歴史を作った男たちがオーガスタナショナルへ
かつて「マスターズ」を制した7人の選手たちが、世代の誇りを胸にオーガスタナショナルに集う。来週の木曜には、ヨーロピアンシニアツアーでもプレーするイアン・ウーズナム、ベルンハルト・ランガー、トム・ワトソンといった面々がティオフする。彼らの勝利や「マスターズ」における瞬間を振り返ってみることにした。
1986年に46歳と82日で6着目のグリーンジャケットに袖を通したジャック・ニクラスによる「マスターズ」での最年長優勝記録は未だに塗り替えられていない。ジョージアの聖地では世界最高峰の選手でさえ苦闘を強いられる。これまでカムバック劇が現実のものとなったこともある。オーガスタで往年の選手たちを優勝候補から外すことはできない。
ベルンハルト・ランガー 安定感でメジャー制覇
ベルンハルト・ランガーは、3度目の出場となった1985年に「マスターズ」を初めて制覇した。唯一、4日間を通して「70」を切るラウンドを続けた。その後の7年で3度のトップ3入りを果たしたランガーは、1993年に2位のチップ・ベックに4打差をつけて2着目のグリーンジャケットを勝ち取った。この30年間でランガーが「マスターズ」に出場しなかったのは1回限り。2014年にはトーマス・ビヨーンやロリー・マキロイらと並ぶ8位タイに入りファンを魅了した。
イアン・ウーズナム ウェールズ人としてメジャー初制覇
“ウージー”の名で親しまれるウーズナムは、25年前の「マスターズ」で「ライダーカップ」のチームメイトであるホセ・マリア・オラサバルに競り勝った。ウェールズ人と初めてメジャー優勝を果たした瞬間だった。スペインの至宝が72ホール目でボギーを叩いたのに対し、ウージーは2メートル強のパーパットを沈め、1打差でグリーンジャケットを手にした。今年はウーズナムにとって、9年連続で通算28回目のオーガスタ来訪となる。
トム・ワトソン 43度目の出場
「マスターズ」2勝のトム・ワトソン。有名なオークの木と同様に、既にオーガスタの調度品とも言える存在となる。ワトソンにとって43度目の「マスターズ」出場。1977年にジャック・ニクラスに2打差をつけて1着目のグリーンジャケットを手にした。その後の2大会ではゲーリー・プレーヤー、そしてファッジー・ゼラーに次ぐ2位に入った。1981年に再度ニクラスに競り勝ったワトソンは、‘ゴールデンベアー’とジョニー・ミラーに2打差をつけて2度目の制覇。その後、ワトソンはオーガスタで9度のトップ10入りを果たしている。
サンディ・ライル バンカーから魅せた1打
「マスターズ」でのサンディ・ライルを語る上で、1988年に最終ホールで放った忘れ難いバンカーショットのエピソードを外すことはできない。あの奇跡的なショットは、イギリス人選手として初制覇を実現させた。1985年に「全英オープン」を制したライルは、その3年後の「マスターズ」最終日、バックナインでボギーとダブルボギーを連続して叩いた。米国のマーク・カルカベキアの後塵を拝したが、16番のバーディで首位に並ぶと、‘ホーリー’の名で知られる最終ホールで劇的なバンカーショットを見せた。バーディを奪い、悲願の初制覇を飾ったのだった。
ラリー・マイズ 最大のジャイアントキリング
ラリー・マイズは1987年大会を制した。オーガスタ出身のマイズは、6年間で米PGAツアー1勝のみ。下馬評は低かった。「マスターズ」で豪州のグレッグ・ノーマン、スペインの名プレーヤー故セベ・バレステロスとのプレーオフに臨んだ。プレーオフ1ホール目でセベが1.5メートルのパーパットを外し脱落。グリーンジャケットの行方は2人に絞られた。2ホール目の11番では12メートルのバーディパットを残したノーマン有利と思われたが、軍配は40メートル以上のチップショットを沈めたマイズに上がった。誰も予想しなかったジャイアントキリングの瞬間だった。
フレッド・カプルス 1992年大会を制覇
フレッド・カプルスは「マスターズ」史上、最も安定したパフォーマンスを発揮した選手の一人。ゲーリー・プレーヤーと並んで23回連続予選通過という最多連続予選通過記録を保持している。1992年の第56回「マスターズ」にメジャー未勝利ながら世界トップランクの選手として挑んだ。最終日の16番を2位のレイモンド・フロイドに3打差をつけたが、フロイドがその後バーディを奪って差を縮めた。それでもカプルスは上がり3ホールをパーで切り抜け、グリーンジャケットを勝ち取った。2008年と2009年に予選落ちを喫したが、2010年は6位に入り、その後4年連続してトップ20入りを果たしている。
フィジーの大男 シンの優勝
フィジーの大男は2000年の「マスターズ」でアーニー・エルスを3打差で下してグリーンジャケットを獲得した。初日「72」で10位タイにつけたシンは、2日目を5アンダーでラウンドして順位を上げた。シンは3日目「70」で2位のデビッド・デュバルに3打差をつける首位に立つと、最終日は南アフリカのエルスを退けて勝利を手にした。今年、シンは23年連続で「マスターズ」出場を果たすことになる。
ザ・ビッグスリー
「マスターズ」はジャック・ニクラス、アーノルド・パーマー、ゲーリー・プレーヤーの3人を抜きにしては語れないだろう。今年はニクラスとプレーヤーの2人がセレモニアルスターターを務め、1番ホールでティショットを放つ。ビッグ3の一人であるパーマーは、ティショットこそ打たないと明言したが、あの場でかつてのライバルたちのショットを見守りたいと述べている。この3人で合計13着のグリーンジャケットを保持する。大会の幕開けとなる1打をビッグ3が打つことは、大会にとって意味深いものである。
スペインの至宝 今年は欠場
スペインの至宝は今年50歳となった。ヨーロピアンシニアツアーの出場権を手にしたが、「マスターズ」2勝の彼は怪我からの回復途中にあり、今大会は欠場することが決まっている。1985年に「マスターズ」デビューを果たしたオラサバルは、安定して成績を残すと、1991年大会ではイアン・ウーズナムに次ぐ2位に入った。3年後、彼はトム・レーマンに2打差をつけて優勝を飾り、初めてグリーンジャケットに袖を通した。1999年にはデイビス・ラブIIIを2打差で下して2着目を手に入れた。
ニック・ファルド 大逆転劇
史上最も成功したイギリス人ゴルファーのサー・ニック・ファルド。7年間で3度の「マスターズ」制覇を果たした。1989年から2連覇を達成し、「マスターズ」史上2人目のタイトル防衛を果たした選手となった。「マスターズ」の初めの2勝はプレーオフの末に勝ち取った。初優勝の場面は7.5メートルのバーディパットを沈めてスコット・ホークを下した。翌年はレイモンド・フロイドとプレーオフを戦い、相手が池に入れた11番をパーとして大会連覇を成し遂げた。ファルドは6度目にして最後のメジャー制覇、自身3度目の「マスターズ」制覇を1996年に果たした。最終日に6ストロークあったグレッグ・ノーマンとの差を逆転し、ノーマンに5打差をつける逆転優勝。今年は大会に出場しないが、メディアの仕事のためオーガスタにやって来る。