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「長い」は正解か PGAツアーが日本のコースに施したセッティングの妙

2019/10/20 09:54

◇日米ツアー共催◇ZOZOチャンピオンシップ 事前情報◇アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ◇7041yd(パー70)

7041yd、パー70--。日本初のPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の18ホール総距離は数字を一見すると、世界最高レベルの選手たちが戦うには短いようにも思える。「マスターズ」が行われるオーガスタナショナルGCは7475yd(パー72)。各国の男子トーナメントで7500yd前後の設定が当たり前になっている昨今だが、距離の決定を含め、今大会のコースセッティングをリードしたのは百戦錬磨のPGAツアーのスタッフたちだった。

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アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブは36ホール(キングコースとクイーンコース)を持つ。大会は両コースから9ホールずつを選ぶ形で18ホールを構成。コース管理の責任者を務める瀧口悟エリアコースマネジャーによれば、クラブ側は当初、7500yd前後のセッティングをPGAツアーの担当者に提案したという。

ツアー側はチェックを重ねるたびに「大切なのは距離ではないんだ」と主張した。瀧口さんは成田GCで行われた米国シニアツアーでも、彼らと仕事をした経験があった。

「私たちは勝手に『やさしい設定は良くない。難しい方が良いはずだ』と考えていたんです。でもツアーは『ボギーよりも、バーディの方がエキサイティング。バーディが出れば、見ている人も喜ぶ。それでスコアが伸びる分には何の問題もない』と」

各ホールが持つ可能性をセッティングで引き出す目的は、あくまでトッププロの技術を観る人にどう伝えるか、という点に尽きる。固定概念は次第に崩れていった。

土地ごとに気候風土が異なる広い米国大陸だけでなく、各国で大会を開催してきたツアースタッフは、豊かな発想も持ち合わせていた。ゴルファーに年間を通じてボールの転がりの良いグリーンを提供する、日本独自の「2グリーン」(各ホールに2つグリーンが設けられているゴルフ場のつくり)を、今回初めて目にした米国人スタッフも多かった。彼らは驚きつつも「これは日本の文化だ」とすぐに理解。大会の4番ホールでは、ツアーで初めてラウンドごとに2つのグリーンからピンプレースを決めるという大胆な試みを実施する。

「重要なのは距離ではない」という考えを日本のスタッフに植え付けながらも、斬新なアイデアでヤーデージを伸ばしたホールもある。ただ、それは「長い方が難しいから」という理由によるものではない。

後半10番は、普段はバックティの後方にあるパッティンググリーンをティエリアとして使用する。左ドッグレッグのこのパー4は普段の設定では、第1打でショートカットを狙ったボールの落下地点がティエリア周辺から見えなくなる。

「当初考えていたティからは、左の木の上を狙っていく選手も多いだろうと思っていたんです。でもツアーは『ボールのランニング(落としどころ)を見せたい』と話していました」と瀧口さん。ティを10yd下げただけで、ショートカットを試みるケースが減り、正面に見えるエリアを狙う選手が多くなるだろう、というのが狙いだ。

ボールの行方を目で追えないホールは、歓声の量を半減させる。プロスポーツは観る人がいて、興行として成り立つ。PGAツアーには、コースセッティングの段階から「観せるために行うのがプロゴルフである」という考え方が根底にある。

およそ1年にわたって、習志野カントリークラブは準備を進めてきた。この秋には、2度の大型台風にも見舞われた。ツアーの高水準の要求は「厳しいというか、面白いですよ。本当に勉強になります」と瀧口さんは言う。ときに難題を突きつけられてきたが、昨年の暮れに仕事を開始した際のツアースタッフの言葉が支えのひとつになっている。「きょうから僕たちはみんなファミリーだ。たくさん話をしながら、一緒に大会を成功させよう」(編集部・桂川洋一)

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