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65億円以上の損害か?業界騒然の反発係数問題
2002/06/02 09:00
クラブの反発係数に関してUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(ロイヤルアンドアンシェント)が5月9日に発表した共同提案によって、2003年1月1日から5年間はドライバーに2つのカテゴリーができることになるが、そうなるとゴルフクラブ製造業界は悪夢のようなダメージを被ることになるかもしれない。アクシネット社会長兼CEOのウォーリー・ウィーレイン(Wally Uihlein)をはじめ、数社がそんな見解を示している。
ウィーレインによれば、すでにゴルフショップや倉庫には反発係数(COR)が0.830の新製品ドライバーが大量に存在している。ここでもし、2003年にアマチュアが0.860のいわゆる高反発ドライバーを使ってプレイしたスコアをUSGAに提出してハンディキャップを取得できるとなれば、「小売店の棚やメーカーの倉庫にある0.830のドライバーは見向きもされなくなる」とウィーレインは言うのだ。
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既存の0.830ドライバーが売れなくなる代わりに、性能の劣悪なドライバーが巷間にあふれ出て来るという観測を示すメーカーもある。CORについての「意見収集期間」が6月15日まで設定されているが、いま、そうした意見が多く寄せられている。期間終了とともにCORについての共同提案は修正されうる。そして、採用されるか、撤回されることになるわけだ。
USGAの役員は製造業者の懸念に対してあまり応えていない。今年2月にUSGA会長に就任したリード・マッケンジーは「まだ、議論を要する未解決の問題がある」と述べており、全米オープンの週まで定期的に開かれるUSGAの委員会において、意見交換が行われることになっているが、メーカー側としてはそれまでにできることといえば、最悪のシナリオに備えることしかなさそうだ。オーリマー社のチーフ・クラブデザイナー、ジェシー・オーティスの予想はこうだ。
「0.860のドライバーを手に入れようとみんな小売り店に殺到するでしょうね。私はデザイナーとして、ただ単に魔法のごとき数字を実現するためだけに、クラブのコントロール性能や打球感や打球音を犠牲にしようとは思いません。だいたい、0.860を謳うクラブが出てきたとしても実際にはそうでないということもあるでしょうし、まったく使い物にならないものだってあるでしょう。やかましい音がするばかりだったり、打った感触がひどいものだったり、最初のティショットを打った途端に壊れて使い物にならなくなったりするものだって出てくるでしょう」。
「そうです。壊れやすいものも出てくるだろうということです。耐久性が必ずや問題になるのです。フェース面を少しでも研磨してご覧なさい。ほんのわずかであっても耐久性に影響してしまうのです。」
しかしながらオーティス氏はUSGAが反発係数という厄介な問題に取り組んでいることについては賞賛している。そして、競技を統轄する組織が用具製造業界の歓心を買うことは滅多にないものだということにも理解を示している。
「(ドライバーのスプリング効果に関する提案に)いいことがあるわけがありません。喜ばしい提案なんてあり得ないのです。だって、USGAの発表がもしも秋だったら、業界の連中はすでに新製品の製造工程ができあがってしまっているのにと、騒ぎ立てることでしょう。発表が年頭のオーランドでのPGAマーチャンダイズショーの頃であったなら、新製品を売っている最中だっていうのにと大騒ぎするのです」
USGAの提案を受け入れる時間的余裕がなかったら、業界にとって何が最も問題となるのだろうか。ナイキのゴルフクラブ部門部長のマイク・ケリーは次のように言う。「ドライバーに関しては、世界的な市場の状況を変えるのはたやすいことではありません。我々としてはUSGAに『さあ、共通の目標に向かってがんばろう』とだけ言って欲しい。そして製造者にやり方を変える十分な時間をいただきたい。我々は変化を厭うわけではないのに、これだけ急いで事が進められることは、ビジネスの観点からは賢明とは言えません。USGAがゴルフ業界に甚大な被害をもたらすことがあり得るのです」
アクシネット社のウィーレインの見解では、メーカーとしては製品開発段階でなら対応できるので、2003年の1月1日から適用するのなら2002年の第2四半期の間で確定される必要があるとのこと。しかし、USGAとR&Aが初めて発表したときはすでに5月9日だった。ピン社の会長兼CEO、ジョン・ソルハイムの意見は簡潔だ。「私の最も怖れているのは、USGAとR&Aが市場をコントロールすることをやめるという事態に至ることです」
実際のところ、もし反発係数に関する提案が正式な規定となったなら、小売りの現場に与えるインパクトは絶大なものとなりうる。ウィーレインによれば店頭や倉庫にあるCORが0.830のドライバーの数は35万から40万本にもなりうるという。
「無謀な期限設定は卸値の25%から50%にもおよぶ値崩れを招く危険性があります。卸売りの段階で2500万ドルから5000万ドル(約32億円から65億円)もの損失ということになる。その見積もりにはパーツについては含めていませんが、新製品が出れば既存の各種パーツも陳腐化してしまいます。」
「USGAがこれまで用具に関して定めてきた規定を振り返ってみると、いまお話ししたような規模で市場がひっくり返るような事態に陥らされたことは一度もないのですが・・・」
By James Achenbach(GW)