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コロナ禍のハワイ あるゴルフショップの奮闘記

2021/01/29 18:00

いつもなら多くの海水浴客であふれるビーチも、人影はまばらだった。大通りを歩いても多くの店がシャッターを下ろし、閑散とした通りは日が沈むとちょっぴり不安を覚えるほど。ここワイキキもパンデミックの影響は避けられない。むしろ、見慣れた大勢の観光客がいなくなった分、ぽっかりあいた大穴が目立つようだ。

2020年1月17日、ホノルル市内に一軒のゴルフショップがオープンした。「大蔵ゴルフスタジオ ハワイ」は、テーラーメイドやキャロウェイ、PXGといったグローバルブランドだけでなく、ロマロ、ロッディオ、PRGR TUNE、マスダゴルフ、フライハイトといった日本の地クラブの公式取扱店として、ヘッドやシャフトなどコンポーネンツをフィッティング販売する業態を初めてハワイに持ち込んだ。

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当初は東京・世田谷にある姉妹店の顧客や、ハワイに長期滞在してゴルフを楽しむ日本人富裕層が主なターゲットで、実際、オープン直後は客足も順調だった。だが、コロナ禍で3月末にハワイ州がロックダウンに舵を切り、多くの日本人たちが島を去っていった。

店は方針転換を余儀なくされた。地元ゴルファーをいかに取り込むか?もともと、“吊るし”と呼ばれる量販店で売られているゴルフクラブを購入して、あとは腕でカバーするというのが長年この地で染み付いている文化だった。フィッティングして購入できる場所も、その概念もない。まずは、その啓蒙活動から始まった。

ゴルフ場での告知やノベルティの配布。さらに弾道計測器のある室内ブースを、練習したい人のために時間貸しをするなどして、徐々に認知を広めていった。だが、最後はやはり口コミだ。

ワイキキ中心地に隣接するアラワイGCで働くエイセイ・トンプソンさんが、3月末からショップの一員として合流した。35歳の彼は、地元のトップアマとして競技に出場するかたわら、顧客のレッスンやフィッティングもこなしている。日本人とイタリア人の血が混じり、ブランドショップや飲食店で働いてきた経験もあって、人当たりの良い流暢な日本語を話す。実際、筆者も(レンタルクラブのための)フィッティングをしてもらったが、気さくな雰囲気で思うことを言えるので、納得いくクラブを短時間で見つけることができた。

クラフト(工房作業)を担う日系アメリカ人のマットさんのほかに、ショップの2軒隣にあるカフェで働くアンドリューさんが、いまは給料をもらって働ける状況ではないことを理解して、無給で店舗運営を手伝ってくれている。「大蔵ゴルフスタジオ ハワイ」は、日本でも行われていない、テーラーメイドやキャロウェイのコンポーネント販売もするハワイ唯一のショップである。クラフトを学びたい夢があるアンドリューさんにとって、ここオアフ島で実践的なクラフト作業を経験できる場所がほかにはないのだ。

そんな彼らの熱意もあって、顧客も徐々に増えてきて、ここ数カ月で人件費はまかなえるようになってきた。だが、ワイキキ中心地より安いとはいえ、まだ家賃までは支払いきれない。州や国の補助金などでやりくりしながら、じっとこの危機が過ぎ去るのを待っている。

ハワイのフィッティング文化に風穴を開けるために踏み出した大蔵ゴルフスタジオの第一歩。オープンから想像もしなかった一年が早くも過ぎた。「一人ひとりにしっかり合ったクラブを提供していくことをハワイでも根付かせていきたいと思っています」と同ショップの市川雄一郎代表は言う。「確実に客は増えているので、あとは時間と体力の問題です。なんとかこの時期をトントンで耐えて、コロナが落ち着いたら黒字化していきたい」と、あらためて決意を語った。(編集部・今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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