「フジサンケイクラシック」フォトギャラリー
<2つの故郷を持つ藤田寛之の葛藤とは・・・>
大学進学やスポンサー、所属コースの関係で地元を出て、新しい土地でそのまま長く移り住むうちに、そこでの人間関係が密になり、まるでそちらが出身地のように認識されてしまうこともある。藤田寛之がまさしくそれで、福岡県福岡市東区香椎出身は、父親の寛実さんの血をそっくり受け継いだ、まさに九州男児だ。
だが、いまやツアーでも、藤田が福岡出身だということを知る選手は少なくなり、先月の「VanaH杯KBCオーガスタ」でも新聞報道を見て、「藤田さんて、福岡だったんですか?!」と、驚いた若手がいたという。「すっかり、僕は福岡県人だと思われていないようで・・・」と頭を掻いたが無理もない。地元の香椎高校を出て上京。都内の専修大学に進学した。さらに92年のプロ転向後は静岡県の葛城ゴルフ倶楽部に所属。以来、ずっと富士山の裾野に居を構える。「もはや、僕は静岡の人間だと思っている人が、だんだん多くなってきて・・・」。静岡色が色濃くなるにつれて、地元の反発も強くなってきた(!?)。 たまに帰郷すると、言われる。「オマエ、もしかして福岡を捨てたんじゃなかと!?」。慌てて弁明する。「そんなことはなかばい!」。
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たまに「あれ、これってどう言うんだっけ・・・」と、ひそかに戸惑うこともあるというが、やっぱり地元に帰れば馴染みの言葉がよみがえる。静岡のほうの友人には「なんかイメージにない」と言われるが、博多弁を操るさまは、まさに生粋の九州男児だ。とはいえ、本人の中にも葛藤はある。41歳を迎えたいまは、もはや静岡での生活のほうが長くなり、「福岡と静岡の思い出にはギャップがありすぎる」という。高校時代から本格的にゴルフを始めたこともあり、「ジュニア時代の純粋な気持ちを思い出すのが福岡」ならば、プロ人生をスタートさせた土地が静岡。どちらにも思い入れが強くあるが、どちらも大切にしたい土地であることは、間違いない。「福岡と静岡。どちらのトーナメントでも勝つというのが、僕のゴルフ人生の目標のひとつでもあります」。
そんな藤田が今年、さらに大きな栄冠を手にする可能性も出て来た。6月の「日本ゴルフツアー選手権」からずっと、トップで走り続けてきた賞金ランキング。いよいよ、先週の「フジサンケイクラシック」でいち早く今季2勝目を挙げた石川遼に抜かれて、「最近ではゴルフの調子が悪すぎて。1位にいるのも居心地が悪かった。むしろ肩の荷が下りてホッとした」と笑ったが、大会は自身も8位タイに食い込んで、差額は約300万円にとどまった。
「僕は賞金王の器じゃないから」と謙遜するが、周囲の期待を裏切れない性格がシーズン終盤に、どう影響するか。「本当に最後のほうにチャンスがありそうなら、狙っていきたいとは思いますが・・・・・・」。昨年は石川と池田勇太の一騎打ちが話題となったが、今度は41歳と18歳の賞金王争いが実現すれば、それもまた一興だ。