2011年 ザ・プレジデンツカップ

【WORLD】世界選抜チームが有利? カップ戦でホームチームが勝つのは何故

2011/11/15 17:21

Golf World(2011年11月7日号)voices texted by Mike Cullity

カップ戦は地の利が働き、今回は世界選抜有利か?

初の海外開催となった13年前のザ・プレジデンツカップ(オーストラリア)では、世界選抜チームがホスト国出身プレイヤー4人のパワーに助けられて勝利した。

地元出身のスチュアート・アップルビー、スティーブ・エルキントン、グレッグ・ノーマンクレイグ・パリーの4人だけでフォアサム、そしてフォアボール形式で10勝1敗3分という好成績を記録。中でもメルボルン出身のパリーは、丸山茂樹と組んだフォアサムでの試合でチップインを決め、タイガー・ウッズ&フレッド・カプルスからアップセットとも言える逆転勝利を収めた。世界選抜チームが20.5対11.5の圧勝で幕を閉じたこの1998年の大会終了後、エルキントンはホームのファンから後押しを受けた影響を勝因に挙げた。

2011年のザ・プレジデンツカップでは、98年の出場選手だったノーマンとカプルスがそれぞれ世界選抜、そして米国選抜の主将を務めるが、今回も地元メルボルン出身のジェイソン・デイアダム・スコットジェフ・オギルビー、そして主将推薦で出場するロバート・アレンビーアーロン・バデリーの豪州勢5人は伸び伸びと力を発揮するに違いない。

特に大会コースとなるロイヤルメルボルンGCと相性の良いアレンビー、そしてバデリーはアリスター・マッケンジーが設計したコースで好成績を収める傾向があるため、ノーマンも期待しているはずだ。
地元開催、慣れ親しんだコース、ファンの声援という要素を考えてみても、世界選抜が勝利する可能性が高いのではないだろうか?仮に世界選抜チームが、本当の意味で”ホーム”という状況下の中、98年のオーストラリア大会、2003年の南アフリカ大会、2007年のカナダ大会を戦っていたとしたら、結果は変わっていたかもしれない。

過去のプレジデンツカップを思い返してみても、ホスト国が75%の勝率を誇っている。ホストチームが圧倒的に有利なのは他のカップ戦にも通じるところで、例えばソルハイムカップ(83%)、ライダーカップ(63%)、ウォーカーカップとカーティスカップ(共に56%)と、ホストチームが勝つ確率が高く、今回も世界選抜が勝利すると予想するのは当然のことと言える。

しかしながら、それもあらゆる状況が絡んだ場合に限ると意見する識者もいる。著書”Scorecasting:The Hidden Influence Behind How Sports Are Played and Games Are Won”の著者トビアス・J・モスコウィッツとL・ジョン・ウォートヘイムによれば、スポーツの大会におけるホストチームの優位性は絶対的。しかし、一般的に考えられている理由がその要因ではないと指摘している。

具体的な例を挙げれば、ホームファンの声援、そして地の利を生かしているという要因は、NBAのホームチームが約63%、NHLのホームチーム59%、NFLでは58%、MLBでは約54%の勝率を挙げている理由ではないという。彼等は、審判に働いている心理的影響がホームチームの勝率を挙げていると主張。つまりは大多数の人間、つまりホームのファンがより納得する裁定を下していることが最大の要因としている。

当然ながら、この分析が他の競技よりも審判の影響をほとんどと言って良いほどに受けないゴルフにあてはまるとは思えない。では、ゴルフにおけるホームチームの圧勝を説明する要因は何なのか?それは、コースによって全く特徴が異なるということしかないだろう。

シカゴ大で金融学の教授として教鞭に立つモスコウィッチは、もし選手が開催コースについて熟知しているとすれば、それはかなりのアドバンテージとなると指摘。「風等の気候条件だけではなく、傾斜、それに各ホールの特徴を知っているか、いないかは勝敗に大きく影響する」と語っている。これが事実だとすれば、ロイヤルメルボルンGCで育った地元出身の選手を擁する世界選抜チームに有利に働くことは絶対。ただ、これだけではプレジデンツカップを楽しみにしているファンには不十分なこともわかっている。そこで、同著者が指摘するもう1つの心理的要因について触れたい。

それは、ホームでは絶対に負けられないという強い感情だ。誰であれ、勝利よりも敗北という事実を嫌う傾向が強く、負けている状況ではよりアグレッシブにプレーするという心理的作用が働く。2000年以降のプレジデンツカップで常に勝利してきたアメリカ選抜チームが、絶対に負けられないという意地を持ち、ホームの強みを持つ世界選抜チームに勝てるかどうか、それが今大会最大の見所ではないだろうか。

米国ゴルフダイジェスト社提携
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