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【WORLD】2度の心臓移植 E.コンプトンを支えるもの〈2〉

2012/03/01 13:52

Golf World(2012年1月30日号)texted by Jim Moriarty

バーバラ夫人とエリック。世界のトッププレ バーバラ夫人とエリック。世界のトッププレーヤーを戦う上で、他選手よりも家族のサポートが大きな意味を持っていることは言うまでもない。(D.Cuban/GW)

コツコツとゴルフの腕を磨くこと。コンプトンの挑戦は、他の人間のそれとは違い、長くつらい仕事だ。彼の身体では練習場で長時間立ってボールを打ち続けるわけにはいかない。代わりに運動神経と自信を頼りにしている。時には、その自信が気取っているようにみられてしまうほどだ。

自分の“身の丈”に自信を持っていて、それをうまくコントロールできているツアープレーヤーがそうはいない。だがコンプトンの自信は違うことから来ている。それは誰も選ぶことがないもので、彼が2度も体験したこと(心臓移植手術)にほかならない。

「ネイションワイドツアーでは、僕がプレーする前にいくつボールを打つかを当てるギャンブルがあるというジョークがあったんだ。5球のときもあれば、10球打つときもあった。そういうことに慣れるように努力したよ。自分の持っている反射神経が自分を前に進ませてくれている唯一のもの。だから僕はゴルフができている。僕の哲学はみんなに合うかは分からないけど、僕は自分に、何を望んでいるか聞くようにしてきた。ジョージア大からオールアメリカンになり、プロ転向してから、僕はタイガー・ウッズのような男になりたいと思っていた。勢いよくキャリアを歩んでいこうとね。移植手術を受けても、そうしようと思っていた」

「でも今では自分が未熟だったと思うよ。僕が僕であることに心地よさを感じていなかった。自分に障害が無いように装っていたんだ。もし、僕が生きてきたような人生を歩まなければならないとして、そのことを他の人々と分かち合えないとしたら、それは本当に問題だと思う。僕にとっての癒しは、自分の話を人にすることだったんだ」。

シーズン序盤戦のハワイやウェストコーストスイング(西海岸シリーズ)での遠征中、コンプトンは練習ラウンドでプレーするより病院に行くことの方が多かった。ステロイドなどの投薬により彼は生き延びているが、副作用は彼の感情から消化器官にまで影響を及ぼしている。胃潰瘍の超音波検査のためジャクソン記念病院に行った時は、心臓発作の苦しみの中、4年以上前に自分で運転して向かった時と同じ暗い駐車場に停めた。1992年に初めて心臓移植を受けたとき、緊急治療室で倒れ血を吐き、苦しみの日々が始まった。そういった経験をしたことで、全てを受け入れるしかなかったのだ。

苦難を乗り越え、PGAツアーの舞台にたど 苦難を乗り越え、PGAツアーの舞台にたどり着いたコンプトン。だが戦いはまだ終わっていない。(J.D.Cuban/GW)

「自分に起こることは分かっているさ。これまではそれをコントロールしてきた。周りは、また(心臓発作が)起こることをすごく恐れている。でも、起きたら起きた時だよ。僕には妻がいて子供がいて、僕は永遠に彼らのそばにいると信じている。でも、そうはならないかもしれないことも理解している。もし、また起きてしまったら仕方ない。それほど心配してはいないんだ」

コンプトンは、エルモア・レナード原作の映画『ゲット・ショーティ』で、ジョン・トラボルタ演じる、マフィアの取立屋から新進の映画プロデューサーとなったチリ・パーマーを完璧に具現化しているかも知れない。「そこに戻るのを怖がっているの?」とカレン・フロアーズ(レネ・ルッソ)が言うシーンがある。

「もちろん」とチリ。
「そんな風に見えないけど」とレネ。
「怖かったよ。でも、今は怖くない。どれくらいの間、怖がらせていたいんだ?」とパーマーが聞く。

コンプトンは、“彼自身のストーリー”についてホノルルで質問を受けた。「ハリウッドではエンディングが必要だ。PGAの試合で優勝して、メジャーで勝って、グランドスラムでも達成しないとね。映画にするにはタフな話だよ。まだ現在進行形だからね」。

未来について、我々が分かっている唯一のことは、「OK」はないと言うことだ。「老人と海」のサンチャゴのように、釣り糸を区別することがベストだ。その老人の心はこうだ。「毎日が新しい日だ。よくなっていればラッキー。そして準備ができていれば運は向いてくる」。コンプトンも運が向くことを待っている。「できれば、なんだかんだ言って1、2勝はしたいね」。

大きなカジキと格闘し、手の平と背中の皮膚から血が出て負傷したサンチャゴは、アーネスト・へミングウェイのもっとも分かりやすいキャラクターだ。その疲れた老人が船の横に魚を縛りつけ陸に上がると、肩ごしに帆をかけ丘を登り住処に戻る。ヘミングウェイの精神では、話すことでその質が落ちると言う。小説が本当に意味するところは何かと問われたとき、彼は「キューバのこの老人(サンチャゴ)は漁に出て、せっかく釣ったカジキをサメに食べられた。それが全てを意味している」と話した。

コンプトンは、マングローブの根元で巨大なアカメを釣るかわりに、メキシコ・オープンに勝ち、ネイションワイドツアーの賞金ランクで13位になったことで“カジキ”を釣った。今度は“サメ”が相手だ。

米国ゴルフダイジェスト社提携
Used by permission from the Golf DigestR and Golf WorldR. Copyrightc 2011 Golf Digest Publications. All rights reserved

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