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HOT LIST JAPAN受賞クラブ 開発者インタビュー Vol.5(ナイキ編)

HOT LIST 日本版」で高評価を得たクラブは、どのように開発されたものなのか。開発担当者や企画担当者へのインタビューから、メーカー側の視点を探っていく。第5回目は、2つのシリーズで多数の賞を獲得したナイキゴルフ。開発担当の小林氏に話を訊いた。

【2012 HOT LIST JAPAN 受賞クラブ】
ドライバー部門:ゴールド賞(VR PRO リミテッドエディション フォージド ドライバー)
フェアウェイウッド部門:ゴールド賞(VR PRO リミテッドエディション)
フェアウェイウッド部門:シルバー賞(VR_S フェアウェイウッド
ユーティリティ部門 シルバー賞(VR_S ユーティリティ
パター部門 シルバー賞(メソッドコンセプト パター)

【担当者 プロフィール】
小林直樹(こばやしなおき)
ナイキジャパングループ ナイキゴルフのプロダクトエンジニア。2002年ナイキジャパン入社後、2005年からアメリカ本社のR&Dでクラブ開発を手掛ける。2010年に帰国後もR&Dに所属し、日本のマーケットを中心にグローバルな商品開発も行っている。

躍進の理由は日本人エンジニアにあり!

GDO:「HOT LIST JAPAN」では、ナイキゴルフが2つのシリーズで計5つのメダルを獲得しました。まず、2つのシリーズの開発意図と、メダルを受賞したクラブの性能について教えていただけますでしょうか。

小林:VR PROシリーズは、ツアープレーヤーが使うことを前提に企画開発しているクラブです。契約アスリートの意見を踏まえて、彼らと共同開発しているシリーズとも言えます。今回のVR PROシリーズは、特にタイガー・ウッズの意見が多く反映されていて。構えたときのヘッド形状はもちろんですが、フェアウェイウッドは抜けの良さに影響するソール形状にもタイガーの意見が取り入れられています。メダルを受賞したのは、ネックの調整機能「STR8-FIT」を省いた限定モデルで、よりオーソドックスな形状を好むゴルファーのために開発した派生モデルです。このモデルのフェースには、ボール初速をアップさせる「NexCoreテクノロジー」も新たに採用しています。

GDO:もうひとつのVR_Sシリーズは、どういったモデルでしょうか。

小林:VR_Sシリーズは、中・上級者ゴルファー向けに“SPEED”をキーワードに飛距離を伸ばせるように開発した新シリーズです。今回メダルを受賞した「VR_S フェアウェイウッド」は、実は日本市場向けに開発した従来モデル「SQ マッハスピード フェアウェイウッド」が開発のベースになっています。「SQ マッハスピード」はアジア専売のモデルで、日本人ゴルファーが好むシャローフェースを採用しているのが特徴ですが、これが意外と米国のナイキスタッフからも評判が良かったのです。そこで「NexCoreテクノロジー」などの新技術を加えてさらに進化させ、VR_Sシリーズとしてグローバルに展開して発売することになりました。

GDO:なるほど。VR_Sシリーズの開発には、そんな経緯があったのですね。

小林:日本のゴルファーの好みを反映して開発したクラブは、世界でも受け入れられる傾向にあるのです。VR_Sシリーズは、アイアンやユーティリティも「SQ マッハスピード」が開発のベースになっていて、ユーティリティは日本のゴルファーが好むウッドタイプのヘッド形状を採用していますし、アイアンは日本人が好む軟鉄鍛造ヘッドで、打感の良さまで追求して作られています。ちなみに、タイガー・ウッズも「VR_Sフォージドアイアン」の性能をとても気に入って、全英オープンではこのモデルのプロトタイプのロングアイアンを使用していたんですよ。開発担当者としては、このアイアンが「HOT LIST JAPAN」で賞を獲れなかったのは意外でしたし、少し残念ですね(笑)。

GDO:日本市場向けに開発したモデルが、世界で受け入れられているとは面白い事実ですね。ナイキのクラブが日本人エンジニアによって開発されていることも驚きです。グローバルモデルも日本人エンジニアが開発を担当しているのですか?

小林:そうですね。そこが他メーカーさんとは違うところかも知れません。先ほど申し上げたように、日本のマーケットを意識して開発したクラブは、グローバルモデルとしても受け入れられる傾向にあります。ですから、私も現在は日本在住で日本のマーケットを見ながら、日本仕様のモデルだけでなく、グローバルモデルの開発も手掛けています。日本のマーケットでは、特にヘッドの見た目や打感が重視されますね。

GDO:見た目に関して言うと、「メソッドコンセプト」は、かなり変わったヘッド形状のパターですが、今回シルバー賞を獲得しました。評価したテスターからは、「実際に打ってみると良かった」という意見が多く聞かれました。

小林:このパターは、小ぶりのマレット形状を維持しつつ、できるだけ大きな慣性モーメントを確保しようと開発したモデルです。そのためにフェース素材は軽量のアルミ、後方のバーには重いステンレスを採用し、異素材を組み合わせたヘッドになっています。慣性モーメントを上げるためにはヘッドのトゥ側に重量があったほうがいいので、後方のバーは左右非対称に設計されています。また、ヘッドの中央は性能的には必要のない部分なので、後方のバーだけを残した形状になりました。ヘッドがシンメトリーだと、フェースが開いて見えたり、被って見えたりするものですが、左右非対称にすることによって、構えやすさも備えたパターに仕上がりました。

GDO:ナイキがゴルフ市場に参入した当初は、四角いドライバーを発売したりと、見た目でもゴルファーを驚かせるようなモデルが多かったですが、近年のナイキのクラブはトラディショナルな方向にシフトしているように感じます。今後は、どういった方向でクラブを開発していくのでしょうか。

小林:たとえ形状がトラディショナルであっても、テクノロジーは絶えず進化していきます。開発チームが集まる部屋の壁には標語が掲げてあるのですが、そのなかのひとつに“Never Stop Innovation”があります。先頭に立って新たな道を切り開いていくのがナイキの使命であり、ナイキらしさです。形状であれ、テクノロジーであれ、新たなことにチャレンジする精神は今後も変わりませんよ。



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