2022/08/16進藤大典ヤーデージブック

松山英樹に重なる“目力” 馬場咲希は有言実行V だった

馬場咲希選手が日本人として37年ぶりに「全米女子アマ」優勝の快挙を成し遂げました。6月の本コーナーでも書いたように、僕は5月に縁あって一緒にプレーする機会がありました。今回の渡米前にも「勝ってきて!」と激励すると、「任せてください!」。驚くほど力強い言葉を返してくれました。 そして、見事な勝ちっぷり。出会ったころの松山英樹選手を思い出しました。プロになる前から「メジャーで勝ちます」と明確に目標を見据え、強い意志を宿した瞳。馬場選手も同じような“目”をしています。 舞台となったワシントン州チェンバーズベイGCは2015年に「全米オープン」をホストしました。当時から芝の張り替えを行ったとのことです...
2022/08/10進藤大典ヤーデージブック

歴代2位の年少V キム・ジュヒョンは“第二の松山英樹”

アジアからすごい新星が現れました。レギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」を制したキム・ジュヒョン(韓国)。20歳1カ月17日での優勝は、第二次世界大戦以降のPGAツアーにおいて2013年「ジョンディアクラシック」を勝ったジョーダン・スピース(19歳11カ月17日)に次ぐ年少記録。2000年代生まれの初タイトルでもありました。 そのキャリアは、まさに“第二の松山英樹”。2019年、アジア下部ツアー(ADT)でプロデビュー戦を含め3勝して残りシーズンのアジアンツアー昇格を果たすと、「パナソニックオープンインディア」を制覇。17歳149日での優勝は当時のツアー最年少記録でした。 20年には日本...
2022/07/12進藤大典ヤーデージブック

中断10時間にトミーズバンカー 聖地セントアンドリュースが与える試練

世界最古のゴルフトーナメント「全英オープン」は150回の節目を迎えます。“聖地”セントアンドリュースがホストするのは2015年以来。僕も松山英樹選手のキャディとして一緒に戦った大会ですが、これまで経験した全英の中でも群を抜いて過酷な一週間でした(笑) 悪天候の影響により、2日目のプレーを終えたのが午後10時前。4ホールを残していたため、翌日土曜の起床は午前3時半くらいだったと記憶しています。ほとんど寝られずに突入した未消化分も、グリーン上に置いたリプレースしたボールが動いてしまうほどの強風だったこともあり、朝に回れたのは1ホールだけ。そこから結局10時間半ほどの中断を強いられました。そんな長丁...
2022/07/05進藤大典ヤーデージブック

団体戦とショットガン LIVゴルフを考える

サウジアラビアの資金を背景にした新リーグ「LIV招待」が、ついに北米で開催されました。“ホームグラウンド”に乗り込んできた相手に対し、PGAツアーも黙ってはいません。第2戦の開幕直前というタイミングで狙い撃ちするかのように、欧州ツアー(DPワールドツアー)との戦略的な提携を大幅に強化することを発表しました。 新リーグは今年の8試合から来年14試合に増えるとのことですが、定着は世界ランキングのポイントを獲得できる道筋をつけられるかどうかにかかっているでしょう。フィル・ミケルソンにダスティン・ジョンソン、新たに加わったブルックス・ケプカやブライソン・デシャンボー…ゴルフ界のスーパースターたちが、巨...
2022/06/29進藤大典ヤーデージブック

カッコいい結婚記念日V シャウフェレは“世界一”のオールラウンドプレーヤー【進藤大典キャディ解説】

ザンダー・シャウフェレが「トラベラーズ選手権」で今季2勝目をつかみました。昨夏「東京五輪」での金メダル獲得を思い浮かべるファンの方も多いと思いますが、個人戦でのPGAツアー優勝となると、2019年1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」以来。実に3年半近く遠ざかっていたのです。 4月のダブルス戦「チューリッヒクラシック」で一緒にタイトルをつかんだパトリック・カントレーとの最終日最終組。首位スタートながら最終18番のティイングエリアに立ったときは、今季何度か優勝争いに加わっているルーキー、サヒス・ティーガラを1打差で追う展開でした。 1組前でプレーするティーガラが左サイドのフェアウェイバ...
2022/08/30進藤大典ヤーデージブック

第二の黄金期を迎えるマキロイが背負った“宿命”/進藤大典キャディ解説

PGAツアーの2021-22年シーズンが幕を閉じました。ロリー・マキロイ(北アイルランド)が史上初となる3度目の年間王者戴冠を達成。初日の出だし1番でいきなりOBを打ってトリプルボギー、ボギー、バーディ、ボギー、バーディ、イーグルと息をつく暇もないようなスタートからの優勝には、1997年の「マスターズ」で初日前半に「40」をたたきながらメジャー初制覇を成し遂げたタイガー・ウッズの姿が重なりました。 6打差でスコッティ・シェフラーを追う最終日、1番でボギーが先行する苦しい展開でした。世界ランキング1位を相手に大量ビハインドですから、一切のミスも許されないと自分自身を追い込んでしまうもの。大きかっ...
2022/08/23進藤大典ヤーデージブック

目標は「毎日うまくなる」岩田寛の流儀

先週は国内外で同学年の活躍がまぶしい一週間となりました。PGAツアーのプレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」でアダム・スコット(オーストラリア)が5位に入り、大会前の時点で45位だったフェデックスカップポイントランクを29位に上げて3年ぶりに最終戦「ツアー選手権」のエリートフィールドへ滑り込みました。 そして、国内ツアー「長嶋茂雄招待セガサミーカップ」では岩田寛選手が7年ぶりの大会2勝目。僕と岩田選手、さらには宮里優作選手と佐藤賢和キャディは東北福祉大ゴルフ部の同期に当たります。昨季6年ぶりの優勝を飾ったときにも本コーナーで特別編としてコラムをお届けしましたが、今回も黙っているわけにはいきま...
2022/09/20進藤大典ヤーデージブック

“100回打っても入らない”ホマのチップイン ウィレットは勝ち気が裏目に

早くも始まったPGAツアーの2022-23年シーズン開幕戦「フォーティネット選手権」を現地で見ることができました。カリフォルニア州シルバラードリゾート&スパ は、相変わらずの素晴らしいコース。グリーンが日に日に硬く速く仕上がり、選手はセカンドショットでしっかり距離を合わせる技術が求められるセッティングとなっていました。 ワインの産地として有名なナパ。この時期としては10年ぶりともされる強い雨が降り注いだ最終日の戦いを制し、マックス・ホマが大会連覇を成し遂げました。雨が珍しい南カリフォルニア出身ですが、振り返れば初優勝した2019年「ウェルズファーゴ選手権」でも連日の悪天候の中を戦い抜いています...
2022/08/02進藤大典ヤーデージブック

273年も続いた“女人禁制” 夢舞台の厳しさを垣間見たミュアフィールド17番

海の向こうからうれしいニュースが届きました。「スコットランド女子オープン」で古江彩佳選手が優勝。最終日「62」をマークする圧巻の内容でした。海外に本格参戦して1年目で勝てたことには大きな意味があります。 松山英樹選手がそうであったように、多くの選手や関係者に一目置かれ、居場所を作りやすくなる。例えば予選ラウンドのペアリングも上位選手と組む機会が増えると思いますし、どんどん“環境”も良くなっていくはず。米国で先輩となる畑岡奈紗選手や笹生優花選手、同じくルーキーの渋野日向子選手はもちろん、日本人選手全体に大きな刺激をもたらしてくれる1勝といえます。 このコーナーも特別編として、古江選手をはじめ12...
2022/07/19進藤大典ヤーデージブック

ただ一人の全メジャートップ10入り “成熟”マキロイこそウッズの後継者

キャメロン・スミス(オーストラリア)が今季メジャー最終戦「全英オープン」を制しました。今季ブレークした選手と言えば、ツアー初優勝から世界ランキング1位到達、そして「マスターズ」制覇と破竹の勢いをみせるスコッティ・シェフラーが真っ先に思い浮かぶところですが、こちらも負けていません。 1月のハワイではツアー新記録となる通算34アンダーで優勝。“第5のメジャー”と称される「ザ・プレーヤーズ選手権」制覇に続き、聖地セントアンドリュースでコースレコードのトータル20アンダーとして初のメジャータイトルをつかみました。同一年のプレーヤーズと全英の2冠はジャック・ニクラス(1978年)以来となる史上2人目。ま...
2022/06/08進藤大典ヤーデージブック

飛距離にビックリ 全米女子で光ったアマ馬場咲希のポテンシャル

毎週PGAツアーのホットな話題をピックアップする本コーナー。今回は特別編として「全米女子オープン」について触れさせてください。 舞台となったのは、名匠ドナルド・ロス設計のノースカロライナ州パインニードルズ・ロッジ&GC。2014年に史上初の男女同会場での連続開催となったパインハーストNo.2とよく似たコースです。パインハーストといえば、少しでも外せばどこまでも転がっていってしまいそうな傾斜に守られた砲台グリーンが特徴。ひとつのミスがボギーどころか致命傷になりかねない、非常にタフなコースです。 パインニードルズもポイントはやはり共通していました。一見フェアウェイはワイドでラフもありませんが、フェ...
2022/06/14進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】“本物”だったマキロイ 新リーグのカギは?

今週はメジャー第3戦「全米オープン」が開催。本来ならゴルファー世界一を決めるトーナメント一色に染まりそうなものですが、ことしはそういうワケにもいかない事情があります。前週初戦が行われたばかりの「リブゴルフ・インビテーショナルシリーズ」を巡ってPGAツアーと新リーグ側の対立が深まっているのですから。 話題先行の感があった新リーグ。映像で見る限り、スタンドや看板といった会場の雰囲気は“お金がかかっているな”という印象。ギャラリーも数多く入って盛り上がっていました。そして、なんといっても巨額の賞金。個人戦と団体戦で優勝したシャール・シュワルツェル(南アフリカ)は475万ドル(約6億4560万円)もの...
2022/06/21進藤大典ヤーデージブック

レジェンドキャディの涙 全米オープンは“2人”の初優勝だった【進藤大典キャディ解説】

マシュー・フィッツパトリック(イングランド)が「全米オープン」でメジャー初優勝を遂げました。PGAツアー106試合目での初タイトル。今季のスタッツを見渡すと、“満を持して”といった印象も受けます。全米オープン前の時点で出場14試合のうちトップ10入りが7度。スコア貢献度を示す「ストロークゲインド」でもただ一人、ティショット、アイアン(グリーンを狙うショット)、アプローチ、パッティングと4つのカテゴリー全てで部門別25位以内にランクイン。隠れた絶好調男だったのです。 アマチュア時代の輝かしい実績の数々のひとつが2013年「全米アマ」優勝。くしくも会場は今回の全米オープンと同じザ・カントリークラブ...
2022/09/28進藤大典ヤーデージブック

気配りもすごい“完璧超人” アダム・スコットは将来の世界選抜キャプテン候補

「プレジデンツカップ」が米国選抜の9大会連続勝利で幕を閉じました。相手のホームで奮闘する世界選抜のチーム最年少20歳のキム・ジュヒョン(韓国)を見て、松山英樹選手が初出場した2013年大会を思い出しました。 当時も例年「ザ・メモリアルトーナメント」が行われるオハイオ州ミュアフィールドビレッジGCが舞台でしたから、毎ホールでUSAコールが響いているような感覚。ずっと耳にこびりついて夜に眠るのが大変だったくらいで、これが“アウェーの洗礼”なのかと思ったものです(笑)そして、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンといった超がつくスーパースターを擁する相手と対戦する緊張感も、それまで経験したことがないレ...
2022/05/17進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】松山英樹、スピース…全米プロはハイレベルな一戦に

メジャー第2戦「全米プロゴルフ選手権」が目前に迫ってきました。サザンヒルズCCは過去7回メジャーをホストし、2030年の全米プロの舞台にも決まっているオクラホマ州のプライベートコース。19年に改修を挟んでいますが、これまでのメジャーで最も優勝スコアが出た年でも94年にニック・プライス(ジンバブエ)が制した全米プロの通算11アンダー。タイガー・ウッズが制した前回07年大会もトータル8アンダーとタフなコースなのは間違いありません。 フィールドを見渡せば、世界ランキング上位の実力者が順当に調子を上げている印象で、ハイレベルな戦いが期待できそう。世界ランクの上位11人で今季優勝がないのは、コリン・モリ...
2022/04/13進藤大典ヤーデージブック

タイガー・ウッズはジャック・ニクラスのメジャー18勝を超えられるか

ゴルフの祭典はスコッティ・シェフラーのメジャー初優勝で幕を閉じました。世界ランキング1位の選手による「マスターズ」制覇はイアン・ウーズナム(ウェールズ、1991年)、フレッド・カプルス(92年)、タイガー・ウッズ(2001、02年)、ダスティン・ジョンソン(20年)に続く6回目(5人目)。ナンバーワンプレーヤーであっても、世界中から名手が集うオーガスタで勝ち切るのが容易ではないことを示しています。 初タイトルとなった2月「WMフェニックスオープン」から6戦4勝。やはり勢いのあるキャメロン・スミス(オーストラリア)との最終日最終組で際立ったのは総合力の高さでしたね。 4日間のフェアウェイキープ率...
2022/04/19進藤大典ヤーデージブック

スピースが「全米プロ」へ視界良好 生涯グランドスラムに近いのは

ジョーダン・スピースが「RBCヘリテージ」で通算13勝目を挙げました。2018年に小平智選手が優勝を飾ったサウスカロライナ州ハーバータウンGLは距離こそ短め(7121yd、パー71)ですが、フェアウェイは狭く、グリーンもコンパクト。せり出した木の枝による“空中のハザード”もあり、ショットメーカー向きのコースです。 2月「AT&Tペブルビーチプロアマ」で優勝争いの末に2位となった以外はいまひとつだったスピース。前週は「マスターズ」でまさかの予選落ち。15年に優勝し、過去8回の出場でトップ3フィニッシュ5回と抜群の相性を誇るはずのオーガスタで初めて決勝ラウンドへ進むことができませんでした。 栄光の...
2022/05/25進藤大典ヤーデージブック

トーマスの7打差大逆転は“人生最高のボギー”から始まった【進藤大典キャディ解説】

ジャスティン・トーマスが2017年大会以来となる「全米プロゴルフ選手権」2勝目を飾りました。オクラホマ州サザンヒルズCCでは過去7回メジャーが開催され、7回とも54ホール終了時点で首位に立った選手が優勝。それを打ち破る7打差からの大逆転劇。1978年のジョン・マハフィーに並ぶ大会レコードでもありました。 トーマスが優勝した17年大会、僕は松山英樹選手のキャディとして最終日同組でプレーを見ていました。それまでも幾度となく競り合う機会があった“ライバル”。タイガー・ウッズやロリー・マキロイ(北アイルランド)は一挙手一投足からにじみ出る圧倒的な自信が、こちらにプレッシャーを与えてくるような雰囲気すら...
2022/05/10進藤大典ヤーデージブック

マックス・ホマに宿る確かな自信【進藤大典キャディ解説】

マックス・ホマが「ウェルズファーゴ選手権」を逆転で制しました。2021-22年シーズン開幕戦「フォーティネット選手権」に続く今季2勝目。シーズン複数回優勝は松山英樹選手、スコッティ・シェフラー(4勝)、キャメロン・スミス、サム・バーンズ(達成順)に続く5人目となりました。 通算8アンダーと優勝スコアが2桁アンダーに届かなかったのは、3月「アーノルド・パーマー招待」(通算5アンダー)に続く今季2度目。大会3勝のロリー・マキロイ(北アイルランド)らも苦しめた悪天候のタフなコンディションを乗り切ってみせました。 例年ノースカロライナ州クエイルホロークラブ(22年は9月「プレジデンツカップ」の開催コー...
2022/05/03進藤大典ヤーデージブック

“本命”が今季初優勝 ジョン・ラームのすごさとは/進藤大典キャディ解説

ジョン・ラーム(スペイン)が「メキシコオープン」で今季初優勝を飾りました。6シーズン連続の勝利でツアー通算7勝目。DPワールドツアー(欧州ツアー)6勝、ツアー外の2018年「ヒーローワールドチャレンジ」を含めても、初日から首位を守る完全優勝は意外なことにキャリア初でした。 PGAツアーの公式サイトでは、試合ごとに優勝候補予想「パワーランキング」が公開されています。この大会で1番手に推されていたのがラーム。昨年9月に始まった2021-22年シーズン28試合目(対抗戦、ツアー外競技は除く)にして、V候補筆頭の“初勝利”でもありました。世界中から才能が集まる最高峰の舞台。全盛期のタイガー・ウッズは別...