驚異のメジャー勝率 ブルックス・ケプカが突き進む異次元ロード
2019年 全米プロゴルフ選手権
期間:05/16〜05/19 場所:ベスページ州立公園ブラックコース(ニューヨーク州)
70年ぶり5月開催「全米プロ」 メジャー"最下位"から脱却への道
2019/05/21 07:45
◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権◇ベスページ州立公園ブラックコース(ニューヨーク州)◇7459yd(パー70)
70年ぶりに5月開催となった「全米プロゴルフ選手権」。昨季までメジャー最終戦の位置づけだったが、4大メジャーの中で注目度は常に4番手と言われた。選手、大会主催者からはこの時期の開催を歓迎する声も挙がった。
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1972年から続いた8月開催(リオデジャネイロ五輪が行われた2016年は7月開催)は今季、日程変更された。理由はPGAツアーが、全米フットボールリーグ(NFL)やメジャーリーグ(MLB)などのシーズン最盛期と日程上の競合を避けるべく、例年より1カ月前倒して8月下旬に年間スケジュールを終了させるためだ。このPGAツアーからの提案を、大会を主催する全米プロゴルフ協会(PGAオブ・アメリカ)が承認した。
PGAオブ・アメリカ広報担当のジュリアス・メイソン氏によると、8月開催は気候的な都合で大会を開けない州が多く「開催地は限られた選択肢しかなかった」。現在フロリダ州パームビーチに置く同協会の本部は今後テキサス州へ移る見通し。日本のトヨタ自動車が北米拠点に置く同州ダラス近郊は、近年急速に都市開発が進んでいる。「ダラスは8月記録的な猛暑になる。いままで開催は難しかったが、5月ならば大丈夫」。テキサス州では毎年「AT&Tバイロン・ネルソン」などのPGAツアーが行われている。同州出身ジョーダン・スピースは今大会開幕前の公式会見で「ダラスで『全米プロ』が開けることは素晴らしい。5月開催には非常に賛成だ」と述べた。
大会への注目度という意味でも、日程変更は状況を好転させる可能性を秘めている。ロイター通信によれば、米スポーツイラストレイテッド誌が12年に50人の選手を対象にした「勝ちたいメジャーは」というアンケートでは、マスターズ50%、全米オープン25%、全英オープン23%、全米プロ2%という回答だった。アンケート対象者ではないが、メジャー未勝利の大物リッキー・ファウラーが大会前「8月は少し疲れの出る時期で、プレーオフ前で『全英』が終わった後。5月はまだ元気だから良いね」と述べた発言にもつながるように見える。
そもそも、今大会は他3つのメジャーと比較し、特色がないというのが大半の見方だった。オーガスタナショナルGCで行う「マスターズ」は“ゴルフの祭典”の名を欲しいままにブランド化されている。「全米オープン」は、主催の全米ゴルフ協会(USGA)が極端にラフを長くし、グリーンを硬くするセッティングでお馴染みだ。最古のメジャー「全英オープン」は、会場が英国リンクスという最大の特徴がある。
全米プロは57年を最後にマッチプレー形式をやめて以降、通常のトーナメントと目に見えるほどの大きな違いはないとの指摘がある(だからこそ、世界一を決める舞台には最適とも思えるが…)。前出のメイソン氏は日程変更により伝統を重んじながらも、コースセッティングなどを含め、特色を出せる環境になりつつあるとし、「疲れもあると思うが、選手たちの状態も良いはず。8月開催と5月開催では芝の状況も違う。さらに、より多くの地域で開催できることで、地域性を出していけるはずだ」と語った。
正確な数値は不明としたが、今大会では予選ラウンドで昨年以上の観客数を記録したという。その最大の理由は4月「マスターズ」を制したタイガー・ウッズの13年ぶりメジャー2連勝への期待から。「正直今年はウッズに助けられたね」(メイソン氏)。選手たちが4月から月に一度メジャー大会を回る、過酷さが増したのは大きな事実。ただ、ファウラーは3日目時点で「今年のコースセッティングはすごく平等に思える。5月開催の印象は良い」と口にした。
来年はカリフォルニア州サンフランシスコのTPCハーディングパークで行われる。05年に「WGCアメリカンエクスプレス選手権」(現WGCメキシコ選手権)、09年に世界選抜と米国選抜の対抗戦「プレジデンツカップ」等を開催したパブリックコースだ。どんな色の大会になるのだろうか。(編集部・林洋平)