全米オープン制覇へ 世界の頂点を目指す松山英樹の心模様
今季メジャー第2戦の「全米オープン」は15日、ウィスコンシン州のエリンヒルズで開幕する。今年に入って世界ランキング3位まで浮上した松山英樹が、5年連続5度目の出場でメジャー初制覇を目指す舞台。ゴルフ専門チャンネル『ゴルフネットワーク』が事前に行ったインタビューでは、過去の4度の出場経験をもとに「かなり難しいっす」と大会の印象に苦笑い。世界最難関大会へ向けて、自身の中でポイントとする戦略についても赤裸々に語った。
「スマホで雰囲気だけは見たことあります。そんなに長くはないかなって。でもアップダウンが半端ないって聞きました」。収録が行われたのは、5月の「ザ・プレーヤーズ選手権」を終えた直後。当時の松山にとって、今年の大会会場は未知のコースだった。それでも“ウィナーズサークル”と呼ばれる世界のトッププロ集団ではすでに情報交換も行われており、松山の頭にはそれなりのイメージもあった。
「パー5も恐らく全て600ヤードを超えるだろうし、長いと言えば長いんですけど。でも2オンできないだけで、うまくレイアップすれば、それほど長くないじゃないですか」
ウィスコンシン州で今大会が開催されるのは初めて。ほとんどの選手にとって知らないコースという条件は、日本で生まれ育った松山にとってマイナスではない。それでも、決して一筋縄ではいかない独特のセッティングに、松山の警戒心は最高レベルだ。「何か分からないけど難しい。去年のオークモントも極端でしたよね。ラフがすごく深くて、長くて、グリーンがものすごく速くて、傾斜もあって、あれがいつものUSオープンなのかなって。去年のオークモントは『無理だ~』って思いました」。
天候によってコース条件が目まぐるしく変わり、多くの選手が翻弄された昨年大会で、松山は予選落ちという結果だった。「昨年のコースに対応できなかったのは自分の実力かなと。グリーンが速いイメージでやってしまうと、遅くなった時に対応が難しくなる。今までのイメージを消さないといけないので。だから逆にイメージがない方が対応しやすいのかもしれないって思うんですけど、コースの下調べをして損はないし…」。生かすべき反省として、松山が挙げたのは、事前情報の多寡ではなく対応力だった。
「(状況に合わせて)イメージを変えていかないといけない。だからイメージの仕方が大事になる。どれだけ柔軟に考えられるかですね」。大会制覇への思いが強ければ強いほど、準備は入念になるが、準備しすぎるとイメージが硬直化する危険性も高まる。もはやビッグタイトル獲得が夢物語ではなくなっているだけに、大会を目前にして向き合う葛藤はとても複雑だった。
普段から自身に厳しく、大会中も遅くまで練習場に居残ってイメージ通りのプレーを追求している。その姿は、すでにPGAツアーでもおなじみだが、そのモチベーションが禅のようなコトであることはあまり知られていない。今回のインタビューでは「練習したからといってうまくいくわけじゃない」と語り、「ただ努力はしないとうまくはならない」と続けて、世界の頂点を目指す者の思考の深さをうかがわせた。
やるべきことをやりすぎに尽くし、心静かに松山がコースと向き合うとき、日本人選手として初の快挙が近づいてくる。