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プレーヤーズラウンジ

ツアープレーヤーたちの発奮材料<スナッグゴルフ>

2009/06/01 10:30

ある日、ツアーのスタッフの携帯電話が鳴った。着信画面はプロの桑原克典。通話ボタンを押すなり息せき切った声が響いた。「ねえ、聞いてよ。いま学校のそばを車で通ったら、やってるんだよ、スナッグゴルフを・・・・・・!!」。

桑原が、母校の師勝(しかつ)町立師勝小学校(愛知県西春日井郡)にスナッグゴルフのコーチングセットを寄贈したのは、2006年のことだ。と、その前に簡単に説明を加えさせていただくと、スナッグゴルフとは、ゴルフの基礎技術を学ぶために編み出されたスポーツなのだが「まだやったことがない子も、これが最初にゴルフに触れる機会になればいい」と、ポケットマネーをはたき、寄贈の際には自ら母校に出向き、レッスン会を開いた桑原だったが、内心は「このあとも使ってくれるかなあ」という心配も、少なからずあったのだ。

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「でもね、みんなすごく楽しそうにやってるんだよ! しかも、すごく上手にボールを飛ばしていて・・・。プレゼントした甲斐があったと思ったら嬉しくて、つい電話しちゃったよ!」と、無邪気に声を弾ませていたという。

実は桑原のように、実際にその効果を目にするまでは、スナッグゴルフに対して否定的な意見を持つプロも少なくない。「スナッグをやるくらいなら、いっそ最初から普通のゴルフをやって欲しい」というのが本音だからだ。確かにそれも一理ある。

しかし、昔よりは取っかかりやすくなったとはいえやはり、ゴルフはかなり恵まれた環境でなければ子供たちの選択肢に入りにくい。また、そこにたどり着く子もそれほど多くない。まずは野球やサッカーに流れてしまうのは、否めないからだ。

だからこそ、スナッグゴルフなのだ。アメリカのPGAツアープロ、テリー・アントン氏とウォーリー・アームストロング氏の手によって誕生したこの道具は、それほど場所を取らず、学校の校庭でも気軽に遊べる。

というのもランチャーと呼ばれるアイアンと、パターの形をしたクラブはいずれもプラスチック製で、ゴルフボールと同じ重さに設計されたボールはスポンジ状のもの。子供たちが思いっきり振ってもせいぜい50ヤードほどしか飛ばず、本物の道具に比べてリスクがほとんどない。その上、打感は本物とまったく遜色なく、ゴルフの基礎スイングもきっちり学べるというメリットもある。

まずはゴルフというスポーツを知ってもらうという狙いにはうってつけだし、同時に相手を思いやる心や自己申告といった、ルールやマナーが身につくとあれば、これ以上の“教材”はない。

しかも、日本ゴルフツアー機構がこの取り組みを始めて7年がたった今、スナッグゴルフをきっかけに次々と本物のゴルフに移行し、めきめきと腕を上げている子が続出している現状を知れば、“食わず嫌い”だったプロたちも、たちまち認識を改めるのだ。

5月はパインバレー北京オープンの延期もあり3週間、ぽっかりと日程が空いてしまったが、このオフを利用して、2人のプロが母校にスナッグゴルフを寄贈した。

倉本昌弘矢野東である。
偉大な先輩の凱旋と大歓迎を受けて、感無量で母校の門をくぐり、赤や青のカラフルなランチャーを手に嬉々としてスナッグゴルフに興じる子供たちを優しいまなざしで見つめる2人に共通した願いは、「この中からプロを目指す子が出てきてくれたら」ということだ。

その前に、まずはこちらの登竜門。今週、開催のUBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズの土曜日に、スナッグゴルフ対抗戦JGTOカップ全国大会が行われる。地区予選を勝ち抜いてこの“本戦”に、母校が堂々参戦する日が来るかもしれない、と考えるとプロたちの胸も踊る。また倉本はこれをきっかけに、地元・広島市の全小学校に、スナッグゴルフを寄贈する、と公言している。その輪はジワジワと、しかし着実に広がりつつある。

しかし何より、先の桑原も「校庭の子供たちの姿を見て僕も頑張らなくちゃ、という気持ちになった」と話したように、子供たちの姿がプロ自身の発奮材料になって帰ってくるというのが、この“ジュニアプロジェクト”の利点と言えるかもしれない。



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