言えなかった秘密の時間 小さな巨人・西村優菜が憧れる宮里藍さん最後のV試合で初優勝
◇米国女子◇ウォルマート NW アーカンソー選手権 presented by P&G 最終日(27日)◇ピナクルCC (アーカンソー州)◇6438yd(パー71)
ボランティアさんとの記念写真に収まったチャンピオンは、その真ん中で誰よりも小さかった。日本ツアー時代から注目された西村優菜の小柄な体格は、米国では余計に際立つ。ツアー4年目の今も、はっきり自分より背が低いと言えそうな選手を見つけられていない。同じ身長150cm登録の山下美夢有との背比べは、海を渡って「『どっちが大きく見えますか?』って聞くんです」と他人に委ねることにしたらしい。
幼い頃、父の練習場通いに付いていったのをきっかけにゴルフを始めた。2009年の「サントリーレディス」に出場した宮里藍に魅せられ、プロゴルファーになる夢を描く。8歳だった。当時、会場でもらったボールがずっと宝物。憧れの存在はその1カ月後、悲願だった米女子ツアー初優勝を「エビアンマスターズ」(現エビアン選手権)で飾った。
女子ゴルフブームをけん引した偉大な先輩は、米国で待望の1勝をマークするまでに4シーズンを必要とした。ドライバーショットのイップスを発端にゴルフが壊れ、頭と心をフル稼働してプレーするスタイルを模索し復活。外国人選手との体格差をものともせず、世界ランキング1位の座も射止めた。
宮里さんは2017年に現役を退いたものの、2023年に自身が米女子ツアーに身を置くようになると、西村はただ憧れるだけではなくなった。著書などに目を通し、大先輩のキャリアを支えたゴルフ哲学「ビジョン54」にも興味を持った。
日本ツアーのプロアマ戦で一緒に回る機会を経て、不振にあえいだ昨年の夏ごろ、西村はついに宮里さんに直接アポイントメントを取った。「“ど”厚かましく、日本で会ってもらって一緒に話を聞いていただいた」。同じく米女子ツアー経験者の諸見里しのぶと3人で東京で落ち合い、「私はメンタルにはあまり目を向けてこなかったんですけど、どういう気持ちでやっていたのかと話を聞かせてもらった」と貴重な機会を授かったという。
それから、およそ1年。「一つひとつのことに集中するよう努め始めた。それも全部つながってくれたのかなと思います」と、あの時の一念発起が初優勝という形で結実したことが感慨深い。これまで公言してこなかったのは、「良い成績が出てから言わないと失礼だと思っていた」から。恩人の顔に泥を塗るわけにはいかなかった。
アーカンソー選手権は2012年、宮里さんが米女子ツアーで9勝目、最後に優勝した大会だった。「同じ試合で優勝できたことが本当にうれしい」。本格参戦4年目、米国で同じ時間だけ苦しみ抜いた26歳が、縁ある場所で重い扉を開いてみせた。(アーカンソー州ロジャース/桂川洋一)