石川遼が米下部ツアー挑戦 下積み覚悟で今秋の予選会へ
「自分のゴルフを強くするために」石川遼 米下部ツアー挑戦への決意
石川遼がPGAツアーの下部コーンフェリーツアーのQスクール(予選会)受験を決めたのは、6月にカリフォルニア州で行われたメジャー「全米オープン」の直後だった。「それ以前から考えていたが、最終的に決めたのがそのとき」。決勝ラウンド進出を逃して日本に帰国後、夏場には手続きを済ませて準備を着々と進めていた。
2013年から一度はPGAツアーを主戦場とし、17年秋にシードを喪失して国内ツアーに復帰した。19年に3勝を挙げるなど第一線でプレー。日本で得る海外スポット参戦の権利をもとに、米国への再挑戦を目指してきたが、そのルートにはある種の“行き詰まり”も思いとして抱えていた。
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「全米オープンを戦って『これはこっちでやらないといけない』と強く感じた」と明かす。今年の会場は過去のPGAツアーで出場経験があったトーレパインズGCだったが、「“よそ行き”の感じがあった。単発でメジャーに出るのではなく、アメリカで試合に出ることを自分のルーティンにして毎週のように出続けないと、良いプレーをするのは厳しい」と、米国のレベルの高さと、海外遠征を繰り返して戦うことへの難しさを改めて痛感させられた。
カムバック後、国内で約4年間プレーしたことで「芝質やコースセッティングの違いもやはり大きい。アメリカにはプライベートで回るコースに難しいゴルフ場がたくさんある。そういうコースやホールのロケーションが、自分のスタンダードにならないといけない」と環境の違いも再認識。「アメリカに行けば、目指すレベルに到達できるのではないかと。自分のゴルフを強くするための目的として、行かなくてはいけない」。
予選会は事前予選会(プレステージ)からファーストステージ、セカンドステージ、ファイナルステージでふるいにかけられ、それぞれ上位通過者が次のステージに進む。石川は昨年の「全米オープン」で決勝ラウンドを戦ったことで、ファーストまでが免除。10月に5会場で行われるセカンドのうち、カリフォルニア州(同19日~)で受験を予定する。
さらに10月12日時点で賞金ランク上位5位に入ると、ファイナル(ジョージア州/11月4日~)からの参戦が可能。今週の「パナソニックオープン」以降、残された国内ツアーの数試合も、石川にとっては“セカンドの免除”をかけた勝負どころでもある。
2022年のコーンフェリーツアーの出場権確保はファイナルでの上位40位以内が目安。それも試合数は限定される。仮に通過できても、この“2軍ツアー”を1シーズン戦い、賞金ランキング25位以内を確保してようやく、翌シーズンのPGAツアーへの昇格がかなう。
昨年春、ショットの高い再現性を求めて新たにコーチと契約し、スイングを大改造中。今年は肉体的な向上を目指して、ひと回り身体を大きくした。8月のシーズン再開戦前後はクラブセッティングを易しくする取り組みにも着手。アイアンを替え、深いラフからも対応可能な7WやUTを新たに選択肢に加えたのも、海の向こうでの戦いを見据えたものでもある。
予選会は将来のPGAツアー参戦を志す世界中のプロ、伸び盛りのトップアマも職場をかけて戦う。無論、石川が通過できる保証は一切ない。その先の下部ツアーでの生き残りも同じ。「どんな結果であろうと、その結果を見てみたい。今の自分のゴルフがどれほどなのかを知りたい。できないことも知りたい」と受け入れている。
成功も失敗も、挑戦なくしては訪れない。「アメリカで、自然体で試合ができるようになりたい。理想は早くPGAツアーに出ることだが、下から上に上がろうとすることで自分の実力が分かって、感じることもある」。表舞台への道のりが長くなること、別の屈辱を味わうことも怖くない。(編集部・桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw