「みずほ アメリカオープン」最終スコア
2023年 みずほアメリカズ・オープン
期間:06/01〜06/04 場所:リバティーナショナルGC(ニュージャージー州)
スーパーショットでプロ初戦を制覇 ローズ・チャンを男女レジェンドが祝福
◇米国女子◇みずほ アメリカオープン 最終日(4日)◇リバティーナショナルGC (ニュージャージー州)◇6656yd(パー72)
圧巻の一打でプロデビュー戦を締めくくった。ジェニファー・カップチョとの18番でのプレーオフ2ホール目。ローズ・チャンの4UTでの第2打は日没間際の空に高く舞い上がり、グリーンで大歓声を響かせた。「すごい重圧の中での最高のショットのひとつ」。2mのバーディパットを外しても、メジャー覇者を退けるタップインが新時代の幕開けを予感させた。
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前月26日に鳴り物入りでプロ転向した20歳は、デビュー戦で最後まで堂々とコースをかっ歩した。最終日は強風でチャンスが少ない展開で「ピンを攻めるのは賢くない」と守りを固め、ナイスセーブを連発。9番ではバンカーから、10番では打ち上げのアプローチをグリーンエッジでワンクッションさせ、こともなげにボギーを回避した。
「16番までスコアボードは見なかった」と後退していく先輩プロには目もくれず、淡々とパーを重ねていく。第1打を左に曲げた12番では木を越えてグリーンをキャッチ。17番では3mを沈めて3パットボギーを免れた。「とにかく楽しもうと。ゴルフは時に複雑に考えて、悪い結果を招いてしまうことがある。これまでの経験からシンプルに考えるようにした」。正規の18番で喫した2つ目のボギーによる「74」で通算9アンダー。土壇場でリードを失って突入したプレーオフも、次世代ヒロイン誕生の瞬間につながる演出にすら思える。
9歳の時に父ハイビンさんのクラブを握ってゴルフを始めた。2020年11月から世界女子アマランキングで141週にわたって1位に君臨。先月スタンフォード大で史上初めてNCAA個人戦を2連覇し、プロの世界に飛び込んだ。米ツアー初出場・初優勝は2019年「全英女子オープン」を制した渋野日向子以来。プロデビュー戦での米ツアー制覇は1951年のビバリー・ハンソン以来72年ぶりで、試合後すぐにツアーメンバー入りを決めた。
大会のアンバサダーを務めた同大OGのミッシェル・ウィとは以前から親交があり、この朝には「楽しんで、自信を持って自分のプレーを」というメッセージで背中を押されていた。奇しくもウィがサポートしたこの新規試合には全米ジュニアゴルフ協会(AJGA)から24人のジュニアが出場。顔見知りの仲間たちに囲まれ、涙と笑顔でいっぱいになった。
そしてホールアウト後、大学のOBからも祝福された。SNSに「ローズにとって素晴らしい数週間だ。NCAAで連覇して、プロデビューもして、ツアーカードも手にした」と記したのはタイガー・ウッズ。「信じられない。なんて言ったらいいの? 彼が私のことを気にかけてくれるなんて驚きでしかない」。ゴルフ界の男女のレジェンドに心から歓迎されて、プロとしてはじめの一歩を踏み出した。(ニュージャージー州ジャージーシティ/桂川洋一)