松山英樹のフォトギャラリー
2013年 CIMBクラシック
期間:10/24〜10/27 場所:クアラルンプールG&CC(マレーシア)
マレーシア、多様性が生み出す力
2013/10/24 19:14
羽田空港を真夜中に出発した飛行機が、早朝のマレーシア・クアラルンプール空港に向けて下降を始めた。窓の外にはちらちらとオレンジ色の街の明かりが光っている。すでに窓を通して外気のぬくもりが伝わってきていたが、飛行機の扉が開いて一歩外に足を踏み出すと、果実と香辛料が混ざったような暖かくやさしい空気が体を包みこんだ。
アジア特有の雰囲気は、日本人にとっては懐かしさも感じさせる。人と車でごったがえす空港や、整備された高速道路の脇で工事を途中で放棄したかのようなむき出しの路肩が同居する光景。一昔前の日本にタイムスリップしたような感覚だが、それはこの国の一端でしかない。
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超高級車が散見される街中には高層ビルが建ち並び、さらに至る所で新たなビルが建設中だ。今週の「CIMBクラシック」が開催されているクアラルンプールG&CCは広大な敷地に36ホールを有し、中にはスイミングプールやフィットネスセンター、テニスコート、バトミントンコート、スカッシュコートにボウリング場まで併設されている。
今年からフェデックスカップのフルポイントが与えられるようになったトーナメントは、賞金総額700万ドル(約6億8千万円)で優勝賞金は126万ドル(1億2千万)。国内男子ツアーの最高賞金額2億円(優勝賞金4千万円)のざっと3倍の規模になる。
大会メインスポンサーであるCIMBは、クアラルンプールに本部を置き、東南アジアを中心に世界17カ国に支店を有する銀行集団。今大会に推薦による2名のマレーシア人選手しか出ていなくとも、彼らはアジアから世界に向けて企業ブランドをPRする舞台にゴルフトーナメントを選んだ。国内イベントとはいえ、その視野は近隣諸国へ向けられている。
2週間前に米国女子ツアーの大会が同クラブで開催されたときは、メディアセンターに泥棒が入ってカメラやレンズが盗まれるという歓迎できない話も聞いた。そんな良い部分も悪い部分も内包しながら成長を続ける姿は、思い切り上下に伸ばされたゴムを連想させる。上下の差があればあるほど、より大きな力を生むのがその法則だ。
人種はマレー系、中国系、インド系と入り乱れ、市内には高層タワーやビルに混じって、巨大なモスクやヒンズー教の寺院もある。タンクトップにホットパンツの女性の横を、全身黒いベールに身を包んだイスラムの女性が通り過ぎる。タイや韓国、日本の選手をアジア人として応援するギャラリーたちの感覚も、彼らの日常の延長なのだろう。(マレーシア・クアラルンプール/今岡涼太)
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka