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開幕6連戦はただ1人、ベ・サンムンは何を目指す?

2014/02/08 16:20

ある日、うらぶれた入江の断崖に建つ一軒の宿屋に、右頬に刀傷を持ついかつい大男が現れる。男は毎日ラム酒をあおりながら断崖や入り江の周りを徘徊し、手にした小型望遠鏡で岬を行き交う船を仔細なく観察する。日が暮れて宿に戻れば、宿屋の息子をつかまえては何度も念押しするように命令した。「いいか、一本脚の船乗りに注意しろ。見たらすぐ俺に知らせるんだ」。

これは、1863年に出版されたイギリス人作家、ロバート・ルイス・スティーブンソンの冒険小説「宝島」の冒頭部分。彼はこの小説のアイデアを集めるために、モントレー半島界隈を歩き回ったという伝承が残されている。

今週「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」が開催されている3コースのうちの1つ、スパイグラスヒルGCは、この「宝島」を主題としてロバート・トレント・ジョーンズ・シニアによって1966年に設計された。各ホールには「ビリー・ボーンズ」「フリント船長」「黒犬」「骸骨島」「ジム・ホーキンズ」といった小説にちなんだ名前がつけられており、コース名にもなった“スパイグラス”とは小型望遠鏡のことをさす。

その名に恥じぬ冒険心に富んだコースで、チャンピオンズティのコース・レート(ハンデ0のプレーヤーが10回プレーした時の平均スコア)は75.5で、スロープ・レートは144(113~117が平均)。世界でも屈指の難コースとされている。

大会2日目、このスパイグラスヒルGCをラウンドしたベ・サンムンは1バーディ3ボギーの「73」。初日にペブルビーチGLで「69」と好スタートを切ったものの、2日目を終え、通算1アンダーの60位タイへと順位を下げた。

「今日はコースマネジメントが良くなくて、ボギーを多く叩いてしまった。でも、去年よりスイングもいいし自信はある。今週はあまりパットが良くないけど・・・」。

サンムンはPGAツアーでただ1人、今年初戦の「ヒュンダイトーナメントofチャンピオンズ」から今週までの6試合全戦に出場している。「オフにハードなトレーニングをしたし、今は全然疲れていない。10試合連続でもいける気がする」と鼻息は荒い。次戦の「ノーザントラストオープン」も出場予定で7連戦。だが、現時点でその次の「WGC アクセンチュアマッチプレー選手権」の出場資格は持っていない。

今週開幕前には故郷の先輩、チェ・キョンジュらと練習ラウンドを共にした。「昔はツアーのこととか教えて貰ったけど、もう3年目だし大丈夫。彼は友達、先生じゃない」。昨年の「HPバイロンネルソン選手権」でPGAツアー初優勝を飾り、英語もすっかり上達したサンムンは、信じた己の道を突き進む。

今年の目標を聞いてみた。「それはもちろん勝つこと。1勝でも、2勝でも。去年勝ったから自信はある。でも、PGAツアーにはたくさん良い選手がいるし、みんなが毎週勝とうとしている。だから、ショートゲームでもパッティングでも、一生懸命努力し続けていかないといけない。そうする必要があるんだよ」。

話し終わると、すぐにこの日の17番で外したショートパットの練習に取り組んだ。「一本脚の船乗りが来たら教えてくれ」とは言わなかったが、なにかを求め、なにかを警戒するように練習に打ち込む姿が、スパイグラスヒルのわびしい雰囲気と相まって、あの大男を想起させた。(カリフォルニア州モントレー/今岡涼太)

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