2009年 マスターズ

歴史から名物イベントまで…「マスターズ」を徹底解剖

2009/03/16 09:00

「マスターズ」とは、毎年4月にアメリカ南西部のジョージア州オーガスタにあるオーガスタナショナルゴルフクラブで開催されるゴルフトーナメント。「マスターズ」は男子プロゴルフ競技で格が高い4大メジャー大会の一つだが、毎年同じコースで開催されるのはこの大会のみ。一般的に注目度が非常に高く、日本でも最も評価の高いゴルフイベントとなっている。

農園地から世界一美しいコースへ

世界中のトッププロも憧れるオーガスタ・ナショナルGCのクラブハウス(DavidCannon/Getty Images)

開催コースとなるオーガスタナショナルGCは1933年に開場。ジョージア州出身で、年間グランドスラム(同じ年に4大競技をすべて優勝)を達成した「球聖」ボビー・ジョーンズ氏と実業家のクリフォード・ロバーツ氏、そして英国ゴルフコース設計家アリスター・マッケンジー博士の協力によりクラブが発足した。コースが造られた土地はもともとインジゴ(藍)農園地であったが、その丘陵地がうまく生かされてゴルフコースを形成している。後半のバックナインには池や小川などの罠が多くあり、戦略性が高い。またコース内にはたくさんの木や花が植えてあり、トーナメントが開催される4月は植物が開花してオーガスタナショナルは世界で最も美しいゴルフコースと呼ばれることが多い。

1934年に「オーガスタナショナルインビーテーショナル」として発足されたトーナメントは6回目の大会となった1939年から現在の正式名称になっている「The Masters Tournament」と呼ばれるようになった。毎年優勝者にはこのコースの会員が着用する緑色のスポーツコート『グリーンジャケット』が贈られ、名誉会員となり生涯このトーナメントに参加できる資格が得られる。

オーガスタナショナルの会員は超大物揃い!

オーガスタナショナルはゴルフメンバー(会員)が世界中で僅か300人前後という超プライベートコース。ゴルフクラブからの「招待状」で加盟することができるというが2009年4月現在、女性のメンバーは存在せず男性のみのメンバークラブとなっている(女性はビジターとしてプレーすることは可能)。

2002年に『USA TODAY』というアメリカ全国紙で会員メンバーが発表されたことがあったが、その当時のリストには日本人のメンバーは存在していなかった。ビル・ゲイツ氏(マイクロソフト会長)や、世界的に有名な大企業の代表が名を連ねている。

他のメジャーとはここが違う!

他のメジャー競技(全米オープン、全英オープン、全米プロ選手権)は出場人数定員が156人となっているが、「マスターズ」は出場人数を100人弱と限定していて、一線で活躍する選手も出場するのは簡単ではない。大会が始まる前にいろいろな特別イベントがあることでも有名。火曜日の夜に過去のチャンピオンだけで食事をする「チャンピオンズ ディナー」は、前年度の優勝者がメニューを決めることができる。過去にはタイガー・ウッズやタイガーの親友マーク・オメーラ(1998年優勝)がお寿司をメニューに加えて話題になったこともある。トーナメント前日の水曜日は隣接するパー3コース(パー27)で「パー3コンテスト」が開かれる。「パー3コンテストに優勝するとその年の試合では優勝できない」というジンクスは、今も続いている(過去に青木功が1975年、1981年、中嶋常幸が1988年にパー3コンテスト優勝者になっている)。

あの選手も袖を通せていないグリーンジャケット

トーナメントが行われるバックティからは全長7,435ヤード設定。18ホール中で有名なのは「アーメンコーナー」と呼ばれる11番、12番、13番の3ホールだろう。これらのホールは池や小川が絡んでくる上に上空の風の方向が変わりやすく選手の狙いを惑わす。1978年には中嶋常幸がパー5の13番で「13」という大叩きをしてしまった記録は現在でもワースト記録として残っている。グリーン上の起伏は激しい上にスピードはとても速く、絶妙なタッチが要求される。

過去の名選手、または現役のトップランカーで「マスターズ」のタイトルを取れていない選手は多い。リー・トレビノジョニー・ミラーもオーガスタを攻略することはできなかった。グレッグ・ノーマンは過去2位が3回、3位が3回を含むトップ10フィニッシュが9回。またアーニー・エルス(南アフリカ)も2位2回を含むトップ10フィニッシュが6回と、優勝争いに絡みながらもまだグリーンジャケットに袖を通すことはできていない。

輝かしい歴代優勝者、そして時代はタイガーへ

2005年、4度目の優勝を決めた瞬間のタイガー・ウッズ(David Cannon/GettyImages)

歴代チャンピオンには最多優勝6回という偉業を成し遂げたジャック・ニクラス(1963、1965、1966、1972、1975、1986年)、4回優勝のアーノルド・パーマー(1958、1960、1962、1964年)。21歳3ヶ月14日という最年少優勝記録を持つタイガーは、オーガスタではすでに4回優勝を経験している(1997、2001、2002、2005年)。プロになってから12年目、メジャー挑戦47試合目で初メジャー制覇をしたフィル・ミケルソンは2回優勝(2004、2006年)。日本人選手の最高順位は2001年4位フィニッシュとなった伊澤利光。日本人選手で最多出場記録を持っているのは尾崎将司で、18回参戦している。

「マスターズ」で6回優勝した経験のあるニクラスは、タイガーがプロ転向する前となる1996年に「タイガー・ウッズは私とアーニー(アーノルド・パーマー)を合わせた優勝数(10勝)を超えるだけの能力を持っていると思う」と語っていた。タイガーは1996年秋にプロ転向後、初挑戦となる1997年に2位に12打差のつける圧勝で優勝、最年少優勝記録を果たしている。その後は2001、2002、2005年と優勝を重ねたタイガーの5度目の「マスターズ」制覇への挑戦は続いている。

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