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“お母さん”もどうぞゴルフ場へ 男子ツアー会場にベビーラウンジ

◇国内男子◇Sansan KBCオーガスタ 初日(24日)◇芥屋GC(福岡)◇7216yd(パー72)

シード2年目の阿久津未来也は未婚である。自身はひとりっ子で、近い親族にも小さい子どもはいない。そんな28歳が発案したツアー会場のギャラリーサービスが「ベビーラウンジ」だというのだ。

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18番グリーン後方、スコア提出所の横に設けられた一画は、来場した未就学児を受け入れる保護エリア。室内には子どもたちが遊べるボールプールの他、仕切りを設置しておむつ替えや授乳ができるスペースを設けた。欧米のツアーでは選手の子どもを預かるサービスが各会場にあるが、日本の男子ツアーでは珍しい。しかもギャラリー向けもとなると例を見ない。

着想は仲間の悩みにあった。昨年のある試合で、乳飲み子を抱えたスコット・ビンセント(ジンバブエ)のケルシー夫人が、クラブハウス内に立ち入ることを拒否された。施設内のキャパシティに加え、コロナ禍もあって入場が選手と大会関係者に制限されていたことも理由。話の分かる関係者の計らいで、急きょハウス内でのケアを許されたが、相談を受けた阿久津が感じたものは多かった。

「ゴルフを見に来た家族だったら、お父さん、おじいちゃんが(試合を)見て、子どもの面倒を見るお母さんはゴルフでないことで過ごしているかもしれない。“プライオリティ”があってもいいのでは」

せっかく足を運んでもらった試合会場は、果たしてギャラリーにとって快適な場所だろうか。大会事務局長で九州朝日放送の竹内俊一さんは彼の声を聞いて「ヒントをもらった」思いがしたという。「Sansan KBCオーガスタ」は近年、試合中に場内に音楽を流し、HKT48のライブなどの画期的なイベントを実施してきた。今年は週末に気球を上げるイベントやヨガ教室も新たに行うが、「たくさんの方に来てほしい、(ゴルフ好きだけでない)家族向けの大会だと言ってきたけれど、(来場者の)ニーズが見えていたんだろうか…」とハッとした。

動きは早く、阿久津も「まさかこんなにすぐ形になるとは思っていなかった。(欠場の)ビンセントに見せてあげたい」と完成した施設を見て喜んだ。救命救急士や保健士と一緒に子どもたちの面倒を見るのは九州朝日放送の社員数人だという。「(同じ会社で)大会を“他人事”だと思っていたら50年も続いた大会を守れないと思うんです」(竹内さん)。ほかにも一般のボランティアと一緒に汗を流してトーナメントを支える社員が多くいる。

ベビーラウンジをあえて、全選手が毎日立ち寄るスコア提出所の横に設けたのには理由があった。「アテストの隣にあることで、試合の主役は選手であり、家族だというシンボルになればと思ったんです」(同)。阿久津も「小さい子でも最終ホールだけでも見られたら楽しいかもしれないですよね」とうなずく。選手にギャラリー。大会に関わる多くの人の立場に立って、問題を“自分事”として捉える人々の思いから新しいサービスが生まれた。(福岡県糸島市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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