インサイドストーリー@2013 PGAマーチャンダイズショーレポート ~ナイキ編 part3~
全米プロゴルフ協会(PGA)が主催する世界最大のゴルフ ショー、「2013年PGAマーチャンダイズショー」にて、GDO編集長が普段聞けない「インサイドストーリー」を話題のブランドのキーパーソンに突撃取材!
●ナイキゴルフ トム・スタイツ氏
製品開発ディレクター。ベン・ホーガン・カンパニーにエンジニアとして従事し、「インパクト・ゴルフ・クラブ・テクノロジー」という自身の店舗を運営した後、2001年にナイキゴルフに入社。翌年2002年にナイキゴルフとして発売した初めてのクラブ開発に携わる。ナイキゴルフも含め、開発者としての26年間のキャリアの中で、180のクラブを開発し、取得した特許は200以上にのぼる。
GDO「独創的なシェイプが印象的なVR_Sコバートシリーズですが、まだどなたにも伝えてない開発秘話があれば教えてください」
トム氏「まだ誰にも言ったことはありませんが、実は初めてアイデアが浮かんだのは15年も前のことなんです」
GDO「15年も前ですか?」
トム氏「はい、メタルウッドでプロトタイプをつくったのが15年前です。しかしながら見た目も悪く、音に関しては最悪でした(笑)。当時の技術では改善して商品化することができなかったのですが、5年前に再度プロジェクトをスタートさせ、開発技術の進化で、キャビティバック構造を世界で初めてドライバーのソールに搭載することを可能にしたのです。特に発売前の2年間はこの開発に相当な時間と労力を費やしました」
GDO「15年の間に開発を諦めようと思ったことはありませんか?」
トム氏「諦める?そんなことは1度も考えたことがありません。クラブエンジニアとして26年間のキャリアの中でトップ3に入るほど革新的な製品です。見た目、音、存在感すべてにおいてゴルファーに違いを実感してもらえることで、プレースタイルを良くすることができると確信しています」
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GDO「プロのインプレッションはいかがですか?」
トム氏「インプレッションのフィードバックがとてもよく、世界中の多くの選手がすぐに使用を始めていることに驚いています。約半年をかけてプロへのテストを重ねてきましたが、今年から新たにアスリート契約をしたプロはもちろん、タイガーも最終調整をおこなっている最中です」
GDO「赤い色が印象的ですが、特別な理由はありますか?」
トム氏「実は色に関しては他のチームが担当していて、あまり携わっていなかったのです。ただ、赤という色が好きなことは確かです。アグレッシブなイメージを与え、闘争心をかきたて、情熱を表現できるからです」
GDO「次の製品はどんなものになるのでしょうか。これからも“赤”でいきますか?」
トム氏「いくつかのプロジェクトが進行していますが、来年ローンチする商品は期待してください。色については、まだいくつかの可能性があるのでここでは言えません」
GDO「ロリー・マキロイの印象は?」
トム氏「彼は素晴らしいアスリートです。ゴルフに対する高い熱意があり、競争力が高くそしてとても知的です。ナイキゴルフへの高い期待を感じるし、それに応えたいという我々のモチベーションも高まっています」
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GDO「日本のマーケットをどう思いますか?」
トム氏「初めて日本に行ったのは1986年で、それ以来20回近くは訪れています。ナイキゴルフにとってとても重要なマーケットであることは言うまでもありません。米国のゴルファーの考え方は、とてもシンプルですが、日本のゴルファーはプロダクトに対して高い理解力と興味があります。したがって、詳細にわたって追求する必要があるので、我々のような開発チームにとって多くのことを学ぶことができる場所でもあります」
GDO「日本マーケットに対して特別な仕様などが必要でしょうか?」
トム氏「製品を理解してもらうにあたって違うアプローチや、若干の変更を加えた仕様が必要だと思いますが、“ゴルフ”に対する興味は世界共通です。日本のゴルファーは多くの知識を持っていて、用具に関する興味がとても高い特徴がありますが、基本的な考え方や仕様に大きな違いはありません」
GDO「開発者として自分の仕事をどのように感じていますか?」
トム氏「とても誇りに思っています。“カエルにキスをしたら魔法がとけて王子様になった”というおとぎ話のようなものです。人から無駄だと思われるような物でも、自分を信じ、いくつもつくり続けることで、素晴らしい製品が出来上がるのです。何よりゴルフやスポーツが大好きですし、タイガーやローリーのようなトップアスリートと関わる機会があることも、楽しく仕事ができている理由のひとつです」