申ジエ「一緒に戦っている感じで、勇気をもらった」 死闘演じた藤田さいきへの思い
◇国内女子メジャー◇ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ 最終日(11日)◇茨城ゴルフ倶楽部 東コース◇6675yd(パー72)◇晴れ(観衆9752人)
7年ぶりとなる国内メジャー通算5勝目にも、申ジエ(韓国)のガッツポーズはラウンド中のどんなシーンよりも控えめだった。すぐにプレーオフを含めて19ホールをともに戦い抜いた藤田さいきに向き直ってハグを交わす。プレーオフの18番(パー5)がこの日唯一のバーディというタフな1日。競い合った相手の存在があるから、心折れずに戦い抜けた。
百戦錬磨の37歳をして、メジャーは「コースとともに、自分との闘いが一番ある試合」だという。孤独で苦しい舞台。それでも、体調不良を抱える藤田が2番(パー3)からボギー→ダブルボギーと2ホールで3つスコアを落としても、5番でベタピンのバーディを奪い返す精神力に舌を巻いた。「藤田さんが棄権することなく、諦めずに目いっぱい頑張る姿に心を打たれた。一人じゃなく、一緒に戦っている感じで、私も勇気をもらいました」と最大限の敬意を表する。
バーディなし、1ボギーだった正規18ホールも元世界ランキング1位のスキルをこれでもかとつぎ込んだラウンド。ガードバンカーからギリギリを狙って傾斜で巧みに寄せた4番、砲台グリーン右サイドからのロブショットと3mのパーパットでしのいだ5番などディフェンスで見せ場を作れるのは技術があってこそといえる。
我慢を重ね、最後はスーパーショットで決めた。正規ラウンドは2オンを狙った18番(パー5)で、プレーオフは3打目勝負に切り替えた。硬いグリーンの奥の段に切られたピンまでしっかり突っ込みつつ、スピンコントロールも完ぺきだった54度のウェッジショットは紛れもなくハイライトだが、本人はむしろ狙い通りに75ydを残した4UTのセカンドに胸を張る。「2打目が良かったから、チャンスを作れた」。極限の状況でプラン通りの2打をつなげた。
37歳13日での大会最年長優勝、初の東西両コース制覇、ツアー第1号となる生涯獲得賞金14億円突破…。記録ずくめのタイトルで昨季から続いた国内での未勝利に終止符を打ち、ツアーメンバーとして通算29勝目。永久シード(30勝)獲得に王手をかけた。これまで目の前の1勝に集中することを強調し、迫る偉業への意識はないことを繰り返してきた。いよいよとなったカウントダウンで、心境に変化はあるのか。「次の1勝も、変わらないと思います」。即答できるブレないメンタリティ。長きにわたって第一線で戦い続けられる秘訣がのぞいた。(茨城県つくばみらい市/亀山泰宏)