ツアープレーヤーたちのオフシーズン<高橋勝成>
2004/01/22 09:00
このオフは高橋勝成選手にとって「人生、最高の時」になりそうです。
安堵と喜びが混ざりあった表情で、高橋が声を弾ませます。「実はね、去年の暮れ、ついに退院したんだよ~!!」
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99年に白血病であることがわかった次男・勝紀ちゃんのことです。阪神淡路大震災、高橋の父の死、と不幸が重なった末に、最愛の息子までが深刻な病いに倒れ、それからというもの、高橋一家の壮絶な戦いは始まりました。
「できれば、ずっと息子のそばにいてやりたい」という思いは、しかし生活のことを考えると、グっとこらえるしかなかった。家のことはひとまず妻・由貴子さんに任せ、「せめて自分が懸命に戦うことで、みんなの生きる勇気になれれば・・・」という気持ちだけを支えに、身もひきちぎられる思いで試合会場を転々とする日々。たまの休みはもちろん勝紀ちゃんにつきっきりで、息をつく間もないこの5年間でした。
それが、懸命の治療でいまでは週1回、徳島県の主治医のもとに通うだけでよい、といわれるまでに回復し、とうとう念願の退院までこぎつけることができたのです。
高橋は言います。
「いま一番してみたいこと? もちろん、家族団欒の夕食だよ」これまでは、由貴子さんはほとんど勝紀ちゃんにつきっきり。高橋も試合で家をあけることが多く、長男・成輝君にも寂しい思いをさせてきました。
「5年だよ、5年。その間ずっと、家族一緒に食卓を囲んだことがなかったんだ・・・」と遠い目をして振り返った高橋。
「だから、勝紀が帰ってきたら、毎日、みんなで一緒に晩御飯を食べることがいちばんの夢だったんだ」。
このオフはできるだけ遠出を避けて、地元でトレーニングや練習に励み、「夜は早めに帰宅するよう心がけている」と言います。
また、不思議なことに、勝紀ちゃんが入院していたころは腰、ヒジ、ひざ・・・と、ありとあらゆる箇所に痛みや故障を抱えていたのが、「退院した途端、ウソみたいに治っちゃった」のだそうです。勝紀ちゃんの容態がいつ急変するかわからない不安。ゴルフ以外の面でも、常に緊張を強いられていた日々から解放されたことが、高橋の身体に良い影響を与えてくれたのでしょうか。
少々照れながらも、高橋はしみじみと言いました。
「勝紀が家に帰ってきた途端に、良いことがいっぱい家に舞い込んできたって感じで・・・。なんかねえ、いま改めて思うんだ。もしかしたら僕はいま、人生いちばん幸せなときを過ごしているんじゃないか・・・ってね。この幸せをかみ締めながら、今シーズンはゴルフもガンガン行くからね!」
この春、53歳のベテランが生き生きと輝いています。
※日本ゴルフツアー機構が発刊しているメールマガジン(プレーヤーズラウンジ)より転載しています。