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プロが道具にこだわるワケ 藤田寛之の場合

ツアーを戦うプロゴルファーにとって、クラブやボール、シューズやウエアは商売道具。それがトッププレーヤーになればなるほど、メーカーからのサポートも手厚くなり、選手の要望に応えるオリジナルのギアが次々と生まれてくる。

ツアー現場では練習日、そしてトーナメントの序盤は、選手たちはクラブの調整に余念が無い。シャフト交換が代表的だが、重量やクラブフェースのロフト、ライ角、グリップほか細部にわたってベストなものを求める姿。メーカー担当者や精鋭クラフトマンたちの、しびれる戦いの場ともいえる。

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千葉県の「ダイヤモンドカップゴルフ」で2日目を終えて単独トップに立った藤田寛之も、もちろんそんな“究極の道具”を求める選手の一人だ。42歳の名手の、代名詞と言うべきプレーはショートゲーム。中でもパターには相当なこだわりを見せる。古くからスコッティ・キャメロンのパターを使用しているが、約1週間前、「昨年からオーダーしていた」という一品が届き、まさに“鬼に金棒”といった言葉がマッチするプレーを今大会では見せ付けている。

同ブランドは、多くのトッププレーヤーにプロトタイプのパターを支給することでも知られているが、藤田は使用選手の中でも特別な存在だ。パターのフェースに刻印される「SCOTTY CAMERON」の文字。本来はヨコに入るものだが、藤田のモデルはタテに入る。これは世界でもタイガー・ウッズ、リッキー・ファウラーといった看板選手に施されたスペシャルタイプだ。

今季序盤まで使用していたモデルからは、同じピン型タイプながらウェイト配分や、形もほんの少しずつ違う。また、ロゴやマークの位置にもこだわり、その色もレッドからティファニーブルーに変更。「最高にカッコイイ」と、まるでプラモデルでも触る子供のような表情を見せる。

だが、見る人から見れば“たかが道具”といえるクラブに、そこまでこだわる理由がやはりトッププロだ。「完璧なものを求めたい。そうすれば自分のせいにしかできない」。道具はもちろん大事。けれど、その性能を引き出すのは、それぞれの腕にほかならない。スイング、ストローク、状況判断。ミスは自分の技術が足りないから。最高の武器を求めるのは、そう自覚するためだ。

前週の「とおとうみ浜松オープン」。藤田はこの新パターを握ったが、フィーリングの違いから2日目だけ元のパターに戻した。そしてまた翌3日目には再び新たな“相棒”を手にした。「(新パターを)先発させたんだけど、控えに回して、それでも『やっぱりお前がエースだ』みたいな感じで戻して…。フフフ…。すみません。自分にしか分からないような話を…」。なんともマニアックなひとりごと。次元の違うひとりごとだった。(千葉県木更津市/桂川洋一)

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