ」としてのゴルフには異変が生じている。17日に開幕する男子メジャーの全米オープンで、テレビ地上波の放送が見送られたのだ。「ゴルファー世界一決定戦」は長年、テレビ朝日系列で中継されてきたが、何が起きているのか?深層を探った。

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■ 米国は放映権高騰

「今回の“地上波放送なし”はマスターズで松山選手が優勝する前に決まっていて、業界では話題になっていた」と明かすのは、あるテレビ関係者だ。

全米オープンはほかの人気スポーツと同様、テレビ局などは権利者からライセンスを購入して放映する。米国では、FOXスポーツが2015-26年の12年間の放映権(全米女子オープンなどを含む)を主催者の米国ゴルフ協会(USGA)から10億ドル(約1096億円)以上とされる金額で購入したが、昨年NBCユニバーサルに“転売”した

放映権料はスポーツを興行として成立させる主要な柱のひとつで、メディアの多様化や米国の好況を背景に価格の高騰も指摘される。

■ 値上げ要請はあったのか?

では、日本で今年の地上波放送が見送られたのも、放映権料の高騰が理由なのだろうか?

ツアー関係者は「そうではない」と断言する。「日本に対するメジャーの放映権料はここ数年上がっていないと聞いている。権利主側の現実的な関心事は、現状を維持できるかどうかだ」と声を潜める。

電通の調査によると、2020年のテレビ地上波の広告費は前年比88.7%の1兆5386億円と推定される。新型コロナウイルスによるプロスポーツの中止が直撃した形だが、15年は1兆8088億円、19年は1兆7345億円で、若年層を中心とする「テレビ離れ」が漸減傾向を加速させている。

「10年続いている流れだが、地上波テレビはかつてほど視聴率が取れなくなっており、CMの単価(の低下)に直結している」(別のテレビ局幹部)

このような状況や証言から、USGA側は放映権料の値上げではなく現状維持を要求したが、値下げを望むテレビ朝日側が応じられなかったというのが実態だと推測される。テレビ朝日は「(放映の)対応はしません」(宣伝部)と言葉少なだが、今年の全米オープンが地上波で放送されない主因は「放映権料の高騰」ではなく、「テレビ局の体力低下」にあると言える。

■ 来年以降も地上波なし?

今年の全米オープンは、2003年から大会中継を続けるゴルフ専門CS局の「ゴルフネットワーク」に加え、スポーツ動画配信サービスの「DAZN」(ダゾーン)が初めて放映する。

来年以降も地上波放送はなく、有料配信が定着していくのか?ツアー関係者は「有料放送モデルのCS放送やネット中継で、どれぐらいのゴルフファンが視聴するか次第だと思う」と指摘する。

米国に次ぐ第2のゴルフ大国の日本で、ファン層を拡大できればUSGAにとってもさらなるビジネスチャンスにつながる。注視するのは「テレビを見るのはタダ」がまだまだ主流の日本の視聴者の動向だ。

ツアー関係者は「有料モデルの視聴者が少ないと判断すれば、地上波の放映権料を下げざるを得ないのではないか」と来年以降に向けた攻防に目を凝らしている。(GDOニュース編集部)

米ゴルフ事情に詳しい小林至・桜美林大教授の話
日本のテレビ市場は規制に守られた国内産業であり、言語の壁もあり、国際競争力に乏しい。実際、売り上げ日本一の国内テレビ局ネットワークでも、米スポーツ専門局ESPNの半分ほど。世界中で進むインターネット配信への転換で、体力はさらに低下している。コロナ禍で(テレビ局の)お偉いさんが現場に行けないことで、海外スポーツの中継予算は削減されやすい状況にあるだろう。日本のゴルフ観戦市場は非常に大きいが、ゴルフ専門チャンネルが相当数カバーしている。地上波は最大公約数に売れて、かつ安いコンテンツにますます傾注せざるを得ない市場環境のもと、日本の深夜に開催される海外スポーツに高額な放映権料を払ってまで放送する意味は薄れている。

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