大事故、復帰、3年離脱… 35歳バースデーに狙う“第5のメジャー”最大の下剋上
◇米国男子◇ザ・プレーヤーズ選手権 3日目(15日)◇TPCソーグラス ザ・プレーヤーズ・スタジアムコース(フロリダ州)◇7352yd(パー72)
“第5のメジャー”に6年ぶりの出場が決まったのは、開幕3日前の月曜日だった。欠場者が出て、バド・コーリーはフィールドに滑り込んだ。
近くに住んでいた幼少期は毎年大会を観戦に訪れた。名物17番(パー3)でタイガー・ウッズが長いスネークラインを沈めた伝説的なバーディも、8番のガードバンカーからミスしたフレッド・カプルスが目の前のラフに止まったボールを左打ちでチップインさせた時も、会場にいた。アラバマ大を卒業してからジャクソンビルに拠点を構え、数え切れないほど練習したコースでもある。身近だった場所を見上げるような立場になって久しい。
タフなキャリアの始まりは2018年の「ザ・メモリアルトーナメント」だった。予選落ちを喫した大会2日目の夜、乗っていた自動車が交通事故に巻き込まれた。後部座席にいたコーリーは肋骨6本と左足を骨折し、右の肺を損傷する大けがを負って手術を受けた。
当時、「生きていることに感謝したい」と話したほどの事故から4カ月後に一度は復帰。しかし、2020年の秋から右脇腹の痛みで再び離脱した。複数の医師の診察を受け、痛みの原因の可能性として浮上したのが2年前の手術で入れたプレート。切開手術を受けたものの、骨の成長でプレートを取り除くことができず、その12日後には切開部が再び開いてしまって救急治療室に戻った。
各種治療に専念し、昨年2月「WMフェニックスオープン」でようやくPGAツアーの試合にカムバックした。「メジャー・メディカル・エクステンション(公傷制度)」の適用を受けており、あと6試合でフェデックスカップポイント66.893ptを稼ぐ必要がある。チャンスを逃すまいと、強風が吹いた3日目は16位からベストタイ「66」をマーク。この日の9番(パー5)では唯一のイーグルとなるチップインも決めるなど、通算11アンダーで首位と1打差2位に急浮上した。「ここでプレーした中では間違いなくベストのラウンド。(ホールアウト後の)昼食がおいしくなるね」と笑う。
将来を嘱望されながら、交通事故で暗転したキャリア。恨み節を口にすることはない。「交通事故が人生を変えたと思っていたけど、その後、子どもができて、それが本当に人生を変えたんだ」。この大会でツアー初優勝を飾れば、クレイグ・パークス(2002年)とティム・クラーク(南アフリカ/2010年)に続く史上3人目。世界ランキング251位での優勝なら、203位だったパークスを上回って第5のメジャー史に残る最大の“下剋上”だ。「悪い日が続いても、それで終わりじゃない。明日また頑張ればいいんだ」。そうやって自分を鼓舞し続けてきた不屈の男が、35歳の誕生日にサプライズを起こす。(フロリダ州ポンテベドラビーチ/亀山泰宏)