ドクターストップ振り切り“無の境地” 39歳・藤田さいきの覚悟「メジャーじゃなければ…」
◇国内女子メジャー◇ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ 3日目(10日)◇茨城ゴルフ倶楽部 東コース◇6675yd(パー72)◇雨(観衆3798人)
「あんまり言っちゃいけないんですけど…」と申し訳なさそうな声で藤田さいきは本音を吐露する。「メジャーじゃなかったら、確実に、100%休んでます。ドクターからは正直止められていますし、とても行ける状態じゃなかったので」。前週、右手首を痛めて途中棄権したタイミングと前後して体調も崩した。一時39℃ほどまで上がった熱は、いったん収まりそうになって、2日目に再び悪化したという。
午前組を回って単独首位をキープして終えた前日のラウンド後はコーチである兄・勇樹さんがプレー面の助言をくれようとしたそうだが、「耳に入ってなかったです」と苦笑するほどフラフラの状態。食事もゼリーしかのどを通らず、午後1時半にはいったんベッドに入った。リモートで医師の診察も受け、処方してもらった薬を夫の和晃さんが東京まで受け取りに走ってくれた。「(道中に)飛来物で車のフロントガラスが割れたみたい。修理代が高いって言ってました…」と献身的なサポートへの感謝は尽きない。
満身創痍で臨んだ3日目のラウンドはスタートから雨が降る難条件。左サイドに切られたピンの手前、狭いエリアをしっかりと攻め込んだ6番(パー3)でバーディを先行したが、折り返しの9番(パー5)でトラブルに見舞われた。
3打目を右手前のガードバンカーに落とすと、“ホームラン”した4打目が奥のラフへ。「(頭が)ボーっとしてたので、何とも言えないですけど、ライは決して悪くなかったです」。アプローチのミスも重なってダブルボギーをたたき、同じ最終組の葭葉ルミに一時首位の座を明け渡した。
気落ちしてもおかしくない状況から上がり3連続を含めて5つものバーディを奪い返せたのは、ある意味で体調が最悪だったからこそかもしれない。好調なパッティングも、呼吸が苦しい状態でライン読みもままならず、タッチに集中するだけ。スコアを守りたいという“邪念”を抱く余裕もない。「そんなに追い詰める感じでやってなかった。頭の中はめちゃくちゃシンプルになって、(結果的に)めちゃくちゃ良い方に転がっている。(体調が良かったら)余計なことばっかりしてるんでしょうね…」とつぶやいた。
終わってみれば、「68」で唯一の2桁となる通算10アンダー。後続に2打差をつけ、2010年「日本女子プロ選手権」以来15年ぶりのメジャータイトルへポールポジションで最終日に臨む。(茨城県つくばみらい市/亀山泰宏)