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後世に残したいゴルフ記録

ツアー史に埋もれた最多アルバトロス保持者/残したいゴルフ記録

国内男子ゴルフのツアー制度が始まった1973年より前の記録は、公式にほとんど残されていません。本連載では、ゴルフジャーナリストの武藤一彦氏が取材メモや文献により男子ツアーの前史をたどり、後世に残したい記録として紹介します。

新井規矩雄が3回マークも…最初の快挙は公式記録に残らず

飛ばしの時代に入った近年のプロゴルフツアー界は、2オンして当たり前のパー5が一日に1つや2つはある。パー4でもワンオン狙いを売り物にティイングエリアを前に設定し、ホールインのスリルを演出することが増えた。そんな背景もあり、世界ツアーでアルバトロスが多発している。日本の男子ツアーでは記録が残る1985年以降、41回のアルバトロスが生まれており、パー4の1打目から1回、パー5の2打目から40回あった。

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国内男子ツアーのアルバトロス最多記録保持者は「2回」で6人が並ぶが、実は1984年以前を含めると、新井規矩雄(77歳、あらい・きくお)の「3回」が単独1位になる。1回目はツアー制度が始まった1973年秋、大阪府の茨木カンツリークラブ・西コースで行われた「日本オープン」の第1ラウンド。前述の通りツアー記録が残るのは85年以降のため、残念ながらツアー史には記されていない。

「忘れもしない。やや打ち下ろしの2番パー5。2打目は5番ウッドで、いい感触のナイスショット。グリーンから“入った”という声と拍手が聞こえた」。当時29歳の新井は東洋大出身。関東では2人目の学士プロで、黒ぶちメガネにしゃれた帽子がトレードマークだった。思い切りのよい攻めのロングヒッターは、この会心の一打で上位争いに加わった。同大会は、ベン・アルダが青木功とのデッドヒートを制しフィリピン出身で初の王者に。その前年大会も韓国の韓長相にタイトルを奪われた日本にとっては屈辱の2連敗となったが、アルバトロス男・新井は最終日、最終組の3組前から7位に食い込み、日本の救いとなった。

2回目のアルバトロスは、16年後の1989年5月、熊本空港CCで行われた「三菱ギャラン」第1ラウンドの18番。新井45歳、520ydのパー5で残り170ydを3番アイアンで放り込んだ。

「右ドッグレッグホールで手前池の横長グリーン。スタンドで見ていたギャラリーから“手前から入ったよ”と聞いて知った」と言う快挙には伏線があった。この日スタート前の早朝に、インスタートの中尾豊健が18番でアルバトロスを出した。快挙はコース中に伝わり、新井の耳にも入っていた。午後、その同じ18番でアルバトロスの新井は、一日に2つ目の快挙達成者として胸を張ってホールアウトし、記者に囲まれたものだ。だが、それとは別にある問題が発生した。

実は、中尾の快挙を聞いたコースのオーナーがその直後、特別賞として50万円を贈ることを発表。その数時間後に新井が2発目を出し、特別賞金の行方をめぐって議論百出となっていた。結局、オーナーが新井にも50万円を贈る太っ腹な裁量。50万円が100万円になったオーナーにはとんだ散財となったのだが、同一ホールで2人が快挙を達成したことは、きっとオーナーにはそれだけの価値がある出来事だったのだろう。

この年の新井は何かを持っていたようだ。その2カ月後の7月、大新潟CC三条コースで行われた「NST新潟オープン」最終ラウンドの9番パー5で、5番ウッドの2打目を放り込んだ。手前にクリークが流れる打ち上げのホールだった。ツアー最多記録に刻まれる、3回目の快挙である。

アルバトロスは以降、伊澤利光デビッド・スメイル(ニュージーランド)、宮里優作宮本勝昌武藤俊憲がそれぞれ2回マークしているが、2021年2月現在、新井の記録には追いつけていない。

最後に、パー4のアルバトロスである。1998年5月、中嶋常幸が「中日クラウンズ」第2ラウンド、スタートホールの1番パー4で、打ち下ろし370ydのティショットをカップに放り込む“会心の一打”。唯一無二の快記録である。ゴルフは何が起こるか分からない。いや、何でも起こるのがゴルフ。次の快挙を楽しみに待とう。(武藤一彦)

武藤一彦(むとう・かずひこ)
1939年、東京都生まれ。ゴルフジャーナリスト。64年に報知新聞社に入社。日本ゴルフ協会広報委員会参与、日本プロゴルフ協会理事を経て、現在は日本エイジシュート・チャレンジ協会理事、夏泊ゴルフリンクス理事長を務める。ゴルフ評論家として活躍中。近著に「驚異のエージシューター田中菊雄の世界」(報知新聞社刊)など。

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