もうゴルフはしたくないからの快挙 桑木志帆の高校時代に恩師は「我が道を行くタイプ」
◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子)◇ロイヤルリザム&セントアンズGC (イングランド)◇6601yd(パー71)
桑木志帆が海外メジャー初優勝をあげたイングランドから9000km以上離れた岡山県で山岸優子さん(43)は驚きの声をあげた。「プレーオフは負けて(国内女子ツアーでは2戦2敗)泣いているときのことが多かったから不安だった。波に乗ると爆発的なスコアを出すタイプだけど、全英女子で優勝するとは…当時からは結びつかない」
“最低限”だった技術的指導
山岸さんは2018年から岡山理科大学附属高ゴルフ部監督として指導にあたり、ゴルフ部1期生の桑木については2年生から卒業までを担当した。「体があんなに硬いのにケガをしない。なんせ、とにかく体が丈夫だった」と第一印象を明かした。とはいえ「日が暮れてもずっと(練習を)やるタイプなので、誰かが止めないとケガをする」とブレーキ役として目を配っていた。
自身も2010年のプロテストに合格し、18年ごろまで競技者としてプレーするなど、経験と育成へのノウハウは豊富だった。それでも「教わるタイプじゃない、我が道を行くタイプ」と評する桑木への技術的な指導は“最低限”だったと話す。ある時コースマネジメントについて問われて回答したものの、次の日には全く反対のことを実行して好スコアをたたき出す姿に苦笑いするしかなかった。
悔し涙のエピソード
2年時にはキャプテンとして寮生活5人の部員をまとめていた桑木だが、3年時は別メンバーが新キャプテンに就いた。「当時5人ともキャプテンをしたいというタイプで、(3年時は)一番大人だなという子にしてもらった。キャプテンはお願いも増えるし、プロテストを受けるのだからプロテストに集中しなさいと」。理由を聞かされても泣きながら猛抗議した。
思い出深いのが6月にプロテスト初挑戦を控えた2021年。5月「中国女子アマチュア選手権」で12位に終わり、「日本アマチュアゴルフ選手権」の切符を逃した。プレー後のクラブハウスではひざから崩れ落ちて、「もうゴルフはしたくない」と人の目も気にせずに泣き続けた。それでもプロテストにはきっちりと修正を間に合わせて一発合格してみせた。
「ずっと一線で活躍できるように」
練習後にはプロになったときを想定し、「自分たちの言葉でちゃんと話ができるように」(山岸さん)と優勝スピーチの練習も行った。動画で撮影しては部員らでお互いをダメ出しした。世界が注目する全英の表彰式で堂々とスピーチした姿は恩師にとって感慨深いものに違いない。
初めて出会ってから8年で日本女子ゴルフ界を引っ張る一人にまで成長した。「ずっと一線で活躍できるように。体に気をつけて息の長い選手になってほしい」と、桑木の地元・岡山県から静かにエールを送った。(編集部・玉木充)